やまぶきシニアトラベラー

気まぐれシニア・トラベラーの旅。あの日から、いつか来る日まで、かつ、めぐりて、かつ、とどまる旅をします。

環濠

バンテアイ・スレイのリンガをなでたい

バンテアイ・スレイのリンガをなでたい          2019年10月訪問

バンテアイ・スレイ遺跡は、アンコールワット遺跡群の中ではトップ5くらいにランクインする人気遺跡です。クルマやトゥクトゥクで1時間もかかるのに、見物人の姿が絶えません。そして、個人客の割合が多いです。ツアーを組むような方々の多くは、駆け足観光なので、旅行会社もバンテアイ・スレイまで足を伸ばす企画を考えないのでしょう。
0206バンテアイスレイ観光セと入口 (4)
0211BANTEAY SREI正面入口
( バンテアイ・スレイの玄関口と、実際の遺跡入口 )

私は、とてもきれいに屋根掛けされたインフォメーションセンターを通過し、奥へ歩いて行き、小屋掛けした改札ポイントをとおり、本当の遺跡正面へ歩いて行きました。だいたい5分くらいの距離です。

バンテアイ・スレイは、周りの木々が大きいこともあり、平屋の小さな、けれども品のある色合いやたたずまいをした遺跡です。

順路に沿って奥へ向かい、一つ目の門をくぐると、リンガ彫刻が両脇にずらりと並んだ参道に出ました。

「わお、これぞヒンズー魂だあ」
「リンガいっぱい、世俗のムード、ムンムンだあ」
という感じです。

0213BanteaySrei正面参道 (1)
( バンテアイ・スレイ山門と奥の方に小さく見える本堂 )

ヒンズー教は、男根崇拝の上に、世俗の欲望を素直に表現する宗教だと思います。ですから、リンガも実に堂々としています。寺院が現役時代は、聖なるリンガにさわってはいけなかったのかも知れません。遺跡となっても、これ以上の摩耗や風化を防ぐために、さわってはいけないようです。

けれども。ここまで、リンガ、リンガ・・・・・・、と並ぶと、脳裏にその光景が焼き付いてしまいました。

0213BanteaySrei正面参道 (4)
( 表参道に整然と並んだリンガ )

思わず、なでなでしたり、口に入れたくなりませんか。コーンのアイスとかを頬張るように。

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( リンガいっぱいの参道の振返り )

リンガは、デヴァター像の上半身のように黒光りしていないので、往時もあまりさわられることは少なかったのではないかと想像しています。
「それに、いっぱいあって、ほとんど同じ形なので飽きるのですよ」、という感じです。

リンガの林立する参道を越えると、お濠の向こうに美しい赤銅色の本堂が見えてきました。
そちらに気を取られたので、リンガのことは、きっぱりと脳裏から去りました。
「現金なものですねえ」

0213BanteaySrei正面参道 (11)
( バンテアイ・スレイ本堂遠望 )

バンテアイ・スレイ本堂は、品のある美しさを保っています。そして、レリーフの彫りが、他の遺跡に比べて深いために陰影が出やすいので、全体がくっきり、すっきりとした印象です。

0215バンテアイスレイ中央祠堂全景 (2)
( 彫りが深いレリーフがいっぱいのバンテアイ・スレイ本堂正面 )

0218バンテアイスレイ中央祠堂背面全景 (1)
( 真っ青な空に映える海老茶色のバンテアイスレイ本堂の塔 )

それでも、本堂の裏手に周って塔の上を見上げると、深く刻まれたレリーフが少し苔むしているのが目に入りました。500年以上、放置されて豪雨に打たれ、灼熱の太陽に照らされていれば、このくらいは仕方がないことでしょう。

「腐っても鯛」、「美人は百歳までも美人」、という語句が脳裏に浮かびました。


2020年3月記                    了

うねるバンテアイ・スレイとカフェ

うねるバンテアイ・スレイとカフェ   2019年10月訪問

バンテアイ・スレイの建造物は赤銅色の岩石が素材で、作りも精巧です。柔らかく温かみのある女性的な印象の美しい寺院遺跡でした。

けれども、バンテアイ・スレイの本堂を取り囲む壁は、歪んでうねっていました。

0221バンテアイスレイ中央祠堂と環濠1025 (12)
0221バンテアイスレイ中央祠堂と環濠1025 (8)
( うねるバンテアイスレイの周壁と中央のお堂 )

1000年以上かかって少しづつ地盤が変形し、それにつれて石組みも歪んだようです。
固めのマットの上に積み木でお寺をこしらえたら、案の定ゆがんでしまった、という雰囲気です。それでも崩落しないのですから、寺院建築は、かなり丈夫なのですね。

0221バンテアイスレイ中央祠堂と環濠1025 (4)
( 別の角度から見たバンテアイ・スレイ本堂と周壁 )

大きな熱帯樹木を背後にして、こじんまりとたたずむ赤銅色の建築が映えていました。
0221バンテアイスレイ中央祠堂と環濠1025 (1)
( 本堂と両脇の塔を背面から見る )

晴天の強い陽光を浴びた遺跡は、上品な色に光を反射していました。巨大で荘厳なアンコール・ワットと対極を成す美かも知れません。

本堂の見物を終えて池の方へ戻ると、テラス風のレストハウスがありました。ジャングルに戻ろうとして勢いよく伸びている木々の姿を見ながらのカフェタイムも気持ち良いひとときでしょう。
0209バンテアイスレイ入場口奥の蓮池 (2)
0208バンテアイスレイ内部高級レストランと仏団体 (1)
( トイレ利用案内。外部者は2000リエル、約1/2ドル )

カフェ横のトイレ利用案内です。よく見ると部外者は有料。でも、こんな辺鄙な場所で、観光目的以外の旅人でトイレを目指して来る者は、よっぽどの変人だと思います。

0208バンテアイスレイ内部高級レストランと仏団体 (2)
0208バンテアイスレイ内部高級レストランと仏団体 (3)
( わいわいがやがやフランス人のシニア・マダムご一行様 )

よしず張りのテラスの奥ではフランス人のシニアのマダムを中心とした30人くらいの団体が、わいわいがやがやとランチタイムでした。看板のメニューには「欧風ランチ35ドル」と書いてありました。カンボジア物価感覚では、眼の玉が飛び出るくらいの値段です。ご一行さまが、それを食べているのか分かりませんでしたが、とても生き生きとした表情が印象的でした。

世界中を回るようなシニアの女性旅行者は、国籍を問わず強いです。どこへ行っても、我が道を行くという表情で旅のひとときを満喫しています。
「私も、年の功の良い面を見習って旅を続けたいものです。『世界遺産を何カ所めぐった』なんて自慢するのは、小さい、小さい・・・・・」

2020年3月記                   了

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