やまぶきシニアトラベラー

気まぐれシニア・トラベラーの旅。あの日から、いつか来る日まで、かつ、めぐりて、かつ、とどまる旅をします。

ドノスティア

ドノスティア行き電車の旅

ドノスティア行き電車の旅    2017年9月

1) バイヨンヌからローカル電車に乗って

バスク地方は、あまり広くありません。町から町へ移動するときは、普通電車や路線バスの旅が多くなります。

今回は、パス・バスク:Passbask というフリーきっぷを使って、バイヨンヌ:Bayonne からドノスティア:Donostia へ普通電車で移動です。ここは、ビルバオとドノスティア間の高速バス移動に次いで、往来が頻繁な区間かも知れません。

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( バイヨンヌ駅に並んだTERアキテーヌのローカル電車 )

旅程は、フランス国鉄:SNCFの電車で国境のアンダイ:Hendaye まで行き、そこで ウスコトレン:Euskotren (バスク鉄道)に乗り換え、目的地ドノスティア (サン・セバスチャン):Donostia を目指すという内容です。約80km、乗車時間およそ2時間の、のんびりした移動です。

久しぶりに、ローカル線風の電車と鉄道風景を楽しみました。

バイヨンヌ駅舎は、白っぽい石でできた、時計塔のある威風堂々とした構えです。最近の経済成長のおかげか、壁を洗い、駅前の改良工事中です。きちんと手入れを怠らない姿勢が伝わってきました。さすがフランスです。時計が全然役に立たないのは、あきらめるしかありません。

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( 時計塔のある堂々としたSNCFバイヨンヌ駅舎 )

きっぷを自動刻印機に通して、使用開始の印字をします。これをやらないと、キセル乗車になります。くわばら、くわばら。インテリアの色使いが華やかで、いかにもフランス風です。

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( バイヨンヌ駅舎内部と改札口付近 )

駅構内には、3本のプラットホームがあり、1番線から5番線まであります。そのうち、真ん中の2番線がパリ方面行き、3番線がアンダイ方面行きのホームです。人は、多くなく、朝夕の通勤時間帯でも、のんびりとしたムードが漂っています。

これから乗るTER Aquitaine (テル・アキテーヌ)という普通電車は、地方政府がお金を出し、SNCFが受託運行している地域内のローカル電車です。連接台車の4両編成の車両は、まだ、新しく、車内もきれいです。

※時刻表は、別のブログ「バスク時刻表2017年メモ」を参照してください。

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電車の出入口は、低いプラットホームに対応するよう床面を低くしてあります。それでも、まだ、1段ばかりステップを昇らないといけないのは、ご愛嬌でしょう。

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( TERアキテーヌ電車側面 )

色とりどりの服を着た乗客が、のんびりとパリ行きのTGVを待っています。ヨーロッパの鉄道駅ならではの旅情を感じる場面です。

その日のアンダイ行き普通は、のっけから45分遅れ。やっと来た電車に乗って終点を目指します。
車内も、温かみのある雰囲気。清潔ですっきりしています。

TERアキテーヌも、自転車持ち込み可。日本のローカル線も、利用客の便を考えて、是非、見習ってほしいです。大前提としては、よほどのことがない限り、全員座れて、まだ空席がある程度の混み具合であることです。

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( TERアキテーヌ車内の様子 )

最近のSNCFでは、普通電車でも自動音声による案内放送があります。

駅を発車すると、
「この電車はアンダイ行きです。次はビアリッツです」
(Ce train est destination Hendaye. Prochaine d'arret, Biarittz. )
と次の停車駅を放送します。

駅が近づくと、
「ビアリッツに着きます」
( Nous arrivons a* Biarittz. )
と、言います。技術の進歩の成果です。

けれども、ご乗車ありがとうございます、とか、ドアに指をはさまれないよう、ご注意ください、とかは決して言いません。

電車は、約40分かけて、フランス南端の国境の町を目指しました。

45分の遅れは、終点までそのまま。そのため、折り返し上り電車も15分遅れで発車して行きました。どうして遅れたのか、最後まで理由は分かりません。


2) アンダイとエンダイア:Hendaye & Hendaia

「Hendaye」は、難読地名です。フランス語では、「ア」ンダイと発音します。アクセントは最初の「ア」にあります。なんとなく、”アンダイエ” などと言いたくなる気持ちは分かりますが、秋葉原が、決してアキバ・ハラではなく、アキハ・バラであるように、ここは、アンダイです。

事態をややこしくしている要因に、Hendayeのことを、スペイン語またはウスケラでは、Hendaia、エンダイア、と言うこともあります。もしかしたら、エンダヤ、と聞こえる方もいると思います。フランス語風の発音をする方は、どうか、最後の母音を独立して発音したくなる気持ちを、ぐっと、こらえてください。

アンダイは、スペインに向かう場合、フランス最後の駅です。駅の構内は広大で、3本のプラットホームの海側には20本以上の線路がある貨物ヤードが広がっています。

シェンゲン協定により、国境の検問が事実上廃止となった現在、アンダイ駅もがらんとしてしまいました。ローカル線の折返し駅の風情です。長くて幅の広いプラットホームにぽつんと停車したTERアキテーヌの電車が、どこがわびしげです。

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( 広すぎるアンダイ駅構内 )

