やまぶきシニアトラベラー

気まぐれシニア・トラベラーの旅。あの日から、いつか来る日まで、かつ、めぐりて、かつ、とどまる旅をします。

サンマメス

ビルバオの地味なRENFE近郊電車

ビルバオの地味なRENFE近郊電車   2022年11月記

ビルバオにも国鉄であるレンフェ(RENFE、正確には列車の運行を行っているレンフェ・オペラドーラ)の近郊路線があります。セルカニアス:Cercanias、の名称で3系統走っていて、いずれも、アバンド駅、正確にはアバンド・インダレシオ・プリエト駅が起点です。

202209RENFE近郊電車と車内 (1)
(アバンド駅で発車待ちの近郊電車(セルカニアス)。左が新型、右が旧型)

セルカニアスは目立たない存在です。アバンド駅周辺を除くとあんまり人口密集地帯を走っていないこと、運転間隔が15分から30分おきでメトロに比べて本数が少ないことなどが理由でしょう。それでも、地域密着型の近郊電車として、それなりの利用者に支えられて淡々と走っています。共通ICカードのバリク・カードで利用できるのは当然として、電車も新型車が投入され、バリアフリーやワンマン化も進み、21世紀のビルバオの雰囲気に合ったサービスを提供しています。

電車の内部だって、次の写真のように、とってもきれいです。3両固定編成の新型車両は床面を低くして、プラットホームからバリアフリーに近い段差で乗り降りできるようになっていました。車内外に落書きもなく、ゴミも落ちていませんし、蛍光灯が壊れていたり、当たり前のように5分くらい遅れて走ることもありません。RENFE当局の気概を感じました。

写真ベースで見ても、にニッポンの通勤電車と、二つほど大きな違いがあるのですが、すぐ気づきますでしょうか?

ひとつは、向かい合わせの座席が原則であること、二つ目は、車内広告がないことです。

202209RENFE近郊電車と車内 (2)
(広軌鉄道の車内はさすがにゆったり。新型は左の旧型車両より床面が低い)

実際に乗車すると3つ目の違いに気づきます。車内放送がほとんどありません。駅名を1回、控えめな自動音声で案内するだけです。カラオケでマイクを握ったら話さないオヤジやオネエサンのように、のべつくまなく、あれこれ解説風の肉声放送をすることは皆無です。
口から生まれてきたんじゃないかと思うくらいおしゃべりで、他人が聞いてようが聞いていまいが、お構いなく早口で話をするスペイン人、イタリアン人からほど遠い静けさなのです。

202209RENFE近郊線時刻表
(近郊電車時刻表と案内板。おおむね15分から30分ごとに運転)

アバンド駅を発車した電車は、何と複々線区間を走って、すぐ次の駅に入ります。
駅の南側の道路橋からアバンド方向を眺めると、かつて長距離特急や夜行急行が発着していた堂々たる駅舎に似合わない3両編成の電車が、こじんまりと出入りする光景が見えます。

202209アバンド駅を南寄り俯瞰拡大版
(アバンド駅を発車する近郊電車)

C1とC2系統の電車は、ビルバオの都市再開発計画に従ってルート変更となった地下新線をゆっくりと進み、7分ほどで、バス・ターミナル近接のサン・マメス駅に入ります。

202209RENFE近郊電車と車内 (4)
202209RENFE近郊線サンマメス電車
(ピッカピカのサン・マメス駅に発着する近郊電車2葉)

駅は平日の通勤時でも、電車が着くたびに人がざわつく程度。通勤ラッシュと言うにはほど遠い混雑です。ニッポン人から見ると、うらやましい通勤電車事情です。赤字経営であるのは仕方ないとして、当初の経営予測と比べて利用者数や収入は多いのでしょうか、少ないのでしょうか。

セルカニアスも、どの駅も清潔に維持されています。自動券売機と自動改札機だけがある無人駅が大半で、トイレその他の駅設備もなく、建造物に係るコストは日本よりずっと低額のようです。ちなみに、清掃や点検のオジサン、オバサンを見掛けますので、駅その他のメンテナンス体制はしっかりしているようです。

202209バラカルド市内RENFE近距離電車 (2)
(ネルビオン川に沿って走るセルカニアスの電車)

