やまぶきシニアトラベラー

気まぐれシニア・トラベラーの旅。あの日から、いつか来る日まで、かつ、めぐりて、かつ、とどまる旅をします。

ティチネーゼ門

ミラノ市電のガントレット線路を見よう

ミラノ市電のガントレット線路を見よう   2018年3月

1) ユニークなガントレット線路

ミラノ市電の線路には、「ガントレット: gantlet 」と呼ばれる線路配置がありました。そのほかにも終点ループ線や、三線分岐など、日本ではめったに見られない線路配置がいっぱいあります。

ガントレットは、複線の線路を単線のようにまとめたものです。お互いの線路は、あくまで別々です。せまい通りや、せまいトンネルを通過するとき、分岐器をつくらず、身をよじるようにしてすり抜ける感じです。

ナヴィリオ運河の東隣にある " 5月24日広場: Piazza XXIV Maggio ”の南側、”ティチネーゼ門:Porta  Ticinese”を正面に見る交差点にガントレットはありました。

電Tミラノ5月24日広場線路交錯201803
( ティチネーゼ門と輻輳する市電の線路 )

横断歩道上から線路をまじかに見ると、二組の線路が狭い間隔をおいて単線の線路のように敷いてあります。

電Tミラノ5月24日広場ガントレット201803
( ガントレットを近くで見る )

左側は、広場をループ状に周りながら発着する市電がぐるりと回るための線路です。右側は、門を迂回して、奥のドゥオーモ方向に上る電車が通る線路です。

日本では、かなり前にガントレットはなくなってしまいましたので、レアな見ものです。私の記憶では、オランダのアムステルダム市電の線路にもガントレットがありました。

自由自在に線路配置を考えたヨーロッパの市電は、都市ごとの味わいが出ています。軌道の統一規格を作って線路の敷設コストを安くしたり、メンテを簡素化できないので、日本では受容されにくそうなやり方です。


2) 終点ループ線

ヨーロッパの市電の線路にあって、日本の市電に皆無なものが、終点のループ線です。

日本では、「電車は終点では折返すもの」と信じていますが、それは狭い視点です。

多くのヨーロッパの都市では、市電は、終点でループ線をくるりと回って、もと来た方向へ戻ります。ミラノ市電も終点がループ線のパターンですから、運転席は前の1カ所のみ。電車は、絶えず前進し続けます。

ミラノ市電に乗ったら、是非、車両の先頭と一番後ろを観察してください。最後尾は、立ち見の展望席のように何もないスペースになっています。

下の写真は、ミラノのサッカーの聖地、サン・シーロ・スタジアム前の終点のループ線風景です。
スタジアムの開業に合わせて市電を延長し、とても広い駅を設置しました。試合終了時には、何本ものループ線上に10組以上の市電が待機し、数万人の観客を次から次へとさばきます。

電Tサンシーロ前ループ線配線201803
( 終点サン・シーロ停留所。普段はがらーん )

電Tサンシーロループの電車
( サン・シーロのループ線をぐるりと回って都心部へ向かう市電 )

3) 三線分岐

ミラノ市電のポルタ・ジェノバ駅前には、一本の線路から三方向に分岐している「三線分岐」と言われるポイントがあります。ほかの場所にもありますので、三線分岐は、ミラノでは珍しい線路配置でも何でもありません。

ひんぱんにやってくる市電が、その都度、ガタゴトと相当の音をたてながら三線分岐やクロスしている線路を通過していくのを見ると、路面電車の力強さに思わず感動してしまいます。

電TDポルタジェノバ駅寂れて201803 (1)
( 三線分岐。ポルタ・ジェノバ駅前 )

電TミラノPジェノバ駅前1500形
( 三線分岐を横目にクロスした線路を渡るミラノ市電1500形 )

市街地に網の目のように張り巡らされた市電の線路には、たくさんのパターンがあります。道路構造や運転方式に合わせた柔軟な線路配置を、謎解き気分で楽しみました。

2019年3月 記



峠を越えたかナヴィリオ

峠を越えたかナヴィリオ    2018年3月訪問

1) 人気スポットの旬

ミラノの観光スポットにも旬があります。

運河沿いのデートスポット、ナヴィリオ:Naviglio も、一部ミラネーゼの間では、旬は越したと思われ始めているようです。

「何で、そんなことが分かるの?」
「友人に『ナヴィリオに行こうよ』、って言ったら、あんまり、いい顔しなかったからです」
「そんなあ。ニッポン人のおじさま、おばさま、OLさまの間では、人気が高まりつつあるのに・・・・・」
「2015年のミラノ万博を境に、食べ物の味が平凡になり、店の雰囲気が観光地みたいになった」
「私は、観光客です」
「それも、そうだな」、という訳で、渋々、ナヴィリオにやってきました。

