やまぶきシニアトラベラー

気まぐれシニア・トラベラーの旅。あの日から、いつか来る日まで、かつ、めぐりて、かつ、とどまる旅をします。

ベルサイユ・トラベラー

夕暮れのベルサイユ庭園こそ美しき

夕暮れのベルサイユ庭園こそ、美しき      2019年4月訪問

太陽が西に傾くころ、グラン・カナル:Grand Canal (大運河)にも静寂が訪れ始めます。

水面は、少し茜色に染まり、周りの木々は次第に黒ずんでいきます。私たち観光客も、出口へ急がなければなりません。
Versailles239B暮れなずむ大運河198609
( 暮れなずむベルサイユ庭園のグラン・カナル )

過去の栄光を照らす西日は、いつでもどこでも、はかない美しさを秘めています。
Versailles210A夕陽に映える正面の噴水198609
( 秋の陽はつるべ落としにベルサイユ )

ちょっと時間を戻し、陽光がやや傾き始めたベルサイユ宮殿の南ウィングです。建物正面が照らされてやさしく輝いていました。端正な美しさに、声も出ません。
Versailles209A夕暮れの宮殿
( 昼下がりの陽光に映えるベルサイユ宮殿の南ウィング )

真っ赤な太陽が、ベルサイユ庭園の森の縁に降りてくると、宮殿は色濃い茜色になってきます。
Versailles210B夕陽 北ウイング198609
( 茜色に染まるベルサイユ宮殿の南ウィング )

ガラス窓に反射する秋の落日が、無常観を誘います。「ものの、あはれ」の世界です。
Versailles210C夕陽輝く南翼と噴水198609
( 夕陽に輝くベルサイユ宮殿 )

けれども春から初夏にかけては、陽ざしも力強く、どこか明るい気分の夕方風景です。
私たちも、他の観光客の皆さんもベルサイユ見学を目いっぱい楽しんで出口を目指します。なんか軽やかな雰囲気でした。
Versailles夕暮れ迫る正門帰る人
( 夕暮れ迫る初夏のベルサイユを後にして )

聞きしに勝る豪華なベルサイユの宮殿と美しい庭園でした。

さようなら。

2019年10月記                       了

ピンク色のグラントリアノンは熟女のように

ピンク色のグラントリアノンは熟女のように   2019年4月訪問

歩け歩けで、やっと見えてきました「グラントリアノン:Grand Trianon」。美しい薄ピンク色の大理石建築が魅力です。
VersaillesGrandTrianon301遠望
( グラントリアノン正面を遠くに見る )

プチトリアノンと隣り合わせの離宮ですが、双方の間は徒歩5分くらいかかります。
「長屋のお隣さんじゃないんだから、当ったり前でしょうが!」

二つのトリアノンを一言で形容すると、「熟女の魅力グラントリアノン、かわいいプチトリアノン」、と言った感じです。
「こう表現してしまうと、今の日本人には『プチトリアノン』が向いているのでしょうかねえ」

VersaillesGrandTrianon302ピンクの正面
VersaillesGrandTrianon303金色の門
( グラントリアノン正面2景 )

VersaillesGrandTrianon321内側から正門とDragon噴水遠望
Gトリアノン 夕陽に金の門飾りが反射198609
( グラントリアノン正門の金色の飾り )

VersaillesGrandTrianon303E中庭
( ピンク色の大理石がトレードマークのグラントリアノン」

VersaillesGrandTrianon303D入場通路
( 入館口付近の歴史解説板 )

17世紀末に完成したグラントリアノンの歴史を簡単に言うと、

ルイ14世の公式寵姫で極秘の正妻と言われたマントノン夫人の住居 → しばらく王族等の住まい → 皇帝ナポレオンと皇后の住まい → 国王ルイ・フィリップの住まい → フランス政府の国賓接待館  → ドゴール大統領の執務室 → カルロス・ゴーン氏の結婚披露宴会場 → 現在に至る

でしょう。

いろいろな国王、皇帝が住み、いまでも国賓の接待や、大金持ちのパーティーなどに使われている現役の宮殿なので、内装もバラエティに富んでいます。特に、観光用にインテリアを修復した南ウィングは、部屋ごとに縁の深い方々のイメージを出しています。青系統あり、赤系統ありです。