アンダイ駅舎の外観は、30年前と変わっていません。多少、改造していますが、私にとっては懐かしい姿のままでした。

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( SNCFアンダイ駅舎 )
198608アンダイ駅
( 30年前と、ほとんど変わらないアンダイ駅。Gare de Hendaye Sep.1986 )

けれども、内部は21世紀に見合うよう、現代風になっていました。天井の照明は明るくなり、発車案内は電光掲示になって、きっぷの自動販売機も設置されました。フランスとスペインを結ぶ幹線ルート上に位置していることに変わりはないので、駅には、少なくない数の旅行者がいます。

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( アンダイ駅改札と左奥のきっぷ売場 )

接続電車の発車時刻まで余裕があったので、駅の周りをぶらぶらしました。
たくさんの線路の向こうに、国境のビダソア川を隔ててオンダビリアやイルンの市街地が見えます。

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( アンダイ駅付近から対岸のオンダビリア方面を見る )
198609アンダイ駅からイルン方向手前EUSKO鉄
( アンダイ駅付近から眺めたイルン方向。1986年9月 )

かつて、駅前に軒を連ねていた両替屋さんも、ユーロ導入ですっかり消えました。平凡なアパートが並ぶだけの駅前風景です。

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( 雨のアンダイ駅前。左の道路下付近が、EuskotrenのHendaia駅 )

3) ウスコトレンで進む:Euskotren

駅に沿った道路から下を見ると、バスク鉄道こと、Euskotrenの一本きりの線路が、すうっと伸びています。

SNCFの設備や敷地がたいそうな規模であることと比べると、究極のシンプル形です。けれども、旅行者にとっては、ウスコトレンの方が便利な電車なのです。

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( ウスコトレンのエンダイア駅と、奥のSNCFアンダイ駅舎 )

乗換客は、SNCFアンダイ駅とウスコトレンのエンダイア:Hendaia 駅の間100メートルくらいを徒歩で移動します。雨でも、荷物をひきづって走れば、まあいいか程度の距離感です。

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( SNCF Hendaye駅前から見たHendaia駅舎 )

ウスコトレンの駅舎は、海上コンテナ1個分くらいの、こじんまりした空間です。きっぷ売場、2台のきっぷ自動販売機、自動改札機があるので、電車の到着時には、けっこう混雑します。駅員さんが、「降りる人を通してあげてえ」、というように腕を横に広げて、乗車客を止めています。

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( Hendaia駅舎内部。左の青枠がきっぷの自動販売機 )

ひとしきり電車到着時の喧噪が終わると、改札口もプラットホームもひっそりとします。

電車は、ドノスティア方面からやってきて、十数分停車したのち、折り返しドノスティア・アマラ経由ラサルテ行きとなります(Amara,Donostia ---  Lasarte) 。 30分間隔の運転です。Hendaia駅では、朝6時から夜10時すぎまで、まったく同じパターンでの電車折返し風景が、米つきバッタのように繰り返されます。とても、わかりやすい仕組みです。

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( Hendaia駅に到着したウスコトレンの折返し電車 )

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( ウスコトレン最新型900形の車内 )

CAF社製の最新型の900形電車は、丸味を帯びた先頭デザイン、白っぽい色合い、機能的な座席、ごみ落書きがない車内などが印象的です。鉄道サービスや技術レベルが、とても高いことが一目で分かりました。安心して乗っていられる鉄道です。

車内の行先案内や停車駅案内は、スクリーン表示です。言語表記は、ウスケラ、スペイン語、フランス語、英語の順で繰り返されます。

また、放送では、次の停車駅の地名のみ、1回だけ言います。「次は」、に相当するセリフはなしで、チャイムのあと、「アマラ。ドノスティア」という感じです。

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( ウスコトレン900形の停車駅、行先スクリーン表示 )

さて、発車です。
すぐに、国境のビダソア川を渡ります。進行方向右側には、SNCFとスペイン国鉄RENFEの線路が敷かれた橋があります。その向こうに見えるのは、イルンとオンダビリアの境目くらいの街並みです。

写真はありませんが、進行方向左側は国道の橋です。

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( Hendaia発車直後に渡る国境のビダソア川とSNCF/RENFEの線路 )

電車は、ドノスティア・アマラまでは、右側通行で走ります。約40分かかります。

ガイジン客の大半は、サンセバスチャンに行きたいのですが、表示はドノスティアやアマラばかり。サンセバスチャンの文字が少なく、不安になる方もいるようです。ドノスティアが、サンセバスチャンと同じ意味であることや、アマラ駅が、ドノスティアの中心部に近いターミナル駅であることを知らないと、仕方がないです。慣れるしかありません。

途中駅から、少しづつ地元客が乗ってきて、アマラに着くころには、座席の3分の1くらいが埋まっていました。
私も、ビーチと美食の高級リゾート、ドノスティア観光に行くため、電車を降ります。海辺のすがすがしい空気を思いっきり吸いに行きましょう。


4) ドノスティア・アマラの鉄道風景:Donostia Amara

電車はアマラに到着しました。8割方の乗客が降ります。そして、その半分くらいの人が乗ってきます。

アマラ駅は、ウスコトレン最大の駅です。折返し式の配線で、プラットホームのある線路は6本あります。朝から晩まで、電車がひっきりなしに発着しています。そう言っても、日本人感覚では、人も少なく、いつもがらんとしています。

