バスク鉄道ウルダイバイ線のんびり旅 2017年9月
1) アチューリ駅の影うすく
バスク鉄道こと、ウスコトレン:Euskotren のビルバオのターミナル駅は、アチューリ駅でした。
けれども、2017年4月のメトロ3号線の開通で、アチューリ駅:Atxuri, Bilbao は、過去の歴史になろうとしています。
ベルメオ方面に向かう電車以外の大半が、アチューリ駅に入らず、メトロと相互乗り入れとなりました。将来計画では、ベルメオ方面の電車もメトロ直通とし、アチューリ駅はトランヴィアの中間駅になるようです。
やや重苦しい雰囲気のアチューリ駅舎は、歴史的な建物となって、ウスコトレンの始発駅であったころの記憶を刻むのかも知れません。
今日は、めっきり電車本数も減ったアチューリ駅から、ゲルニカ、ベルメオへ向かうウスコトレン各駅停車に乗ります。通称、ウルダイバイ線 :Urdaibai と呼ばれています。
( ビルバオ・アチューリ駅舎正面。右は、始発のトランヴィア )
アチューリ駅は、旧市街の南西部、ネルビオン川沿いの細長い土地にに身をすくめるように作られています。プラットホームは1番線から4番線まであります。1番線は、改札の左奥の方なので、ちょっと分かりにくいです。
(アチューリ駅正面改札。人影は少なめ )
( アチューリ駅の線路終端の車止め )
( アチューリ駅構内。後方は、ネルビオン川とリベラ橋 )
リベラ橋を遠目に見て、準急トラーニャ行きが発車するところです。駅の電光表示が、Semi Expressだったので、「準急」と書いています。平日に数本運転されるだけの通勤通学電車です。
ライトをつけて停車しているのが、次に発車する各駅停車ベルメオ行き:Bermeo です。現役最古参の200系の青い車両です。ベルメオ方面の電車は、平日30分間隔、土曜休日は1時間間隔の運転です。
( アチューリ駅ホーム先端から下り方向を望む )
2) のんびりとゲルニカに向かう
ベルメオ行きの電車は、1車両に数人の乗客を乗せてアチューリ駅を発車しました。
川に沿って蛇行する複線の線路を左側通行で進むと、3分で、次の駅ボルエタに到着。メトロとの乗換駅ですが、平日の朝の下りに乗ってくる乗客は数名です。周辺は、少し時代がかった工業地帯で、かつて重工業都市だったころのビルバオの面影を残しているようでした。
( メトロ1,2号線との乗換駅ボルエタ駅:Bolueta )
( 乗換口。左ウスコトレン、右ビルバオ・メトロ )
各駅停車の電車は、2、3分おきに停車しながら東へ走り、ドゥランゴ方面との分岐点を過ぎると、線路は単線になり、向きを北に変えます。同じようなデザインのマンションが点在する都市近郊風景は一転し、木々の生い茂る丘陵地帯となります。
( 本線とウルダイバイ線の分岐点の様子 )
電車が、小さな峠を越えると、次第に農地や牧草地が視界に入ってきます。北海道みたいな風景です。前日の雨でぬれた牧草や木々の、しっとりとした緑色が、少し重たく感じます。
私にとっては、とても落ち着く車窓の緑でした。
( ゲルニカ近郊の農村風景 )
( 車窓から見たゲルニカの街はずれ )
次第に家が増えてくると、電車は、ゲルニカ駅:Gernika に到着です。アチューリ駅から50分かかりました。ビスカイバスでも45分前後かかるそうです。本数は、電車、バスともに同じくらい。駅とバスターミナルは隣接していますので、ビルバオからベルニカ観光に往復する人は、お好みで交通機関を選べばよいと思います。
( ゲルニカ駅に着いたウスコトレンの電車と降車客 )
ゲルニカは、地域の中心都市なので、8割くらいの人が下車。代わりに乗ってくる人がいます。
電車は、ゲルニカ駅で5分以上停車。上り電車の到着を待って発車します。
とても、のんびりとしたローカル線風景です。
( 上り電車が到着。背後は、ウスコトレンの工場兼車両基地 )
構内踏切には警報器がありません。そのため、上り電車は、時速20kmくらいで、ゆーーーくりとプラットホームに入ってきます。そして、上り電車の降車客が踏切を渡り終わったころ、下り電車が、静かに発車して行きました。
( ゲルニカ駅で交換する上下の電車 )
ゲルニカ駅も、かなり立派な造りです。
正面入り口奥は、待合室、事務室で、人の乗り降りできる改札口は、正面右の張り出し部分にあります。プラットホームのかさ上げや、自動改札化のときに、動線が変わったようです。
( ゲルニカ駅舎正面 )
ここで途中下車して、ゲルニカの歴史的建築や、バスクの小都市の、しっとりとした雰囲気を、こころから楽しみました。
3) ウルダイバイ線のハイライトを見よう
ゲルニカ見物を終えて、再び、ウルダイバイ線のお客となりました。
