アンコールワットの日の出イリュージョン   2019年10月訪問

アンコールワットの日の出は、一度は見ておいた方が絶対によい風景です。
1101Aワット日の出直前 (3)
( アンコールワットの日の出と、逆さアンコールワット )

ガイドブックや体験者が絶賛するとおり、この世でトップクラスのイリュージョンです。午前4時に早起きし、トゥクトゥクやツアーの追加料金を払って見る価値は、十分すぎるほどあると思いました。観光客もいっぱいいるのでショーのような雰囲気でした。マナーを守って皆んなで幻想的なひとときを楽しみましょう。

ただし、晴れていて太陽がきちんと見えることが最低条件です。前日の天気予報は絶対チェックです。

雨季にアンコールワットの日の出を見ようという方、ツアーなどで日の出の見物日が決め打ちされた方は、運悪く雨天か曇天に当たってしまうかも知れません。けれども、ドンマイです。どうか、気を取り直して、いつの日かアンコールワットの日の出を見るためだけに、この地へ戻って来てください。しばらくは、アンコールワットは崩落しないと思います。

1100Aワット日の出前の遠景シルエット
( 10月末の午前5時20分に朝焼けのアンコールワット遠望 )

私は、前日に予約したトゥクトゥクに乗って5時15分ごろにアンコールワットの入口に着きました。東の空が、うっすらと明るくなってきています。枕草子「春はあけぼの、やうやう白くなりゆく・・・・・・・」そのままの展開です。

1101Aワット日の出朝焼け濃く (1)
( アンコールワットの影を背後にして見物客のスマホの明かりが点滅 )
1101Aワット日の出朝焼け濃く (2)
( アンコールワットの夜明けイリュージョン )

大勢の観光客について歩き、池のほとりに陣取ります。その日は、正面向かって左側の池が工事中であったので、右側の池のほとりに行きました。体験談などを読むと、左側の池からの眺めがベストのようです。

池の周りを歩く見物人のスマホのライトが点滅している様子は、ホタルが飛んでいるような雰囲気でした。空気は、10月末といえども、やや涼しい程度。気温は、おそらく25℃くらいはあったと思います。半袖のうえに1枚羽織るか羽織らない程度で、生暖かい感じでした。

日の出が近づき、明るい紫色に染まってきた空を背景に、アンコールワットの5本の塔の影が、くっきりと浮かびあがる様子は、言葉で言い尽くせないほど荘厳でした。大勢の観光客も、ほとんど無言で、刻一刻と明るさを増す東の空に視線を集中して、日の出ショーを見守っていました。パシャリ、パシャパシャとカメラのシャッター音が響くばかりの時間が過ぎて行きました。

1101Aワット日の出直前 (3)
( 逆さアンコールワットもばっちりの快晴無風の日の出 )

池の水面には、見事なまでに「逆さアンコールワット」がゆらぐことなく映っていました。当日は無風で、池のスイレンや雑草も、うまく端の方へ寄っていたので、水面をかき乱すものがなかったことは幸運でした。

すっかり周囲が明るくなって周囲に目をやると、大勢の見物人がいたことに改めて驚きました。当日は、欧米系の個人客が多く、ツアーの人は少ない感じでした。日取りや場所によっては、声高に話すツアー客に、せっかくのムードをぶち壊されてしまった方もいるかも知れません。そういう人達には、みんなで「しっーーー」とやりましょう。
1101Aワット日の出見物人 (1)
( 紫色の空の下で、写真をときどき取りながら日の出を待つ )

ホントに、世界中から、この数十分のイリュージョンを実体験するために多くの人が集まっています。私も、思い立ったが吉日で当地に来て、アンコールワットの日の出体験ができ、大変満足しています。
1102Aワット日の出後の池
( 日の出見物に集まった世界中の人々 )

太陽が地平線に顔を出すころになると、空は紫色からオレンジ色に変わります。建物の背後にお日様は出ているので、アンコールワットは濃い灰色のシルエットになって浮かんでいました。神秘的という雰囲気から、ロマンチックな感じに変わってきています。

1102Aワット朝日と奥に影ある (2)
( 淡いオレンジ色の空に影を差すアンコールワットの塔5本 )

建物の間から太陽が昇ると、周囲は一気に早朝ムードに変身しました。

アンコールワットは、正確に東西の軸に沿って建っているので、春分と秋分の日には、主塔の真上に太陽が昇り、見事な日の出風景となるようです。そういう日には、朝5時の開門と同時に、走って行って好位置をキープして日の出を待つのでしょう。究極の日の出体験をされた方の話を読んでみたいものです。
1103Aワット朝日にシルエット 近景


1104Aワット朝もやの人混み
( 朝日がアンコールワットの回廊の上に顔を出した頃 )
1104Aワット日の出直後の鏡池
( 朝日が昇り切った頃の正面右側の池と見物人 )

朝ぼらけのアンコールワットの池の周りは、やや緩慢なムードが漂っています。人々のざわめきも増しました。みんな、早起きと、立ちんぼで少々疲れてきたのです。私も、いったん、ホテルに引き上げることにして、アンコールワットを幾度となく振返りながら、ゆっくりと出口の方へ向かいました。

1104Aワット陽光に輝く外周
1105Aワット朝焼けの外周 (1)
( 朝日を真正面に浴びてオレンジ色に輝く西の塔門 )

朝は、西の塔門が順光です。昼間には黒ずんだ色の門が、きれいなオレンジ色に染まっていました。少しだけ冷気を含む空気の中で見る西の塔門は、滅びゆく前の最後の輝きを放っているようでした。
1105Aワット早朝仮橋付近
( 朝日に影を作る西の塔門と仮設橋 )

午前6時45分ごろのアンコールワット出入口付近です。森の上まで高度を上げた10月の太陽は強く輝きはじめていました。薄くなったオレンジ色の空の彼方に影絵のように浮かぶアンコールワットの姿を最後に目に焼き付けました。


2020年1月記                   了