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( ドノスティア・アマラ駅プラットホーム風景 )

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( アマラ駅に並ぶ多くの自動改札 )

アマラ駅正面は、さすがに堂々たる造りです。青い看板に書いてある内容は、駅名ではなく、メトロ・ドノスティアという意味のウスケラ兼カスティヤーノです。駅前は、ちょとした公園になっていて、観光客は、木々の向こうに並ぶ整然とした高級マンション風景に、この地の豊かさを感じてしまいます。同時に、「ここは、安心な町だ」という雰囲気も伝わってきます。

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( アマラ駅正面 )

アマラ駅では、すべての電車が折返します。見ていると、先発の電車が発車したあと、早ければ4、5分もすると、次の電車が同じプラットホームに入線します。ダイヤが正確で、ちみつな運行管理がされていることが実感できます。車両がきれい、混雑がない、待ち時間が少ないことを考えると、日本と同等か、それ以上のサービスと技術水準です。
「ウスコトレン、すごいぞ」、と心の中で、拍手喝采しました。

ホーム脇の側線に停まっている青い電車は、旧型車両です。定期列車は、すべて白色ベースの900形車両で運転されていました。

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( アマラ駅で発車待ちをするウスコトレンの電車たち )

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( 4本の電車が横並びで停車しているのは壮観な眺め )

バスク鉄道こと、ウスコトレンの線路の幅は、JRよりちょっとだけ狭い1000mmです。また、プラットホームは、電車の床面とぴったり同じ高さに作ってあります。そのため、プラットホームに立って線路を見やると、日本の線路風景と、ほとんどウリ二つの光景が展開します。カーブの作り方、ポイントの配置など、いつもの通勤で見慣れている雰囲気そのものです。

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腹ごなしの散歩を兼ねて、アマラから5分ばかり郊外に出て、新興住宅街にある駅に降りました。日本の大都市近郊の私鉄の新線風景と、とても似た光景です。地味な色合い、機能性重視で、デザインで冒険しない抑制の効いた造りなど、日本人に受け入れやすい駅風景です。

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( ロイオラ駅出入口: Loiola )

小規模駅には、普段、駅員さんはいません。自動改札機のうち、必ず1台は通路幅が広く、車椅子利用者や、ベビーカーを押したお客がゆうゆう通れるようになっています。

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( 標準的な自動改札機とプラットホームへの階段など )

駅構内には、広告看板類がいっさいありません。発車案内は、LED電光案内で表示。電車が近づくと、発車案内表示脇のランプが点滅します。自動音声で、「電車がまいります」、とか、「あぶないですから白線の内側へ下がってお待ちください」、と注意放送を行なうことはありません。

乗客は、静かに待ち、電車もあまり音を立てずに到着し、ちょっとだけ、さわさわとしながら客扱い行なって、すうーーっと発車していきます。

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( 駅に着いた電車 )

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( 臨時折返し用のシーサスクロッシングを通って到着するウスコトレン )

「都会の電車だなあ」と、見とれてしまいました。


                                           2018/2月記。2017/9訪問   了

辛口のサンセバスチャン

辛口のサンセバスチャン

今は昔、これほどたくさんの日本人が、サンセバスチャンにやってきてレストランやピンチョスバルを楽しむことなど、予想だにできませんでした。

私は今回の旅にあたり、老若男女、プロ、アマを問わず、いろいろな人たちによって書かれたサンセバスチャン旅行記やブログ、雑誌などを読みました。

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(  陽光に輝くコンチャ湾  Donostia/San Sebastian  )


美しいコンチャ湾の海岸風景、星付きレストランのバスク料理、そして、時には人混みをかき分けながらめぐったピンチョスバルの、ほっぺが落ちそうなくらい美味しかった小皿料理やチャコリ。旅する人々は、異口同音に、美しい眺めと美味しい食べ物を絶賛します。ドノスティア(サンセバスチャン)市当局にとって、これ以上、望むものはないのではないかと思えるくらいの内容です。

けれども、私は皆さまの素敵な体験談を読むうちに、少し悲しくなってきたのです。

もちろん、一人ひとりの忘れ得ぬサンセバスチャンの思い出に、水を差す気はこれっぽっちもありません。また、高級リゾート地ドノスティアに、観光客を呼び込み、発展を促すための関係者のアイデアや努力に異議を唱える気持ちも皆無です。

ただ、思ったのです。

「ここの旅行記や記事って、誰が書いていても、みんな同じだよね」
「と、いいますと?」
「美しい風景描写と美食レストランや絶品ピンチョスバルの説明に終始していますね」
「だって、そのとおりでしょ」
「屁理屈みたいですが、それが、本当に、サンセバスチャンの真の魅力なのでしょうか?」
「つまり、なに?」

私は、コンチャ海水浴場の景色は、バスクの誇りと文化を感じてもらうためのきっかけみたいなもの、ピンチョスバルの美味しい小皿や地酒は、”そで触れ合うも他生の縁”、という、ご当地のバル文化の温かみを肌で味わってもらうための撒き餌みたいなものの気がしています。