ドゥオーモからですと、ポルタ・ティチネーゼ通り:Corso Porta Ticinese を南下。市電3系統でも、タクシーでも、徒歩でも来られます。

電Tミラノ5月24日広場4700形201803
( ナヴィリオを通る市電3系統。奥がドゥオーモ方向 )

とにかく、ギリシャ神殿風のティチネーゼ門:Porta Ticinese を目指して進みましょう。

ナビリオ夕方5月24日広場
( ティチネーゼ門のある5月24日広場 )

メトロ利用の場合は、緑色のラインカラーの2号線のポルタ・ジェノバ:Porta Genova 駅下車、徒歩5分ほどです。ティチネーゼ門とは別の方向からのアプローチになります。

ナビリオ夕方Pジェノバ駅の石畳201803
( ポルタ・ジェノバ駅。左奥がナヴィリオ地区 )


2) けだるいナヴィリオ

「あんまり、人通りがないのですね」
「明るいうちはね。何しろ、飲み屋街ですから」
「御意」


ナビリオ夕方Darsenaと5月24日門201803
( ティチネーゼ門を横に見るナヴィリオ地区のダルセナ )

ナヴィリオの中心は、ダルセナ:Darsenaと、カナル・グランデ:Canal Grandeという2本の運河が交差するあたりから、カナル・グランデ沿い一帯です。運河の両岸に飲食店がびっしりと並んでいます。

ちなみに、ダルセナは、船の係留地という意味、カナル・グランデは、大きい運河という意味です。
「じゃあ、『小』運河もあるの?」
「はい。グランデとY字型に分岐しています。飲食店は、ちらほらある程度ですかね」
「ふうーん」

ナヴィリオは夜の街なので、明るいうちに行くと、ちょっと、しらけます。皆んなブラブラというより、ダラダラ歩いている感じです。店員さんも奥へ引っ込んでいて、気だるい雰囲気が漂っています。

ナビリオ夕方カナルグランデ (1)
( ダルセナから分岐するナヴィリオの中心、カナル・グランデ(大運河))

いくら、アペリティーボという、ドリンク一杯でおつまみ食べ放題の割安サービス時間帯だからと言って、明るいうちから飲んだくれ気分にはなりません。ちょっと、引っ掛けるくらいがいいのです。

ミラネーゼは、よく働き、よく楽しみ、よく休みます。
ニッポン人は、いつも働き、我を忘れるまで飲み、休まずコソコソさぼります。

せっかくミラノ観光にきたので、あまり深刻にならずに、10ユーロとか15ユーロを払ってアペリティーボを楽しみましょう。暗くなると、人気のバルはかなり混むので、流れに乗れない観光客は肩身が狭くなります。

ナビリオ夕方ハッピーアワーの宣伝 (1)
( 観光客も入りやすいアペリティーボの宣伝 )

ナビリオ夕方ハッピーアワー中のバル201803
( ナヴィリオのバルも明るいうちはガラーン )


3) 暮れればナヴィリオ

それが、夜になると一転です。
週末でなくとも、7時を過ぎると、どっと人々が繰り出してきます。観光客もいっぱいいますので、安心です。

にぎわいに身を投じても、ナヴィリオの旬は、もう過ぎたのか、まだ過ぎていないのか分かりません。ただ、ミラネーゼならではのセンスに照らすと、峠は越えたと言いたいのでしょう。たぶん、新たな驚きや興奮がないのです。

ナビリオ夜景カナルグランデ賑わい始め
( カナル・グランデの宵の口のにぎわい )

どの店も、少しずつお客が増えてきました。みんな、まず、そぞろ歩きをしてからバルに入って一杯やりながらおしゃべりです。一人の人もいて、ちょっと一杯引っ掛けながら人間観察をしています。

ナビリオ夜景カナルグランテとバル201803
( ナヴィリオの夜はこれから )

こちらも、一杯の飲物におつまみを少々取って退散です。この後、ちょっと移動して、皆んなで夕食を取るのです。
おつまみ食べすぎて、お腹いっぱいになる旅人もいますが、次からは、ほどほどにしたいものです。

美味しいイタリア料理を一食、食べ損ねるなんて、ああもったいない、もったいない!

それでも、ミラノ旅行に来てナヴィリオまで足を運ぶ日本人なんて、まだまだ少数派のようです。来るなら、今がラスト・チャンスかも。


2018年9月記                   了


カテゴリー
  • ライブドアブログ