やまぶきシニアトラベラー

気まぐれシニア・トラベラーの旅。あの日から、いつか来る日まで、かつ、めぐりて、かつ、とどまる旅をします。

ヒンズー教の神々

癩王のテラスの隙間でヒンズーの神々に囲まれる

癩王のテラスの隙間でヒンズーの神々に囲まれる     2019年10月訪問

快晴で陽射しのまぶしい10月下旬の朝、私は、アンコール・トムの「癩王のテラス」に上がりました。
有名で人気のある「象のテラス」と一対になった、長くて広い、ひな壇状の遺跡です。足早や日本人および中国人観光客のメインルートから、ほんのわずかだけ北にはずれているせいか、見物人の数はあまり多くありません。

のんびり、じっくり、芝生とひな壇歩きをしました。「ちょっと、暑っ!」

0325Aトム象のテラス昼下り風景 (7)
( 象のテラスから見た癩王のテラス )
0328Aトム癩王テラス付近風景 (5)
( 癩王のテラス側面のレリーフ )

癩王のテラスの中央部にくると、壁が二重になっていて、隙間にも入れます。ガイドブックによりますと、隙間は昔に埋められてしまっていたので、しばらくは気がつかれず、後世の調査で見つかった場所のようです。

テラス上の、イメージだけ清々しい暑い空気を吸ったあと、下に降りてみました。
せっかく来たのですから、なるべくたくさんの場所に入り込みたいです。
0328Aトム癩王テラス付近風景 (8)
( 癩王のテラス上から象のテラス方向を見る )



0328Aトム癩王テラス付近風景 (14)
( 癩王のテラスの内壁 )

赤い石を積み上げた二重壁の間を、そろりそろりと歩いて行くと、ヒンドゥーの神々のレリーフが所狭しと彫られた壁面にでました。
「ほおっ・・・・・・・・」

ヘビがモチーフのナーガ神のレリーフのある場所は、少しびくつきながら通りました。私は、ヘビがきらいなので、彫刻と分かっていても気になってしまうのです。

「いきなり、ぴょん、と頭を出したらどうしよう・・・・・・」
「くわばら、くわばら」
0328Aトム癩王テラス付近風景 (12)
( 内壁のヘビ神ナーガは、私には気味悪い存在 )
0328Aトム癩王テラス付近風景 (13)
0328Aトム癩王テラス付近風景 (11)
( 内壁の数えきれないほどのヒンズーの神々たち )

これでもか、というプレッシャーを3回も4回も感じるくらい、切り立った内壁の両側にはヒンズーの神々の像が彫られ、重なり、ずれ、そして欠けていました。インド哲学のエンドレスのような神話の世界を肌で感じました。

たまたま、せまい通路内ですれ違ったアメリカ人のお姉さまと一期一会の縁で立ち話をしました。お姉さまは、こういう光景に天にも舞い上がらんばかりの感動を覚えたそうです。同じ表情が二つとない神々に囲まれていると、無限の祝福を授けられている気分になるということでした。そして、お互いのカメラで写真を撮り合いました。私は2-3枚お願いしましたが、興奮気味のお姉さんは遠慮がちな表情をしながらも、壁の向きを変えて6-7枚撮ってくれとのこと。もちろん快諾して、いろいろなポーズと背景の写真を撮ってさしあげました。

「よい1日を!」
「あなたも!」

いやあ、ほんとに神々のお姿に間近かで囲まれると、仏教徒の私も、少し、こそばゆい気分になりました。

2020年2月記                       了



南大門の神々たちのインスピレーション

南大門の神々たちのインスピレーション     2019年10月訪問

「事実は小説より奇なり」という諺(ことわざ)があります。アンコール・トム:Angkor Thom の南大門入口の橋の欄干に鎮座するヒンズー教の神々たちも、思いっきり奇妙な姿でした。

体験者はご存知のとおり、ヘビに見立てた橋の欄干を、上半身だけの百面相の神々たちが綱引きのように引っ張っているデザインが、なまじのクリエーターの発想力の比ではないのです。聞けば、ヒンズー教の天地創造の物語である乳海攪拌の一場面なのだとか。

「ぶっとんだ」
「マンガにそのまま使える発想だ」
「ジャヤバルマン7世陛下、是非、ウチの事務所でチーフ・クリエーターやって」です。

0371Aトム南大門夕方 (2)
( 観光ポスターなどでも馴染みの南大門を通り抜けるクルマやバイク )

古い門を、現代のクルマやバイクが当たり前のようにくぐりぬける写真も有名です。ヨーロッパや中国、トルコ、アラブの古い城門でも同様の光景が見られますから、世界的にはデフォなパターンです。木造建築が主流の日本では、ほとんどない場面ですね。

0372Aトム南大門の朝風景1023 (3)
( ズンズン、ズンドコッという感じでヘビを引っ張る神様の石造 )
0101Aトム南大門の朝風景1023VG
( 南大門の上で、にやけ顔で睨みを利かす神の顔 )

こうのような場面は、絶対にマンガやアニメにもってこいの素材です。芸術家の皆さまは、自由にインスピレーションを働かせて、是非、シュールな作品を作っていただきたいなあ。
0102Aトム南大門の表情多種1023
( 神様も一応、伏し目でヘビ綱引き )

どこでも、たくさんの神様を並べるときは一体ごとに表情を変えるのですね。五百羅漢、三十三間堂などの仏様などの顔つきが脳裏に浮かびました。

0372Aトム南大門濠快晴1025 (4)
( 欠けて行方不明の神あり )

でも、どうして修復してある神と、欠けたまま放置してある神がいるのでしょう。完全に欠落していると、オリジナルの表情が分からないので修復できないからのような気がします。

0372Aトム南大門濠と彫刻
( 修復したのはいいが白すぎて浮いている神あり )

おおらかで明るくユニークな南大門の綱引き神様に喝采です。このような発想をしたアンコール・トムの完成者であり、巨大ブッダ顔のバイヨン寺院の建立者であるジャヤバルマン7世陛下の、シュールすぎる発想に言葉もないくらいの賛辞を送ります。

2020年2月記                  了

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