「あんまり難しいことを考えなくていいんじゃない。旅行に来て、きれいな景色見て、うまいもの食って帰るのが一番!」

このような、大勢の方のお気持ちを十分、分かったつもりでの私自身の気持ちです。

ささくれだった心が和らぎ、いつまでも愛する人に抱かれていたいような気分になるのがドノスティアの魅力、ということはないのでしょうか。にわか友達の旅人といっしょにピンチョスを口にするとき、一期一会の縁に深く感謝する気持ちでいっぱいになることはないのでしょうか。

サンセバスチャン物語では、美しいコンチャ湾に感嘆し、有名レストランや評判のピンチョスを、効率良く、あるいは細大もらさず食べ歩くことに夢中になっています。他のパターンの展開は皆無です。
他のすべてを忘れさせるくらい、サンセバスチャンの美食体験は、強烈ということかも知れません。けれども、それでは、ドノスティアやスペインバルの魅力の半分だけを見ているに過ぎないような気がします。

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( 夜のとばりが迫るドノスティア旧市街のバル街 )

バルでは、カップル、あるいはグループの方々の顔ばかり見ていないで、よそのお客とチラッと視線を合わしてみてはいかがでしょう。ふと、目が合ってほほ笑んだことがきっかけとなり、二言三言、あるいは、それ以上、自然の成り行きとして言葉を交わせるバルの気の置けない雰囲気に、もっと気持ちが傾かないのでしょうか。もう、二度と会わないかも知れない30分だけのピンチョスバル友達に、「アグル=またね」と言って別れた余韻にひたることはないのでしょうか。お互い、サンセバスチャンへたどり着くまでに長い道のりがあったはずです。遥か彼方からやってきたニッポン人に、イギリス人もバスク人も、きっと興味をそそられるでしょう。

私の妻も、スペインのバルで、隣のテーブルに座っていたおじさんと私たちの目が合ったのが運の尽きでした。珍しい顔つきのガイジンと話がしたくて、うずうずしていた好々爺のおじさんに、ワインの一杯をおごってもらうわけでもなく、スペイン語で延々とニッポン礼賛論やアメリカ旅行談を聞かされたことを、印象深過ぎるスペインの良き思い出として語っています。

ボルダ・ベリ、ゴイス・アルギ、ガンダリアスなどに代表される有名ピンチョスバルめぐり記は、残念ながら、もう旬ではないと思います。その陰としての、隠れ家バル探訪記も同様でしょう。一皿の料理や、一杯の飲物を通して、旅行者のひとりひとりが、バルで何を感じ、何を思ったかを語ることが、とても大切な気がします。

なぜなら、ピンチョスバルの数には限りがありますが、旅行者の感動体験の数に限りはないからです。

たとえば、同じ飲み屋でも、スペインバルと、イギリスのパブでは、明らかに雰囲気が違います。楽しむポイントも違うと思います。注文の品と引き換えにお会計をするイギリスパブと、大混雑でも後会計をまもるピンチョスバルに、旅の者が感じることは同じなのでしょうか。そんなテーマでの異文化体験も読んでみたいのが、私一人だけというのは、とてもつらいです。

Free picture of UK PUB2018
( イギリスのパブ:フリー画像より引用 )

多種多様なドノスティアの魅力、サンセバスチャンでの感動が広まることを願いつつ。


             2017/9訪問           了  2018年1月



リッチで繊細なドノスティア

リッチで繊細なドノスティア    2017年9月


1) はるか彼方のサンセバスチャン

バスク旅行をする日本人観光客の人気ナンバーワンは、おそらくドノスティア: Donostia でしょう。スペイン語で、サンセバスチャン: San Sebastian と呼ぶ高級リゾート都市です。バスク地方の主要都市のなかでは、もっともウスケラ ( Euskera /  Euskara  / バスク語)が、聞こえる場所だという評判です。

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( ドノスティアが、言語にかかわらず正式名称。サンセバスチャンは、当局の表示には書いていないことが多い。 左や上がウスケラ、右や下がカステヤーノ=スペイン語 )

ビルバオ派の私にとっては、少し残念ですが、多くの日本人が、バスク旅行の結果、ドノスティアに惹かれるのも納得します。何しろ、もともと高級リゾート都市として発展してきた街ですから、観光客に好かれて当然です。
「人気のドノスティア、経済力のビルバオ」、でしょう。

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( Donostia中心部遠望。手前旧市街、ビル街が新市街 Sep.2017 )

私のドノスティア感を一言で表すと、”フランス風”です。

バスク一帯は、もともと独特の雰囲気を持っています。その中でも、ビルバオとドノスティアの雰囲気は違います。普通の観光客でも、半日居れば分かるくらい違います。私の頭の中で、ドノスティアをイメージするキーワードは、リゾート、ハイセンス、ビーチ、物価高、フランス領事館などです。

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(   コンチャ海水浴場とイゲルドの丘。Donostia / サンセバスチャン )

私のドノスティア事始めは、ここのフランス領事館に入国ビザを取りに行った1986年9月です。

当時、フランス国内で頻発したテロ対策のため、フランス政府は突如、EU以外の国籍の旅行者にビザ取得を義務付ました。翌朝、それを知らずにビルバオ発の直通バスでフランスに行こうとしていた私は、国境のアンダイで検問に引っ掛かり、ビザ取りのためにサンセバスチャンに引き返しました。街並み観光をするどころではありません。それでも、「高級マンションが整然と立ち並ぶ上品な場所だなあ」と、マリア・クリスティーナ橋付近の景色を見ながら感じたことを、今でも記憶しています。ビルバオと違い、30年以上経っても、街のみやびな雰囲気は同じです。
ビザ発給の待ち時間に近所のバルに入りましたが、ピンチョスブームの気配もない時世でした。

