うらぶれた釣り堀みたいなニャック・ポアン  2019年10月訪問  

0443ニャックポアン内部の池と祠堂 (18)
( ニャック・ポアンを囲む湿原状の巨大な池 )

グランド・サーキット(大回りコース)の左周りコースを取ると、北大門を出て2番目にあるのが、ニャック・ポアン: Neak Pean という遺跡です。ここだけ音感が違う名前の遺跡です。実際の様子も典型的なアンコールワット遺跡群とかなり異なります。

ひとことで言えば、うらぶれた釣り堀のような水辺の遺跡です。

良く言えば、まぶしいくらいに青空を水面に映す大きな池に囲まれた水辺の遺跡です。崩れかけ、黒ずみ、ゆがんだ石造建築物や、うっそうとした熱帯樹木ばかり見ていると、とってもすがすがしく大らかな気分になれます。

幹線道路沿いに、ちらちらと大きな池が見えてくるあたりがニャック・ポアンの入口です。入場ゲートの奥の両側に、びっちりと土産物店、傷痍軍人の寄付ブース、露店の音楽喫茶みたいな店がならんでいます。他の石造寺院と、明らかに雰囲気が異なります。

「Tシャツ、安いよ」、「ワン・ダラー、ワンダラー」
の声と、手招きをかわして参道を進んで行くと、青い空と大きな水面が突然、現われて、とっても嬉しくなりました。
441ニャックポアン池と参道快晴 (3)
441ニャックポアン池と参道快晴 (5)
( ニャック・ポアンの参道入口と土産物店 )

赤茶けた土手の道が尽きると、池をまたぐ木道がまっすぐに続きます。両側の水に、青い空と白い雲が映って気分爽快。けれども、10月末の太陽は、じりじりと焼け付くような強さです。森の木立に入ったら少しは涼しそうと期待しながら歩きました。

351ニャックポアン池と参道と湖
( ニャック・ポアンに続く木道と周囲の水辺 )

枯れた木々の幹が立っていてわびしい感じもします。両側の池の深さは30cmから50cmくらいですが、泥の底なので、一歩、踏み入れたらずぶずぶと底なし沼にはまるでしょう。

441ニャックポアン池と参道快晴 (6)
( すがすがしく広い水辺景色も、実際は猛暑の炎天下 )

遠くに見えた木立に着くと、さらに内側の池がありました。荒れ果てた雰囲気です。木道上のすれ違いも慎重に先へ進みました。
353ニャックポアン池と参道奥
( 三重になった池の真ん中の池 )

池は三重になっていました。もっとも内側の池にたどりつくと、そこには祠があり、池の真ん中に高々とヒンズー様式のお堂がそびえ立っていました。

池の水は、藻が繁茂しているので淀んだ緑色です。そのうえ、ぴくりとも動きません。名称のようなヘビも、からみも全く想像できません。はっきり言って、薄汚い感じです。うらぶれ、廃業した釣り堀という感じがしました。

現在の様子では、沐浴するという聖なる気持ちなど毛頭も湧きません。これがアンコールワット遺跡群を通して感じる諸行無常感です。
0443ニャックポアン内部の池と祠堂 (1)
( 参道正面から見た一番内側の池と祠(ほこら) )
0354ニャックポアン内部の池と祠堂全景
( 池の真ん中にそびえる祠(ほこら) )
0443ニャックポアン内部の池と祠堂 (17)
( 別角度からの祠(ほこら))

それでも、往時を想像すると、とてもすごい建造物や寺院であったことが凡人でも分かります。これも、アンコールワット遺跡のすごさです。「さすが、トップクラスの世界遺産の底力」が、無言のうちに伝わってきました。

0443ニャックポアン内部の池と祠堂 (13)
( 池の水は緑色でおぞましい感じ )

ニャック・ポアンの現役時代は、医療施設を兼ねた水生の薬草園であったとガイドブックに書いてありました。水が澄み、蓮の花や、整えられた水辺の花壇があれば、確かに心休まる空間であることは想像に難くありません。

黒ずんだ石と、暑い陽射しに疲れ気味のところに、水辺の風景は一幅の清涼感を感じます。けれども、濁った水面を見ると、池に手を入れようなどという気分に全くなれません。余計、ストレスがたまってしまいました。

「写真をとって、さっさと次の遺跡に行こうっと」

2020年2月記                             了