今日もさりげなく走るFEVEバルマセダ線 2022年11月記
2022年9月、実に30余年ぶりにFEVE:フェーベ・バルマセダ線に乗りました。この路線は、ビルバオのコンコルディア駅とバルマセダ町のラ・カルサーダ駅の間、約25Kmを結ぶ近郊路線です。
1世代分、時が経ったはずなのに、この狭軌鉄道は、電化された以外にあまり変わることなく公共交通機関としての使命を果たし続けていると感じました。同じ期間に日本の中都市近郊鉄道が、いつの間にか衰退していたのとは対照的です。スペインの交通政策がまともなのか、それとも日本の交通政策が失敗の積み重ねだったのか、考えてしまいます。
(C4系統、バルマセダ線の始発駅コンコルディア駅)
FEVEは、スペイン語の”Ferrocarriles de Vía Estrecha”= 狭い軌間の鉄道路線、つまり「狭軌鉄道」の意味です。現在では、スペイン国鉄のレンフェ:RENFEの狭軌鉄道部門のブランド名になっています。鉄道マニア以外には線路の幅など関係ないのですが、昔から「フェーベ」の名前で親しまれています。バルマセダ線はビルバオ近郊路線のC4系統に指定されています。当然、バリクカード利用で乗れます。
(コンコルディア駅に停車中のバルマセダ行普通電車)
(バルマセダ線電車の車内風景)
(サンタンデル行ディーゼルカーと保存展示の蒸気機関車)
電車の運行間隔は、通勤時間帯は30-40分ごと、その他の時間帯は、おおむね1時間ごと。電車は5時半すぎから23時すぎまで走っています。時刻表は以下のサイトなどで見られます。日本式に、見開きに全駅全列車が書いてあるような時刻表は、なかなか見つかりません。生活習慣が違うので仕方ないのです。
FEVE Ferrocarriles de vía estrecha / Horarios y precios / Consulta de horarios (renfe.com)
列車の本数も所要時間も30年前とほとんど変わっていないことも驚きです。時流の変化に対応して投資を行って利用客をつなぎとめている感じです。30年の間に高速道路ができたり、一般道の整備が進んだことを勘案すれば、この路線は大健闘していると言えましょう。
(ルート変更で新設のバスルト・大学病院前駅)
ビルバオの再開発計画に伴うルート変更により新設した駅のひとつ、バスルト・大学病院前駅:Basurto-Ospitalea は写真のようにガラス張り半地下構造です。道路の反対側が大学病院の正門で、周囲は中層マンション街ですがヒトの動きはほとんどありません。
(バスルト・大学病院前駅構内と上りコンコルディア行電車)
バスルト・オスピタレア(大学病院前)駅は市内バス停も駅出入口の眼前にあるので、電車が着くと10人、20人単位で下車客があります。しかし、その他の時間帯は、がらーんとした状態です。自動改札口が設置してあるので、利用客以外の怪しい人物がホームをうろちょろすることはありません。
上り下り合わせて1時間に2-4本の電車が着く駅でも応分の設備投資を行い、公共交通のサービスレベルを維持する行政の姿勢は積極的に評価したい点です。
ビルバオ中心街を抜けた電車は2駅ばかりネルビオン川を見下ろす斜面の中腹を走ります。車窓からは整ったビルバオ市街が遠望できるので、是非、眺めてください。数年後には線路際にも、かの故ザハ・ハディード氏が基本コンセプトを作った中洲の高層ビル街ができてくるはずです。
(ネルビオン川沿いの車窓)
電車は、15分くらいすると谷間に分け入り、川沿いにくねくねと曲がる線路に車輪の音を軋ませながらバルマセダを目指します。小さな集落に止まるたびに、2人、3人と乗客が降ります。途中のアラングレン:Aranguren という駅でサンタンデルへ向かう線路と分かれると、あと2駅でバルマセダ。次第に高さを増した丘陵の緑の間を縫うように10分ばかり走ったところが、舟状の小盆地に開けたバルマセダ:Balmaseda です。電車は街中で、昔からあるバルマセダ駅と、電化に際して延長した1kmほど先の終点ラ・カルサーダ駅に停車します。両駅の中間に車両基地があり、待機中の電車や豪華観光列車牽引用のディーゼル機関車が止まっています。
(バルマセダ駅構内と駅に着いた電車)
(終点のラ・カルサーダ駅)
(観光列車用のディーゼル機関車)
コロナ禍で利用者も貨物輸送も減り、FEVEの収支も悪化したようです。細かいことは分かりませんが、最近、貨物列車を廃止したようです。バルマセダ駅西方の車両基地や、途中のアラングレン駅には錆の浮き始めたディーゼル機関車数両や貨車がいっぱい止まっていました。
これからバルマセダ線やビルバオ地区のFEVEはどうなるのでしょう。当たり前のようなクルマ社会のなかで、コロナという予期せぬ負の要因に見舞われたローカル線の未来が気になります。