スペイン語名サンセバスチャンのことをウスケラ:Euskera/Euskara、つまりバスク語でドノスティアと呼ぶことを知っている日本人など、当時は皆無。今でも多くはありません。その後の約20年間で、初めてドノスティアという呼称を知っている方にお会いしましたが、聞けば、親御さんのご縁でドノスティアに泊まったことがある方でした。

鼻持ちならない閑話休題ですが、さすがに、そのお方もバスク語の現地呼称がウスケラとか、(エ)ウスカラというのは、記憶にないようでした。21世紀初頭の、日本人観光客のバスク意識の一端を垣間見るようです。

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( 市内案内表記。ウスケラとカステヤーノ。Donostia Sep.2017 )

ですから、昨今のバスク人気上昇を知るにつれ、良かったねという気持ちになるのです。


2) 風雅で繊細なドノスティア

2017年のドノスティア、スペイン語名サンセバスチャンは、きらきら輝く精巧なガラス細工のような都市でした。街中の雰囲気は、フランスのバスク地方と共通する部分がたくさんありました。ひょうひょうとして、取り澄ましているけれども親切、という雰囲気です。

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( モンテ・ウルグルの頂上から望むコンチャ海水浴場 )

都市の歴史や、コンチャ海水浴場に代表される観光名所の詳細は、多くの方々が語るとおりです。三ツ星レストランやピンチョスバルのレベルの高さで食通をうならせる美食都市ぶりも、万人の褒めているとおりだと思います。
未体験者にとって、サンセバスチャンやビルバオは、想像を絶する整然とした高級感を持つ”スペイン”です。「ちょっと”地方都市”めぐりをするか」という、上から目線感覚が、木っ端みじんに打ち砕かれると言っても過言ではありません。ですから、旅行記では、単調な紹介文を書くだけで、気持ちがいっぱいです。

私は、そういう輝きの奥に、バスク州ならではの複雑な思いが、街路の標識や、お店の看板に込められているような気がしています。
サンセバスチャンというブランドで、街のイメージと経済のいくばくかを支える誇り高きドノスティアが、いつまでも人々の記憶に残ることを祈ってやみません。


3) リッチなドノスティアを歩いて

9月のドノスティアは、頬に当たる空気もだいぶ涼しくなってきていました。青々としたコンチャ湾:Bahi*a Concha / Kontxa baieの色も、高度を下げた太陽の光のせいか、真夏にくらべると、少しばかり黒い濃さを増しています。浜辺で日光浴をしたり、海の中に入っていく人は、めっきりと減り、みんな海岸沿いの遊歩道を行ったり来たりするようになっています。

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( 海水浴客もほとんどいなくなった初秋のコンチャ海水浴場 )

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( カンタブリアの海の色は、濃さを増しつつ )

多くの方々のドノスティアに対するイメージは、ほぼ新市街地の印象です。
テラスが出窓になったバスク風高級マンション街の雰囲気に、私たちは、一目ぼれのような衝撃を受けます。高さやデザインがほぼ揃った、均整の取れた美しい市街地が延々と続きます。歩道の敷石の欠けとか、修理途中で放置されているような建物も、まず、見当たりません。全然、荒れた感じがしないことも、好印象の理由です。
「こりゃ、すごい高級なところへ来たな」
と、ほとんどの人が感じます。


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( ドノスティア (サンセバスチャン) の大聖堂と、付近の高級マンション )

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( 新市街の中心部は、整然とした高級マンション街 )

物価も相当高く、お隣のフランスより少し安いくらいでしかありません。
「どうりで、ホテルが高いと思った」
そのとおりです。9月になったというのに、1泊100ユーロくらい出しても、清潔で便利ですが手狭な部屋しか取れません。

欄干や両岸の彫刻が目を見張るばかりのマリア・クリスティーナ橋や、同名のホテルを眺めるにつけ、
「ここは、金がかかる街だ」、ということに、あらためて納得します。

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( 美術品のようなマリア・クリスティーナ橋。RENFEの駅の近く )

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( 川沿いのホテル・マリア・クリスティーナと背後のウルグルの丘 )

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( ドノスティア市庁舎。旧市街と新市街の境目付近のビーチ寄りにある )
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( 安心度100%。観光ムード満点の旧市街の通り。ドノスティア )

大半の観光客は、1泊2日だろうが、1週間滞在型であろうが、ピンチョスバルめぐりを楽しみます。
私も体験者として思います。

「バルは楽しむものです。スマホにランキングデータを入れておいて、食べた、行った、とチェックしながら回る場所ではありません」

「そうは言っても、ダンナあ。一生に一回、来れるか来れないかなんだからさあ。名物ピンチョスが30ユーロでもいいんだよ」

それも、ひとつの見識として承りました。

「でも、バルが楽しかったんではないですよね。バルに行ったこと自体が、楽しかったんですよね」

「細かいことに、いちいち、うるさいなあ!」

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( ランチタイム前の旧市街のピンチョスバル街 )