ビルバオでは国鉄であるレンフェ(RENFE)の存在感は大きくありません。近郊電車を除くと特急電車が1日5往復のみ走っています。中距離の普通列車や夜行列車は全滅していて皆無です。いわゆるスペイン版新幹線のAVEが開通するまでは、ビルバオに鉄道で旅行するなんて日は来ないようです。

今回も考えさせられることの多いセルカニアスの電車体験でした。








ビルバオの歓び  その2 パノラマビュー

ビルバオの歓び 

その2 移りゆくパノラマビュー

高台に登って、ビルバオのパノラマをしみじみと見つめます。

都心の北側に横たわっているアルチャンダの丘:Artxanda  の公園に来ました。アクセスは、ふもとからケーブルカー:Funicular  、バス、クルマ、急坂歩き、といろいろ選べます。

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 ( ケーブルカーのアルチャンダ山頂駅 )

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 ( アルチャンダ公園内の芝生 )

アルチャンダ公園内には、バリクカードのデザインに採用された指紋の彫刻があります。大きな緑地で、陽ざしのある週末の昼下がりはピクニック客でにぎわいます。

公園の展望台から眺めたビルバオ都心部です。あいにく、うす曇りで、すこし印象が暗いかも知れません。30余年の移り変わりを、少しづつ思い出しながら、街のランドマークを見つめました。

ビルバオは、すぐ近くまで山が迫っている都市であることが分かります。

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( アバンド地区全景。 右下がグッゲンハイム美術館とサルベコ・スビア)

真ん中の黒いペアのビルが、”イソザキ・タワー”。左に視線を移動し、白いビルのやや左奥、赤っぽい高層建築が、BBVAという銀行の本店タワーです。1980年代から変わらぬ姿を見せているランドマークのひとつで、とても懐かしいです。BBVAタワーの左下に、RENFEのアバンド駅がありますが、見えるか見えない状態です。
高層ビルの間に見える赤い屋根のビルは、おおむね7-8階建てで、高さがほぼそろっています。大半が、オフィスビルや高級マンションです。

視線を振ると、右下にグッゲンハイム美術館が見えます。

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( ビルバオ都心の西寄り )

灰色の丸い高層建築は、イベルドローラ・タワー。2017年9月現在、ビルバオで一番高いビルです。
「こんな超高層ビルもできたんだあ」と、驚いてしまいました。
その右後ろ、赤い屋根と黒い壁面の大きな建物が、” ウスカルドゥナ:Euskalduna ”です。州立の会議場兼大ホールです。白く平たい建物は、サン・マメス・スタディアム。名門サッカーチーム、アスレティック・ビルバオ:Athletic Bilbao  の本拠地です。

中央の流れはネルビオン川:Nervion。ビルバオ川ということもあります。

198609ビルバオ市街遠望再開発前
( 港湾設備と工場が林立していた1986年のネルビオン川風景 )

1980年代まで、川沿いに連なっていた港湾設備、造船所、鉄工所などは、ほとんど姿を消しました。グッゲンハイム美術館や緑地、中層マンションになって、21世紀のビルバオを代表する街並みとなりました。
往時をしのぶために、クレーンや埠頭の一部が保存されていて、公園化されています。
感慨もひとしおです。

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 ( モニュメントのクレーン。後方はサン・マメス・スタディアム)

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( 埠頭跡地の遊歩道。後方が下流。奥の右岸の更地が再開発予定地)


いま、市当局が取り掛かり始めたプロジェクトは、川の右岸にある工場跡地の再開発です。本流から分かれた運河を生かして中洲をつくり、そこにユニークなデザインのマンションを作るのだそうです。

基本プランは、イラク出身のイギリス人建築家、故ザハ・ハディッド氏のデザイン。2020年東京オリンピックの国立競技場設計コンペの初代当選者です。大屋根が宙返りしているようなユニークなデザインを覚えている方も多いと思います。工事が難しく、見積額が倍々ゲームのように膨れ上がって政治問題となり、結局、流れてしまったことは記憶に新しいです。

ビルバオ市も、故ザハ・ハディッド氏のデザインが高くつくことは承知のうえで、それなりの皮算用をして再開発を進めるようです。
ユニークだけれども、心地良さそうな街並みができる予感がします。それが、話題を呼び、さらに街に活気が出る様子を、私も、是非、見たいです。



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