進行方向右側に座り、ウルダイバイ自然公園の湿原風景と、エスチュアリーと呼ばれる河口の地形を楽しみます。
ゲルニカを出た電車は、10分くらい走ると、湿原の縁に出ます。時速80kmくらいですが、かなり揺れます。
( 2枚ともウルダイバイ自然公園の眺め )
9月半ばを過ぎると、ススキの穂が出始め、一帯も初秋の雰囲気が漂い始めました。湿原の向こうに木々がびっしりと茂った山々が見え、日本と同じスカイラインの田園風景が続きます。こんな風景を見ながら、老いていくのもいいなあ、と思える景色です。
湿原が尽きると、電車の行く先に海が見え始めます。別荘らしき家、ヨットなども目に入ってきます。バスクの豊かさを、さりげなく見せられたような気分です。
( 車窓に海が見えます。ムンダカ手前付近 )
幾つかの入り江を通り過ぎたところが、ムンダカ駅:Mundaka。ひそひそ声さえ遠くから聞こえそうな静かな漁村です。
( 終点のひとつ手前、ムンダカ駅 )
途中下車して、どんよりとしたカンタブリアの海を見に行きました。
そして、三たびウスコトレンの客となって走ること5分。ウルダイバイ線の終点ベルメオ駅:Bermeo に着きました。
( 雨をついてカーブしたベルメオ駅に着く電車)
今日のベルメオは、朝の曇り空が、昼過ぎには本降りの雨と変わりました。もやに霞むベルメオの旧市街に行き、ランチを食べがてら街中散歩も雨模様。晴れれば、カラフルな色合いをした漁港周辺のマンションが、もっと映えるんだろうな、と思わずにはいられません。
( ベルメオ駅で折返し待ちのウルダイバイ線の電車 )
( ベルメオ駅前。駅舎は、半地下構造 )
ベルメオ駅についた電車は15分ばかり停まって、折返して行きます。地元の人たちに混じって数人のガイジン観光客も降りてきます。駅員さんに、「サンファン・デ・ガステルガチェ行きのバスは、どこから出ますか」というようなことを聞いているようです。あんなに有名観光地なので、案内表示くらい出せばいいのに、と私は思いますが、ヨーロッパ感覚では、そうはならないようです。
( ベルメオ駅裏の高台より雨に霞む旧市街を遠望 )
ウスケラが聞こえてくるビスカヤ県の美しい漁港都市ベルメオ風景を脳裏に焼き付けて、帰路につきましょう。
平凡なようで、バスクらしさを感じるウルダイバイ線の電車の旅でした。
2018年3月 記 了
1) アチューリ駅の影うすく
バスク鉄道こと、ウスコトレン:Euskotren のビルバオのターミナル駅は、アチューリ駅でした。
けれども、2017年4月のメトロ3号線の開通で、アチューリ駅:Atxuri, Bilbao は、過去の歴史になろうとしています。
ベルメオ方面に向かう電車以外の大半が、アチューリ駅に入らず、メトロと相互乗り入れとなりました。将来計画では、ベルメオ方面の電車もメトロ直通とし、アチューリ駅はトランヴィアの中間駅になるようです。
やや重苦しい雰囲気のアチューリ駅舎は、歴史的な建物となって、ウスコトレンの始発駅であったころの記憶を刻むのかも知れません。
今日は、めっきり電車本数も減ったアチューリ駅から、ゲルニカ、ベルメオへ向かうウスコトレン各駅停車に乗ります。通称、ウルダイバイ線 :Urdaibai と呼ばれています。
( ビルバオ・アチューリ駅舎正面。右は、始発のトランヴィア )
アチューリ駅は、旧市街の南西部、ネルビオン川沿いの細長い土地にに身をすくめるように作られています。プラットホームは1番線から4番線まであります。1番線は、改札の左奥の方なので、ちょっと分かりにくいです。
(アチューリ駅正面改札。人影は少なめ )
( アチューリ駅の線路終端の車止め )
( アチューリ駅構内。後方は、ネルビオン川とリベラ橋 )
リベラ橋を遠目に見て、準急トラーニャ行きが発車するところです。駅の電光表示が、Semi Expressだったので、「準急」と書いています。平日に数本運転されるだけの通勤通学電車です。
ライトをつけて停車しているのが、次に発車する各駅停車ベルメオ行き:Bermeo です。現役最古参の200系の青い車両です。ベルメオ方面の電車は、平日30分間隔、土曜休日は1時間間隔の運転です。
( アチューリ駅ホーム先端から下り方向を望む )
2) のんびりとゲルニカに向かう
ベルメオ行きの電車は、1車両に数人の乗客を乗せてアチューリ駅を発車しました。
川に沿って蛇行する複線の線路を左側通行で進むと、3分で、次の駅ボルエタに到着。メトロとの乗換駅ですが、平日の朝の下りに乗ってくる乗客は数名です。周辺は、少し時代がかった工業地帯で、かつて重工業都市だったころのビルバオの面影を残しているようでした。