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( 大にぎわいの、夜のピンチョスバル街 )

私も、ドノスティアでは、典型的な1泊観光客です。観光案内を見ながら、市内めぐりとピンチョスバル体験をしました。とても、すがすがしい午後の時間と、後悔も含めて、エキサイティングな週末ピンチョスバル体験をすることができ、大変、満足しています。
「一期一会のオーストラリア人のお姉さん、ありがとうございました」、です。

わずかな体験から感じたことは、ドノスティアは、サンセバスチャンという食通ブランドを世界にアピールしながら成長している観光都市だということです。自然環境良し、治安良し、都市づくり良し、食べ物良しの魅力的な街です。何人もの日本人や外国人が、お母さんの胸に抱かれるような、安らかで清らかな気分に惹かれて、ここに移ってきた理由が、よく分かります。

お仕事に恵まれて、この地で憂いなく眠れますよう、祈念してやみません。

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ウスケラ ウスカラ バスク語

 1) バスク州の二つの公用語

スペインのバスク州と周辺一帯は、普通の日本人が思い浮かべるスペインのイメージから、かなり離れた地域です。

緑いっぱいの景色、総じて涼しい夏、生真面目な人々、時間に正確、清潔な市街、良い治安などなど。「あっと驚くスペイン」が展開します。私も、日本のどこかにいるような気分になって、よおく眠れています。

バスク州には、公用語が二つあります。

一つ目は、ウスケラという、ご当地固有の言葉。バスク語と訳されています。
二つ目が、日本人が普通に思うスペイン語。ご当地では、しばしばカステヤーノと呼びます。


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 (ビルバオの街路表示。上がスペイン語、下がウスケラ)

私は、言語学者ではないし、バスク研究家や在住者でもありません。けれども、直感的には分かります。

「ウスケラあってのバスク文化、バスクの生活なんだな」

友人、知人たちは、いわゆるスペイン系ですが、ウスケラもきちんと習います。自分たちの文化のルーツを感じ、暮らしの奥底に流れているバスクの誇りを、そっと確かめるためかも知れません。語学が苦手な人も、バスク流の暮らしに誇りを持っていることに変わりはないと思います。

このあたりは、ウスケラを話すバスク人と、カステヤーノを話すバスク人がいっしょに暮らしている場所だというのが、私の感想です。


2) ウスケラ、ウスカラ

ご当地では、いわゆるバスク語を、” Euskera ”、または”  Euskara ”と呼びならわしています。

綴りを見ると、”「エ」ウスケラ”、あるいは ”「エ」ウスカラ”、と発音するのかな、と思うでしょう。
実際の発音は、ウスケラ、ウスカラ、に限りなく近く聞こえます。強いて言うと、「エ」の音を声に出さないで、(エ)ウスケラとか 、(エ)ウスカラ と言うと良いのかも知れません。

ステレオタイプのイメージのスペイン人は、”ス”の発音が苦手なことになっているので、「ウ”シュ”ケラ」と言うらしいです。

また、「ウスケラ、ウスカラ、どっちなの?」という人もいるでしょう。

物の本などを見ると、”ウスケラ”が、スペイン語風の言い方で、”ウスカラ”は、いわゆるバスクの言葉風のようです。私は、従前の習慣で、「ウスケラ」と言っています。

現地は、混沌状態です。まず、バスクの魂の中心、ゲルニカ議事堂にある案内表示からして、二者混同です。

パンフレット入れには、「Euskera」と書いてありますが、パンフレットそのものには「Euskara」と印刷されています。思わず、苦笑してしまいます。
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( ゲルニカ議事堂の言語別パンフレット入れの「Euskera」 )

バスク議事堂入場パンフレット ウスケラ(ウスカラ)版2017
(ゲルニカ議事堂のパンフレットは、 Euskara 表記 )

メトロビルバオのウェブサイトの言語表記は、「Euskera」です。
ドノスティア(サン・セバスチャン)観光案内の言語表記は、「Euskara」です。

もしかしたら、本当は、”にほん”と、”にっぽん” みたいな関係なのかも知れません。
いずれにせよ、こだわり過ぎて血をみるような真似だけは、絶対に反対です。


3)ウスケラを見つけよう

多くの方々が言うとおり、ウスケラは、バスク州と周辺一帯でしか聞けない言葉です。私の耳で聞くと、ドイツ語を軽くしたような音感ですが、ドイツ語とは全く別物です。

日本人観光客は、バスクに来ると、”食う、見る、バルをはしごする”に夢中になります。けれども、たまにはホテルや街中の標識に目をこらしたり、地元の人たちのおしゃべりに耳を澄ましましょう。田舎になればなるほど、ウスケラが聞こえてくるチャンスが広がります。

TX、Z、K などがいっぱい入っている文章や表記は、ほぼ間違いなくウスケラです。


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(ベルメオ市の案内板。文字は、ウスケラしかない )

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( ビルバオの市内バス停。ウスケラとスペイン語の両方を見るチャンス)


スペイン側のバスクには、あまりお土産品がありません。その代わりに、超モダンなアートに度肝を抜かれ、料理を味わい、風景に心をいやし、ウスケラの響きを聞いて、忘れ得ぬ思い出にしたいものです。

