ビルバオめぐるトランヴィア 2017年9月
1) トランヴィアに乗ろう
トランヴィア:Tranvi*a は、2002年開業のLRT:Light Rail Transit です。
あえて訳せば、ビルバオ市電ですが、昔ながらのチンチン電車ではありません。バリアフリー、低騒音、低運賃、芝生軌道、現代デザインの、弱者と環境にやさしい21世紀を意識した乗り物です。
線路の幅は、ウスコトレン、メトロと同じ1000ミリメートル。日本のJRや大部分の私鉄より軌間が67ミリほどせまいだけの狭軌鉄道です。
大きな曲面ガラスと、縦幅の長い窓の黄緑色のイメージの電車は、とてもスマート。ビルバオの新しいビル群にお似合いです。街中歩きで目にすると、絶対に乗りたくなる乗り物です。安全、安心ですので、おじけづかずに乗りましょう。
( グッゲンハイム付近の芝生軌道を走るビルバオのトランヴィア )
トランヴィアは、グッゲンハイム美術館と同じように、今世紀のビルバオをリードする存在です。観光にも便利な電車で、カスコビエホ脇のアリアーガや、グッゲンハイム、高速バスターミナル直結のサン・マメスなども通ります。居ながらにしてビルバオの過去、現在、近未来が見えます。テーマパーク内の乗り物気分です。
運賃は均一制で、バリクカードで0.73ユーロ、現金で1.5ユーロ(2017年9月現在)です。全線の所要時間は22分。昼間は10分ごとの運転です。
車内でウトウトしても、スリはいません。でも、キセル乗車は絶対にいけません。
( トランヴィアの車内。ワンマン運転。ほとんど混まない )
2) 始発駅は地味に
トランヴィアの東の起点アチューリ:Atxuri です。近郊電車ウスコトレン:Euskotren のアチューリ駅前が停留所です。2017年4月から、ウスコトレンの半分以上の電車が、都心部に近いカスコ・ビエホ方面に行くメトロ3号線と相互乗り入れを開始したので、アチューリ駅は、かなり寂れてしまいました。
( アチューリ駅前に停車中のトランヴィア )
アチューリ駅は、ウスコトレン、日本語訳バスク鉄道のビルバオのターミナル駅として建設されたので、装飾も凝っている堂々たる建物です。
トランヴィアは、乗車前にバリクカードをタッチするか、きっぷを買って自分で改札機に通します。電車内で、カードをタッチしたり、現金精算することはできません。ビルバオ・ルールですから、慣れるしかありません。
( バリクカードのタッチ装置 )
トランヴィアのカード・リーダーです。始発のアチューリで写真撮り忘れたので、アバンド停留所のもので代用です。
カードがない人は、自動販売機できっぷを都度買います。少額紙幣も使え、つり銭もきちんと出ます。
きっぷを買ったら、乗車前に、赤い矢印の先にある、自動消印装置にきっぷを差し込んで、使用済み状態にします。ヨーロッパで、よくある方式です。
( トランヴィアのきっぷ販売機 )
黄緑色の自動販売機は、大型で、とても頑丈そうです。数時間おきに係員が回ってチェックしています。几帳面なバスク気質を反映して、故障やつり銭切れを見たことはありません。つまり、検札のとき、”機械の故障できっぷを買えなかったとか、タッチ忘れた”、という言い訳は99.99%ウソ、です。
( トランヴィアの運転席 )
トランヴィアの一番前に乗ると、運転手さんと同じように前方の景色が見えます。童心に帰って、わくわくしながら眺めるのがいいかも。
スペインでは、運転席かぶりつきのような鉄道趣味はないので、もしかしたら、運転手さんが気味悪るがるかも知れません。
「信号よし、出発進行!」
3) 静かに走ろうビルバオ
スペイン人はおしゃべりです。
けれども、トランヴィアもメトロもバスも、ビルバオの乗り物の車内はたいてい静かです。
ニッポン:
「ご乗車ありがとうございます。この電車は、ラ・カシーヤ行きです。後ろ乗り、前降りです。運賃は170・・・エンです。カードリーダーに、ピッという音がなるまでタッチしてください。車両なかほどに優先席がございます。急ブレーキにご注意ください」
(運転手さんの肉声で)「14時50分発ラ・カシーヤ行きです。あと1分少々で発車です」
「ドアが閉まります。ご注意ください」
(運転手さんの肉声で)「ドア閉めまーす」
ピンポーン「次は、リベラです。お出口は右側です」
LEDの文字表示は、日本語、英語、中文、ハングルが、繰り返し流れるように出ています。
うるさいぞお!!音声案内は日本語しかないし、ガイジン客はどうすればいいんだ。
トランヴィア:
電子音で、”プププーーー”。ドアが閉まって、静かに発車。案内放送は一切なし。
ポーン「リベラ」
LEDの文字表示は、アルファベットで書いた駅名がずっと表示されているのみ。
たった、これだけです。無口なスペイン人のようです。
少しは、静かなトランヴィア車内を見習ってほしいのですが。
( リベラ停留所。左がラ・リベラ市場(いちば) )
アチューリから、4つ目の停留所プラサ・バロハまでは単線です。三連接車体の電車が、くねくねと旧市街脇の狭い道を急カーブ、急スロープでゆっくりと走り抜けます。途中、アリアーガで必ず上下線の電車が交換します。道路上を走るので、トランヴィアは右側通行です。
( アリアーガ停留所に入るラ・カシーヤ行きトランヴィア )
( アリアーガ停留所では、必ず電車交換 )
( アリアーガ劇場を回り込み、アーレナル橋を上り勾配で渡ると、アバンド停留所 )
( 急カーブを過ぎてアバンド停留所に着くアチューリ行き )
( アバンドから、再び急カーブ、急スロープでネルビオン川左岸に出る )
線路は、ネルビオン川沿いに出た付近で複線になります。少し走ると、芝生軌道になります。環境にやさしいトランヴィアの名前に負けない風景の中を走ります。
4) クライマックスはグッゲンハイム
ネルビオン川沿いからグッゲンハイム、ウスカルディナ付近が、トランヴィアでもっともダイナミックな風景が展開する区間です。川沿いの公園や、美術館、高層ビル、センスのよいホテルやマンションを右や左に見ながらトランヴィアは、少しゆっくり目に走ります。歩くのが面倒な方は、この付近の車窓風景を楽しまれますように。
( スビスリを遠目に見てトランヴィアは走る )
( グッゲンハイム美術館の下をくぐるためカーブ )
( グッゲンハイムの下をくぐるトランヴィアの線路 )
電車は、きちんと次の停留所を自動音声で告げてくれます。
ポーン。「グッグ(ン)アイム」
「・・・・・・・・・・・」
「旅のお方、グッゲンハイム美術館はここですよ」
「えっ、ほんとだ。ありがとうございます」
「よい、いちにちを」
( Guggenheim 停留所。美術館より、ちょっと西側にある )
グッグアイムを過ぎると、しばらく新しい公園の中を走ります。イベルドローラ・タワーや、ウスカルドゥナを見やると、電車は左にカーブして、緩やかな坂道を上り始めます。サビーノ・アラナ大路です。
初秋のさわやかな風が、並木をさわさわと揺らしていて、とても清々しい気分でした。
( Avenida Sabino Arana。 トランヴィアの線路は、植樹帯の左にあります )
5) いきいきサン・マメス停留所
”サン・マメス”
アスレティック・ビルバオ・サンマメス・スタディアム下車停留所です。
旅行者の多くにとって、馴染み深くなった地名です。だんだんビルバオ市民のような気分になってきました。
「メトロ、RENFE、FEVE、高速バスご利用の方はお乗換です。バスク大学本部行きノンストップ・バスご利用の方は、進行方向前方にお進みください」、とは、トランヴィアでは放送しません。
若い人が、いっぱい居て、現代的なビルがたくさんあって、山の緑も目に入る、この停留所が、私はけっこう好きです。
( 2枚とも、サン・マメス停留所。背後はバスク大工学部校舎 )
サン・マメスを出たトランヴィアは、「コ」の字形に、高速バスターミナルを周り込むように走ります。頭を東に向けたところで出た大通りが、アウトノミア通り:Autonomia です。新市街を、ぐるっと大回りした感じで、ラスト区間に入ります。
6) 終点、ラ・カシーヤです
ちょっとだけ、ガタゴトと音を立てて、電車は終点ラ・カシーヤ: La Casilla に到着です。バスしか接続しない、中途半端な場所ですが、近隣住民の方が、けっこう乗り降りしています。
( ラ・カシーヤに到着するトランヴィア )
( ラ・カシーヤで折返し待ち )
( ラ・カシーヤ終点から東の都心部方向は、線路が途切れておしまい )
いったん、車内の客となれば、徒歩観光にも劣らず、さまざまなビルバオ風景が見られます。
乗っても損はない電車のミニ・トリップです。
「ここから、どうやって次に進めばいいんでしょうか?」
「斜め左前方あたりを目標にして15分か20分歩くと、モユア広場に出ます。次は、歩いてビルバオを楽しみましょう。ちなみに、バルは、左折して歩いて行くとあります」
「ありがとう」
メモ2002年開業 約5.5km 22分
ビルバオ市電
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