やまぶきシニアトラベラー

気まぐれシニア・トラベラーの旅。あの日から、いつか来る日まで、かつ、めぐりて、かつ、とどまる旅をします。

ラクリメ

シラクーザの奇跡のラクリメ聖堂をのぞく

シラクーザの奇跡のラクリメ聖堂をのぞく     2018年9月訪問


シラクーザの街並みを俯瞰したときから、ずっと気になっていた丸いとんがり屋根のラクリメ聖堂にやってきました。

観光案内書のオバサンは、「あれは街並みとマッチしないから嫌い」と言っていた代物ですが、私は、けっこう興味を惹かれるクチでした。ユニークな形状を見るとワクワクするタイプです。

シラクーザラクリメ聖堂O島から遠望201809
( ラクリメ聖堂をオルティージャ島より遠望 )

ラクリメ聖堂は、案内書を見ると正式には、Basilica Santurio Madonna delle Lacrime :聖母の涙(なみだ)大聖堂、らしいです。普通の教会や、ドゥオーモとは違う特別な聖なる空間、という命名のようです。機能としては、大きな教会です。

私は、オルシ考古学博物館から、ラクリメ聖堂の裏側を目指して歩いて行きました。徒歩3分くらいで敷地の端につきました。そばで見ると、とても大きくて尖ったイメージの建造物です。
シラクーザラクリメ聖堂三角錐201809 (2)
( ラクリメ聖堂を仰ぎ見る )

デザインは超モダンで、その発想にほれぼれします。バルセロナ観光で大人気のサグラダ・ファミーヤもユニークなデザインですが、一目で教会と分かる形であるのに対して、ラクリメ聖堂の方は円形大ホールだと言われたら「そんなもんか」と納得するくらいのユニーク度です。塔のてっぺんに十字架が付いているので宗教建築物だということが理解できます。

「シラクーザ、けっこう、やるじゃない」
「何しろ、奇跡にちなんだ聖堂ですからね。張り切って考えました」
「超ユニーク」
という感じです。

シラクーザラクリメ聖堂三角錐201809 (1)
( ラクリメ聖堂裏門の案内板 )

裏門から入って、まず正面に行き、見てほしい姿を脳裏に焼き付けます。

ラクリメ聖堂は、近くで見ると、コンクリートの表面が、かなり毛羽だっていて劣化している印象を受けました。1990年竣工の建物ですから、まだ30年ほどしか経っていない割には劣化が早いのではないかという印象です。もう少し、コンクリート打ちっぱなしの表面にコーティング処置を施せば、味わいも出るし長持ちもするのでは、と素人ながら心配してしまいました。

「まあ、何とかなるさ」
という返事が、耳の奥に響いたような気がしたので、あまり気にせず歩みを進めました。

シラクーザラクリメ教会全景Sep2018
( ラクリメ聖堂正面入り口 )

ここも人影はまばらでした。入場料はタダ。観光施設ではなく、あくまでも祈りの場なのです。私も、静かに、そおっとドアを開けて場内に入りました。

シラクーザラクリメ聖堂祭壇Sep2018
( 奇跡の発現場所が保存されたラクリメ聖堂のメイン・ホール )

地上面から入ってまっすぐの場所にある大ホールを見下ろすと、奇跡の発現場所と思しき岩が大切に保存されていました。

あちこちの解説本のとおり、ここは、数少ないバチカン公認の奇跡認定地点のひとつです。1953年8月29日に、聖母マリア像が突然、涙を流し、しばらくの間にわたって病人たちを直したということです。それは、それで、とても喜ばしいことです。なんだか、川岸に流れ着いた金色の観音様を祀ったら村が栄えた、という我ら風の奇跡物語との共通点を感じてしまいました。宗教の癒しの機能が、存分に発揮された場所でした。

涙の聖母を思って、静かに祈る人々の邪魔をしないように、私も、そおっと周囲をひと歩きして外にでました。

宗教を超えて、みんなの心が安らぎますように・・・・・・。

2020年8月記                                 了







オルティージャ島を一周しよう

オルティージャ島を一周しよう    2018年9月

シラクーザのオルティージャ島の周囲をぐるりと歩いてみました。(Ortigia, Siracusa) 

下の写真は、観光案内所などで配っているオルティージャ島観光案内用の地図です。
シラクーザ観光案内所パンフO島全図201809
( シラクーザ観光案内所で入手したオルティージャ島全図 )

島の左上にある3本の橋のあたりから右周りに1周し、左のに白い埠頭部分を通って出発点に戻るコースです。約3km、休まず歩けば1時間ほどのお散歩コースです。

「観光に来たんだから、それはないでしょう」
「ご名答。右や左に視線を向け、海を隔てた本土の景色も目に入れ、道半ばでバルに寄って一息したら3時間以上かかってしまいました」