一般論として、孤立的な言語というくくりでは、ウスケラも日本語も同格です。ですから、日本語も、日本でしか聞くことができません。けれども、日本は、人口1億3000万人で、世界中に旅行者やビジネスマンが群れています。結構、日本語を聞くチャンスはあります。

その一方、バスク州の人口は200万人強で、ウスケラを日常話している人は60万人くらいと言われています。ウスケラのヒアリング体験は、とっても貴重です。


4)ウスケラを話す

生半可な日本の知識人が、ウスケラのことを、「バスク語は難解」、「悪魔でも覚えられない言語」だと紹介しています。完全に、スペイン語目線、英語目線の考え方です。

心を安らかにして、余計なことを考えずに繰り返してみてください。


おはようございます=== エグン・オン

こんちわーー    === カイショー

ありがとう      === エスケリーク・アスコ

さよなら、またね  === アグル


ほら、何のわだかまりもなく、頭に入ったことと思います。
これだけ言えれば、バルやお土産屋さんで、旅行者は尊敬の目で見られます。

日本語からすれば、英語もスペイン語もウスケラも、いずれ劣らぬチンプンカンプンな外国語なのです。あとは、やる気の問題です。英語やスペイン語、フランス語などは、何だかんだと言っても、似ている部分が多いのです。その延長でウスケラを覚えようとすると歯が立ちません。それで、”悪魔論”になります。

「スペイン人、イギリス人のみなさあん。ウスケラを勉強しますか?それとも日本語を勉強しますか?」
「・・・・・・・」(し~~~~ん)
なのです。


5) ウスケラの地名

観光客が一番、目にしやすいウスケラは、高速道路や鉄道の地名、観光ポイントの看板だと思います。

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(ドノスティアのモタ城跡の二言語表記。左ウスケラ、右カステヤーノ)

二言語が、はっきり分かれて書いてある場合は、問題なく区別できます。

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 (ビルバオ空港から都心へ向かう高速道路の地名表示)

両者が、ごちゃまぜ気味に書いてあると、動揺します。交通標識を見てみました。現代のバスクでは、二言語の合成地名がけっこうあります。

地名が / (スラッシュ) 区切りのときは、ウスケラとスペイン語のどちらかを選べます。 - (ハイフン) で結んであるときは、一語の地名です。

ウスケラ名の”Bilbo:ビルボ”と、スペイン語名の”Bilbao:ビルバオ”は、お好みで選んでいい、ということです。
けれども、 ”Vitoria-Gasteiz:ビトリア-ガステイス”は、一語です、という意味です。

難問が、”Donostia-San Sebastian: ドノスティア-サン・セバスチャン”。私も、てっきり一語だと思っていましたが、これが、間違い。ビルバオ付近の道路標識が昔のままです。

2017年秋現在、ドノスティアが正式名称ですが、「サン・セバスチャンも正規に使ってよい」いう状態に変わったとのこと。合成の市名が、あまりに長すぎて各所で不便だったのかも知れません。バスクに敬意を表して、名は”ドノスティア”を取り、実で”サン・セバスチャン”を観光PRブランドみたいなものとして認知したのかも知れません。

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(ドノスティア港の正式表記。スペイン語でも「Donostia」と記載)

写真のように、公共施設における市名表記は、どちらの言葉を使おうが”Donostia:ドノスティア"。決して”San Sebastian"ではないのです。

観光客には、そんな細かいことを要求しませんから、ご安心ください。また、たいていの地名は、両言語共通の一語です。Gernika:ゲルニカ、 Getxo:ゲチョ、などです。

私は、いつもウスケラを観察するようにしていました。そして、言語問題に対するバスク人どうしの気遣いや、試行錯誤を、心に留めながら、旅をしました。














バスクのお得なきっぷ

バスクのお得なきっぷ      2017年9月情報


その2   お得なきっぷ、便利なカード


1)  バリクカード  barikcard


ビルバオとビスカヤ県一帯を電車やバスで移動するならば、バリクカードが便利でお得です。

バリクカードは、日本のSuica、Icoca、Pasmo のようなIC系交通カードです。ただし、お買い物はできません。その代わり、現金払いの運賃より2割引きくらいで該当路線の電車、バスに乗れます。


バリクカードの表と裏です。裏面の上半分がウスケラ表記、下半分が、いわゆるスペイン語表記です。
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(Barikcardの表裏)

カードデザインは、とてもシンプルですが、センスの良さを感じます。右の指紋デザインは、街中アートからの流用で、オリジナルの屋外彫刻は、市内を見晴らせるアルチャンダ公園の一角に鎮座しています。

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 (アルチャンダ公園。指紋の彫刻の写真は撮り忘れました)


バリクカードの詳細は、メトロビルバオのウェブサイトに載っています。
https://www.metrobilbao.eus/en

1枚3ユーロ、有効期限なし、10人まで同時利用可能、クレジットカードで購入やチャージ可。メトロの他、ビルバオ市内バス、ビスカイバス、スペイン国鉄のRENFEとFEVE、ケーブルカー、そしてビスカヤ橋の通常利用で通用します。運賃は、現金払い額のおおむね2割引き。メトロの駅の自動販売機もしくは周辺の提携店舗で販売中。