( メトロ1,2号線との乗換駅ボルエタ駅:Bolueta )
( 乗換口。左ウスコトレン、右ビルバオ・メトロ )
各駅停車の電車は、2、3分おきに停車しながら東へ走り、ドゥランゴ方面との分岐点を過ぎると、線路は単線になり、向きを北に変えます。同じようなデザインのマンションが点在する都市近郊風景は一転し、木々の生い茂る丘陵地帯となります。
( 本線とウルダイバイ線の分岐点の様子 )
電車が、小さな峠を越えると、次第に農地や牧草地が視界に入ってきます。北海道みたいな風景です。前日の雨でぬれた牧草や木々の、しっとりとした緑色が、少し重たく感じます。
私にとっては、とても落ち着く車窓の緑でした。
( ゲルニカ近郊の農村風景 )
( 車窓から見たゲルニカの街はずれ )
次第に家が増えてくると、電車は、ゲルニカ駅:Gernika に到着です。アチューリ駅から50分かかりました。ビスカイバスでも45分前後かかるそうです。本数は、電車、バスともに同じくらい。駅とバスターミナルは隣接していますので、ビルバオからベルニカ観光に往復する人は、お好みで交通機関を選べばよいと思います。
( ゲルニカ駅に着いたウスコトレンの電車と降車客 )
ゲルニカは、地域の中心都市なので、8割くらいの人が下車。代わりに乗ってくる人がいます。
電車は、ゲルニカ駅で5分以上停車。上り電車の到着を待って発車します。
とても、のんびりとしたローカル線風景です。
( 上り電車が到着。背後は、ウスコトレンの工場兼車両基地 )
構内踏切には警報器がありません。そのため、上り電車は、時速20kmくらいで、ゆーーーくりとプラットホームに入ってきます。そして、上り電車の降車客が踏切を渡り終わったころ、下り電車が、静かに発車して行きました。
( ゲルニカ駅で交換する上下の電車 )
ゲルニカ駅も、かなり立派な造りです。
正面入り口奥は、待合室、事務室で、人の乗り降りできる改札口は、正面右の張り出し部分にあります。プラットホームのかさ上げや、自動改札化のときに、動線が変わったようです。
( ゲルニカ駅舎正面 )
ここで途中下車して、ゲルニカの歴史的建築や、バスクの小都市の、しっとりとした雰囲気を、こころから楽しみました。
3) ウルダイバイ線のハイライトを見よう
ゲルニカ見物を終えて、再び、ウルダイバイ線のお客となりました。
進行方向右側に座り、ウルダイバイ自然公園の湿原風景と、エスチュアリーと呼ばれる河口の地形を楽しみます。
ゲルニカを出た電車は、10分くらい走ると、湿原の縁に出ます。時速80kmくらいですが、かなり揺れます。
( 2枚ともウルダイバイ自然公園の眺め )
9月半ばを過ぎると、ススキの穂が出始め、一帯も初秋の雰囲気が漂い始めました。湿原の向こうに木々がびっしりと茂った山々が見え、日本と同じスカイラインの田園風景が続きます。こんな風景を見ながら、老いていくのもいいなあ、と思える景色です。
湿原が尽きると、電車の行く先に海が見え始めます。別荘らしき家、ヨットなども目に入ってきます。バスクの豊かさを、さりげなく見せられたような気分です。
( 車窓に海が見えます。ムンダカ手前付近 )
幾つかの入り江を通り過ぎたところが、ムンダカ駅:Mundaka。ひそひそ声さえ遠くから聞こえそうな静かな漁村です。
( 終点のひとつ手前、ムンダカ駅 )
途中下車して、どんよりとしたカンタブリアの海を見に行きました。
そして、三たびウスコトレンの客となって走ること5分。ウルダイバイ線の終点ベルメオ駅:Bermeo に着きました。
( 雨をついてカーブしたベルメオ駅に着く電車)
今日のベルメオは、朝の曇り空が、昼過ぎには本降りの雨と変わりました。もやに霞むベルメオの旧市街に行き、ランチを食べがてら街中散歩も雨模様。晴れれば、カラフルな色合いをした漁港周辺のマンションが、もっと映えるんだろうな、と思わずにはいられません。
( ベルメオ駅で折返し待ちのウルダイバイ線の電車 )
( ベルメオ駅前。駅舎は、半地下構造 )
ベルメオ駅についた電車は15分ばかり停まって、折返して行きます。地元の人たちに混じって数人のガイジン観光客も降りてきます。駅員さんに、「サンファン・デ・ガステルガチェ行きのバスは、どこから出ますか」というようなことを聞いているようです。あんなに有名観光地なので、案内表示くらい出せばいいのに、と私は思いますが、ヨーロッパ感覚では、そうはならないようです。
( ベルメオ駅裏の高台より雨に霞む旧市街を遠望 )
ウスケラが聞こえてくるビスカヤ県の美しい漁港都市ベルメオ風景を脳裏に焼き付けて、帰路につきましょう。
平凡なようで、バスクらしさを感じるウルダイバイ線の電車の旅でした。
2018年3月 記 了