スマホや本のガイドを見ながら、往時の皇帝や大統領たちの息遣いを感じたいです。
VersaillesGrandTrianon304鏡のサロン
( 鏡のサロン )
VersaillesGrandTrianon305Aナポレオン皇后の寝室全景
VersaillesGrandTrianon305Bナポレオンの皇后の寝室
( ナポレオンの皇后マリー・ルイーズの寝室 )

VersaillesGrandTrianon306a礼拝の間
( 礼拝の間 )
VersaillesGrandTrianon306b諸侯の間
( 諸侯の間 )

南北のウィングの間にある回廊は、グラントリアノンで一番美しい空間です。抑制の効いたピンク色の大理石の列柱と、緑あふれる庭園を目にして、世俗のつらい日々をいっとき忘れ、王朝ムードにひたりました。
VersaillesGrandTrianon307中央くびれ
( 美しいピンクの大理石の回廊 )

それが高じて、「自分もグラントリアノンの主になりたい」と、カルロス・ゴーン氏は思ったのかも知れません。ゴーン夫妻は、結婚披露宴を、北ウィングの大広間「コテルの回廊:Galerie de Cotelle 」で行ないました。絶頂期のお姿は、utube などでご覧になれます。

要は、あなたでも込み込みで2000-5000万円くらいかければ、グラントリアノンで豪華絢爛なパーティができるのです。

PRのためか、皆さん「グラントリアノン」とは言わずに、「『ベルサイユ宮殿』でパーティをした」、と表現するようです。
VersaillesGrandTrianon310北のコテル回廊198403
( コテルの大広間(回廊)。ゴーン氏の結婚披露宴会場 )

「コテルの間」がある北ウィングも、みやびで、きらびやかな雰囲気の部屋が続いています。

2019年に訪問したときは、なぜか北ウィングは閉鎖。貸切行事があるのか、職員不足で開館できないのか定かではありませんでした。ですから、ピンク色の回廊を見たあとは、庭園を散歩し、お土産屋さんに寄っておしまい。各部屋の昔の写真もなく、記憶を呼び起こすしかありません。

こうしてトリアノンに来てみると、ベルサイユ宮殿本館は、国家の権威を表し、離宮は、王や王妃の心の中を表していたのかも知れません。月並みな表現に、少し自己嫌悪に陥りました。
VersaillesGrandTrianon309B水辺のいやし
( 庭園よりコテルの間のウィングを見る )
VersaillesGrandTrianon308北ウィング
VersaillesGrandTrianon311夕陽の庭園198609
( 昼下がりと、夕陽に映える北ウィング )

ピンク色の離宮の前に広がるフランス式庭園は、とても安らぐ造りです。また、夕暮れに映える建物もきれいです。大勢の見物客が、グラントリアノンのさまざまな風景を描写しています。どれもこれも素敵な体験談です。
VersaillesGrandTrianon322A庭園を眺める
VersaillesGrandTrianon322B庭園の緑
( 緑が目にしみるグラントリアノンのフランス式庭園 )
VersaillesGrandTrianon323Bグランカナルのはじ
VersaillesGrandTrianon323Aグランカナル北端
( グラントリアノンの庭から見た昼下がりのグランカナル )

回廊の階段に腰掛け、しばらく緑の木々や下段を見つめていると、早春の昼下がりの微風が頬を横切っていきました。みんな、静かにピンク色の柱に寄りかかったり、市松模様の床に腰を下ろしてひと休み。

さあ、よっこらしょ、と腰をあげましょう。

2019年10月記                                   了









プチトリアノンの愛の殿堂と展望台と洞窟にて

プチトリアノンの愛の殿堂と展望台と洞窟にて     2019年4月訪問


離宮の建物を出て、広大なイギリス式庭園を歩き回ります。中途半端な広さではありません。

水の流れに沿って小径を進み、「愛の殿堂:Temple d'Amour = Temple of Love」という、丸い東屋を目指しました。離宮の建物から目に入るので、「次に目指すはここ」という気持ちになるのです。
VersaillesPetit Trianon422振り返り本館
( 「愛の殿堂」へ向かう小径からプチトリアノン本館を望む )