まず、本土と島をつなぐウンベルティーノ橋の上から眺めた旧郵便局庁舎。再開発でデラックスホテルになるとか。
オルティージャ一周風景201809 (9)
( 左が本土、右がオルティージャ島。正面の建物が旧郵便局 )

島の東側は、普通の住宅地です。観光客も少なく、安めのホテルや民宿も、ちらほら並んでいます。
ランチタイムを過ぎると、お日様が島の反対側を照らすようになるので、こっち側は陰になって、少し黒ずんだ風景になります。人も少ないので、とぼとぼ、うじうじ歩くのには最適です。
オルティージャ島一周風景東201809
( オルティージャ島の東側の磯と街並み )

オルティージャ島一周甲羅干し201809
( 岩の上では市民らが甲羅干し )

島の周囲は、磯かコンクリートで固められた護岸です。ところどころに張り出した岩の上には、少なくない数の市民らが集まり、のんびり甲羅干し。岩のうえで、ごろごろするトドやオットセイを眺めている気分でした。

オルティージャ昼下がりの東ビーチSep2018
( 島の南端の要塞公園から東側を見る )

島の周囲は、意外と切り立った壁に囲まれています。200-300年くらい前のデザインの建物で統一した街並みが美しく午後の陽ざしに照らされています。けれども、そのうち何割かは戦後、復元した建物のようです。観光都市の面目躍起のスカイラインです。

けれども、これを作るのは大変だと思います。日本の歴史的景観地区の街並みを思い出してください。目に入る限りの広がりで、しっぽり、ゆったりした江戸時代風の街並みが目に入る場所なんて、滅多にありません。

オルティージャ一周風景201809 (4)
オルティージャ一周風景201809 (3)
( 海に突き出たマニアーチェ要塞と、入口前の公園広場 )

ぶつぶつ言っているうちに、島の南端に突き出たマニアーチェ要塞 (Castello Maniace )にたどりつきました。要塞の本丸は、どうしたことか閉館中でしたが、入口前の広場風公園では、皆が思い思いに腰掛けて恋を語り、足を休めていました。

こういう、のんびりとした午後の風景に心が癒されます。

暑さで喉が渇いたので、島の西側にまわり込んで、観光気分丸出しのバルで一休みしましょう。風景料込みなので、グラス1杯の飲物でもけっこうなお値段がします。

オルティージャ一周風景201809 (5)
( マニアーチェ要塞の北の西海岸沿いのバルのテラス )

英気が戻ったところで、今度は、島の西側を北上します。こんもりとした緑のある場所が、アレトゥーザの泉:Fontana Aretusa です。寄り道するもしないも自由です。
オルティージャ一周風景201809 (6)
( アレトゥーザの泉と島南端方向の眺め )

アレトゥーザの泉を過ぎると、眼前に豪華ヨットが並んだ埠頭や、オレンジの木がいっぱい植えてある埠頭公園が見えてきます。

その向こうに見える、とんがり屋根の奇抜な建物が、ラクリメ聖堂( Santurio della Madonna delle Lacrime ) です。歴史的景観をウリにするシラクーザなので、この建物の評価については賛否両論があるようです。ちなみに、私は賛成派。断トツに高いわけでもなく、曲線がある建物なので街の景観に溶け込んでいると思いました。

「別に、いいんじゃない。これくらい」
オルティージャ昼下がりの西港と新市街Sep2018
( シラクーザ観光埠頭と右奥のラクリメ聖堂 )

さきほど、上から見下ろした観光埠頭の海岸縁に降りてみました。
「西日に輝く歴史的デザインの建築物が映えますねえ」
オルティージャ一周風景201809 (8)
( 埠頭の海岸縁から見上げたオルティージャ島西側 )

オルティージャ一周風景201809 (7)
( 港内クルーズ船の宣伝と乗り場 )

埠頭の一角には、お決まりの港内クルーズ船乗り場や売店などがあり、お兄さん、お姉さんが、のんびりと客引きとおしゃべりをしていました。シラクーザは、有名観光地なのですが、がつがつした雰囲気がほとんどありません。

「豊かで余裕があるのか、やる気がないのか、どっちなんでしょう?」

そうやって、ぶらぶらと足を進めているうちに、出発地点に戻ってきました。観光埠頭の隣は、地元の小舟の船着き場らしいです。ゴミが多く、捨てられた魚の腐った匂いが漂っていて、あんまり気分の良い場所ではありません。

「写真だけ見ると、明るく素朴な観光地の港風景なのですけれどねえ」
オルティージャサンタルチア橋付近の昼下がりSep2018
( 地元船用の岸壁風景 )

写真というか、ヴァーチャル観光最大の欠点は、温度と匂いを感じられないことだ、と改めて思った次第です。

2020年6月記                          了


カテゴリー
  • ライブドアブログ