了
2022年9月、実に30余年ぶりにFEVE:フェーベ・バルマセダ線に乗りました。この路線は、ビルバオのコンコルディア駅とバルマセダ町のラ・カルサーダ駅の間、約25Kmを結ぶ近郊路線です。
1世代分、時が経ったはずなのに、この狭軌鉄道は、電化された以外にあまり変わることなく公共交通機関としての使命を果たし続けていると感じました。同じ期間に日本の中都市近郊鉄道が、いつの間にか衰退していたのとは対照的です。スペインの交通政策がまともなのか、それとも日本の交通政策が失敗の積み重ねだったのか、考えてしまいます。
(C4系統、バルマセダ線の始発駅コンコルディア駅)
FEVEは、スペイン語の”Ferrocarriles de Vía Estrecha”= 狭い軌間の鉄道路線、つまり「狭軌鉄道」の意味です。現在では、スペイン国鉄のレンフェ:RENFEの狭軌鉄道部門のブランド名になっています。鉄道マニア以外には線路の幅など関係ないのですが、昔から「フェーベ」の名前で親しまれています。バルマセダ線はビルバオ近郊路線のC4系統に指定されています。当然、バリクカード利用で乗れます。
(コンコルディア駅に停車中のバルマセダ行普通電車)
(バルマセダ線電車の車内風景)
(サンタンデル行ディーゼルカーと保存展示の蒸気機関車)
電車の運行間隔は、通勤時間帯は30-40分ごと、その他の時間帯は、おおむね1時間ごと。電車は5時半すぎから23時すぎまで走っています。時刻表は以下のサイトなどで見られます。日本式に、見開きに全駅全列車が書いてあるような時刻表は、なかなか見つかりません。生活習慣が違うので仕方ないのです。
FEVE Ferrocarriles de vía estrecha / Horarios y precios / Consulta de horarios (renfe.com)
列車の本数も所要時間も30年前とほとんど変わっていないことも驚きです。時流の変化に対応して投資を行って利用客をつなぎとめている感じです。30年の間に高速道路ができたり、一般道の整備が進んだことを勘案すれば、この路線は大健闘していると言えましょう。
(ルート変更で新設のバスルト・大学病院前駅)
ビルバオの再開発計画に伴うルート変更により新設した駅のひとつ、バスルト・大学病院前駅:Basurto-Ospitalea は写真のようにガラス張り半地下構造です。道路の反対側が大学病院の正門で、周囲は中層マンション街ですがヒトの動きはほとんどありません。
(バスルト・大学病院前駅構内と上りコンコルディア行電車)
バスルト・オスピタレア(大学病院前)駅は市内バス停も駅出入口の眼前にあるので、電車が着くと10人、20人単位で下車客があります。しかし、その他の時間帯は、がらーんとした状態です。自動改札口が設置してあるので、利用客以外の怪しい人物がホームをうろちょろすることはありません。
上り下り合わせて1時間に2-4本の電車が着く駅でも応分の設備投資を行い、公共交通のサービスレベルを維持する行政の姿勢は積極的に評価したい点です。
ビルバオ中心街を抜けた電車は2駅ばかりネルビオン川を見下ろす斜面の中腹を走ります。車窓からは整ったビルバオ市街が遠望できるので、是非、眺めてください。数年後には線路際にも、かの故ザハ・ハディード氏が基本コンセプトを作った中洲の高層ビル街ができてくるはずです。
(ネルビオン川沿いの車窓)
電車は、15分くらいすると谷間に分け入り、川沿いにくねくねと曲がる線路に車輪の音を軋ませながらバルマセダを目指します。小さな集落に止まるたびに、2人、3人と乗客が降ります。途中のアラングレン:Aranguren という駅でサンタンデルへ向かう線路と分かれると、あと2駅でバルマセダ。次第に高さを増した丘陵の緑の間を縫うように10分ばかり走ったところが、舟状の小盆地に開けたバルマセダ:Balmaseda です。電車は街中で、昔からあるバルマセダ駅と、電化に際して延長した1kmほど先の終点ラ・カルサーダ駅に停車します。両駅の中間に車両基地があり、待機中の電車や豪華観光列車牽引用のディーゼル機関車が止まっています。
(バルマセダ駅構内と駅に着いた電車)
(終点のラ・カルサーダ駅)
(観光列車用のディーゼル機関車)
コロナ禍で利用者も貨物輸送も減り、FEVEの収支も悪化したようです。細かいことは分かりませんが、最近、貨物列車を廃止したようです。バルマセダ駅西方の車両基地や、途中のアラングレン駅には錆の浮き始めたディーゼル機関車数両や貨車がいっぱい止まっていました。
これからバルマセダ線やビルバオ地区のFEVEはどうなるのでしょう。当たり前のようなクルマ社会のなかで、コロナという予期せぬ負の要因に見舞われたローカル線の未来が気になります。
了