VersaillesPetit Trianon421愛の殿堂
VersaillesPetit Trianon421bTempleDamour
( 「愛の殿堂」に近づく )

愛の殿堂は、人工の小川の中洲に建っています。周囲からも丸見えです。もちろん、誰もいなければ、逢引きにはもってこいの優雅なムードが漂っています。

VersaillesPetit Trianon421cPontTempleDamour
( 小川の橋を渡って「愛の殿堂」へ入る )

そばに来ると、意外と大きな造りです。柱から柱へと、他愛もない、鬼ごっこができるくらいです。

VersaillesPetit Trianon423愛の殿堂内部キューピッド
( ギリシャ神殿風の「愛の殿堂」の内部 )

吹きさらしなので、寒い季節や雨の日は、二人だけで逢っても興ざめしそうです。

「愛の殿堂」の雰囲気を、みんなで確かめたら、再び緑の野原を彷徨します。遠目に、庭園の目玉「王妃の館」が見えています。ベルばら派の観光客は、もう興奮しっぱなし。足の疲れなど吹っ飛んだ様子で、小径をせかせかと進みました。
VersaillesPetit Trianon431遠くにアモー見えて
( 遠目に「王妃の館」を見て原っぱを歩く )

「ちょっと待った」、で人の気配のする方角に曲がり、早春の花を愛でながら奥を覗くと、庭園内の第3のポイントがありました。
VersaillesPetit Trianon428 (61)
( 中国風イギリス式庭園。Jardin Anglais-Chinoise )

大きめの池に沿って造られた人工の丘に建つ「ベルベデール:Le Belve*de*re 」こと、「展望台」と、人工の岩山の間に逢引きの窪みがある、「グロット:Grotte (洞窟)」です。 ( * e の上にアクセント記号あり)
VersaillesPetit Trianonベルベデーレと岩山密会場
( ベルベデール(右)と、洞窟のある岩山(左))

VersaillesPetit Trianon密会の洞窟
( 岩山近景 )

行きそびれましたが、もうひとつの岩の上に、通称「恋人たちの洞窟」と呼ばれる穴倉状の窪みがあるようです。
”プチトリアノン、急いては事を仕損じる” と、またまた、やってしまいました。

VersaillesPetit Trianon445ベルベデーレ内部見透かす
( ベルベデールの東屋の内部。入館不可 )

夏の夕暮れ、恋人と手をつないで、この東屋に入り、長いながあいキスのあと、二人で踊りましょう。月明かりに、ほのかに照らされた恋人の姿は、この世のものとは思えないくらい典雅でしょう。ずうっと、こんな時間が続きますように。私の足は輪を描き、腰は彼の腕の中に沈みます。

「コンコンコン・・・・」
「お客さま、閉門の時間ですよ」

「あっ、『王妃の劇場』を見に行くの忘れた」
「があーん。また、今度行くしかありませんね」

うっかりの多かったプチトリアノン観光でした。


2019年9月記                        了


プチトリアノンのアモー。マリー・アントワネットの田舎ごっこ

プチトリアノンのアモー。マリー・アントワネットの田舎ごっこ   2019年4月訪問


最近のマリー・アントワネットブームにより、注目度も高くなったプチトリアノン。

アモー:Hameau の中心となる建物、王妃の家(館):La Maison de la Reine は、離宮の本館以上に見落とせないポイントです。

他の見物客が、ぶらぶらと進む方角に付いて行くと、目線の先、木々の間越しに、大きな池と、ひなびた風情の数軒の建物が見えてきます。それが、アモーです。意味は、「村の風景」です。ガイドブックなどでは「王妃の村里」と訳してあります。
VersaillesPetit Trianon428 (38)
( アモーの中心、王妃の家の全景 )

アモーの英訳は、ハムレット:Hamlet。目からウロコです。

シェークスピアの有名な悲劇「ハムレット」は、主人公の名前だと思っていましたが、どうやらニックネームのようです。無理に和訳すると「田舎王子の悲劇」って感じかも知れません。少し興ざめです。シェークスピアご本人からすれば、「あか抜けない純情一筋の王子の切ない、そして、少しダサイ悲劇」、というニュアンスを伝えたかったのかも知れません。