何と言っても、不慣れな外国で、毎回、きっぷを買う手間が省けるし、小銭をその度ごとに用意することもなくなります。

ビルバオ都心部の均一区間の運賃は2017年9月現在で0.90ユーロ、ビスカヤ橋の最寄り駅までの片道運賃は1.07ユーロです。ざっくり言って、まる2日間、ビルバオ街歩きをしようとしているならば、バリクカードの初回最低購入額13ユーロを買っても損はないと思います。
ビルバオ土産は少ないので、記念品にもなります。

「えっ、何ですって? ”Barikcard自体を買うことが不安” ですか?」
「それもそうですね。外国ですものね」
「日本でも、電車やバスに乗り慣れていない人が、海外に行ったら、そりゃ、たまらんわ」

いろいろ、あるようですが、何とかなります。

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 (ビスカヤ橋の自動改札機。出っ張っている部分がカードタッチ場所。タッチが有効な場合は、バーが開いて通行できます)


2017年4月からバリクカードの定期券版が本格スタート。
30日有効期間中の70回利用券とか、高齢者向けのカードなどがある旨ウェブサイトに書いてあります。写真付きカードになるので、発売は、有人のカスタマーセンターのみ。観光客向きではありませんが、運賃は3割引き、5割引きの感じです。日本と違って、大幅割引の通勤通学定期券制度が少ないヨーロッパ諸国の中では、目立ったサービスです。

単なる紹介のはずが、バリクカードの宣伝になってしまいました。

ビルバオ市では、バリクカードとは別に、地下鉄と市電の市内均一区間のフリー乗車券に観光施設割引券のついた”ビルバオビスカヤカード”、略称BBCカードを発売しています。24時間券10ユーロ、48時間券15ユーロです。郷土博物館のような場所まで、こまめに入場するくらいの気概の方ならば、役立つようなイメージです。



2) サンセバスチャアンカード、バスクカード

美食都市ドノスティア(Donostia)、 スペイン語名、サン・セバスチャン(San Sebastian) でも、いわゆるツーリストカードの宣伝に余念がありません。観光案内所で紹介されたのは、市内向けの ”サンセバスチャアンカード”、と郊外を含む広域用の ”バスクカード”でした。

ドノスティアランス語版交通カード案内パンフ2017

ドノスティアウスケラと仏語版交通カード案内2017
(ウスケラとフランス語によるサンセバスチャン・カードとバスク・カードの紹介:出典ドノスティア・サンセバスチャン観光案内所パンフレット)

総論として、”10日有効”、ということで、端から日本人観光客向けではない感じです。
発想の原点が、「ゆっくり滞在して、あるときにはバスで出かけ、ある時には市内をブラブラする」、という滞在型観光客の行動を前提にしています。1泊2日や2泊3日で、三ツ星レストランや、ランキング上位のピンチョス・バルを歩き回る場合、こういうカードは使い勝手が良くありません。

私が寄った観光案内所のスタッフが調べた結果、期間限定で、バス用の6ユーロ券があることが分かりました。パンフレットに”6、12”の手書き文字が入っているのは、そのためです。それでも1回1.70ユーロの市内バスに4回乗らないと元が取れません。「オラ!ようこそドノスティアへ!」と、笑顔で接客してくれたお姉さんには残念でしたが、利用しないことに決めました。

結果として、バスに乗ったのは2回限りでした。バルめぐりは徒歩なので、あんまりバスには乗らないのです。

「やっぱり、普通の日本人の旅行ペースなんて、こんなものかな」と、サンセバスチャン・カードのパンフレットを見返して、寂しくなりました。

また、MugicardというSuica相当のバス、電車用カードがあるそうですが、バスカード以上に、一見の者には縁遠いカードでした。



3) パスバスク:Passbask

パスバスクは、スペイン側のウスコトレン社と、フランス国鉄SNCFの共同企画フリーきっぷです。
お得感があります。2)のバスクカードとは全くの別物です。

パスバスクは、ドノスティア・ラサルテからエンダイア間のウスコトレン(バスク鉄道)と、アンダイとバヨンヌ間のSNCFの、ほぼ全列車が乗り放題というフリーきっぷです。値段は12ユーロで、使用開始日と、その翌日有効。利用圏内の主要駅窓口で発売しています。

この12ユーロという値段は、バヨンヌからドノスティアまでの片道運賃額より、少し高いくらい。私も、試しに利用しました。

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 (Passbask  きっぷの購入時のセット。下がフランスSNCF区間のフリーきっぷ。上の2/2がウスコトレンの1日乗車券の引換用バウチャー)

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(バヨンヌ駅のSNCFのセルフ式改札機)

SNCF部分の切符を使い始めるときは、ご自身で刻印することを忘れないようにしましょう。これを怠ると、キセル乗車とみなされます。

パスバスクは、派手な宣伝こそないものの、地道に売れているようです。日本人のブログ旅行記でも、一人か二人、パスバスクのことに触れている人を見つけました。こまめに節約型旅行を実践する方々がいるようで、少し感動しました。

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(下のきっぷが、ウスコトレンの指定区間1日乗車券。大きな文字の「Kutxabank」は、銀行の宣伝ロゴで、きっぷの内容と無関係です)


自分の旅行プランに適したお得な切符や、期間限定の割引券をGETしたりすると、旅の達成感が不思議と高まります。


    その2 了

















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