そういうことは、あまり深く考えないで、アモーの中にずんずんと歩いて行きましょう。ベルサイユは、広いので、いちいち哲学的になっていたら、すぐに閉館時間になってしまいます。

アモーの中心である「王妃の家」に着きました。
VersaillesPetit Trianon433アモー王妃の家近景
( 「王妃の家」の近景 )
VersaillesPetit Trianon434アモー王妃の家と隣家
( 「王妃の家」の端にある、螺旋(らせん)階段 )

「何これ、ひなびた田舎家のどこが見どころ?」
「わああ、マリー・アントワネットの、お気に入りの館に、とうとう着いたあ!」

皆さん、ひとりひとりの思いが心をよぎることでしょう。
私は、「これが、うわさに聞いたアモーの『王妃の家』かあ。お気楽な王妃の遺物を見られて感慨深けだなあ」
と思いました。

内部は、外観からは想像もつかないような優雅で凝った造りのようです。

http://en.chateauversailles.fr/long-read/queens-house
ベルサイユ宮殿公式サイトでは、王妃の家の内部を画像つきで解説しています。

この建物は、いわゆる「自由見学不可の一般公開エリア」です。2018年5月から、「王妃の家」の内部見学を含む宮殿主催のガイドツアーもできました。催行日時は、公式サイトのフランス語の各種キップ、予約のページで確認できます。今のところ、英語や日本語の一般向けガイドツアーはありません。

2019年9月現在、ガイドツアーの追加料金は1人10ユーロです。ベルサイユのパスポート券や、トリアノンの単独入場券が別途必要です。

今回は、内部見学はパス。次回は、是非、ガイドツアーに参加したいのですが、もう1度、ベルサイユに来られるでしょうか。シニアトラベラーなので、心配も常人以上です。

「王妃の家」や、その周囲の田舎家をざっと見てみました。

まず、「王妃の家」の、らせん階段の裏側です。遠目に見えるのは、水車小屋風の建物です。
VersaillesPetit Trianon435アモーらせん階段裏
VersaillesPetit Trianon王妃の家の裏から
( 「王妃の家」の裏手 )

「王妃の家」の池と反対側の裏手は、いわゆる台所見合いの家。「配膳の家」のような呼称です。
VersaillesPetit Trianon428 (42)
( 食事を作る建物と、「王妃の館」の渡り廊下の裏 )

「王妃の家」と並んで、池沿いに目だっているのが、「マールボロの塔」という釣殿です。
VersaillesPetit Trianon428 (48)
( 「王妃の家」付近から見た「マールボロの塔」 )
VersaillesPetit Trianon428 (50)
( 「マールボロの塔」付近から見た「王妃の家」 )
VersaillesPetit Trianon436池をはさんでアモー
( 池の向こうに「王妃の家」、「見張り小屋」、「水車小屋」 )
VersaillesPetit Trianon428 (57)
( 「マールボロの塔」も入れて、「王妃の家」一帯を見渡す )

池の水は、透明ではありません。流れがないので、濁り気味ですが、魚やアヒルはいます。紅白のニシキゴイはいません。

池全体を見渡せる位置まで来ると、「王妃の家」を中心に、田舎家が何気なく並んでいるのが分かります。計算された田舎ごっこの究極の絵巻、です。

「いいね」、「なんだこりゃ」、のどちらもありでしょう。もう、歴史の結果は出ているので、観光客としてはアモーの人工の農村風景の美を楽しむのが最適だと感じました。私としては、無常観が漂った光景です。

建築費も、維持管理費も、眼の玉が飛び出るくらいであったことも想像できます。もちろん、マリー・アントワネット擁護派の主張のように、「当時の超巨額な国家債務の金額に比べれば、50-100億円程度など、たかが知れている」のでしょうが、節約可能だった出費であることも事実でしょう。

「でも、いいなあ。こういう暮らし好き」

「マールボロの塔」を過ぎると、田舎風景を管理していたスタッフたちの家が近づいてきます。牧草地あり、家畜あり、ブドウ畑ありのミニ農村です。
VersaillesPetit Trianon438マルボロー塔と黒ヤギ
VersaillesPetit Trianon441ブドウ畑と疑似農家
VersaillesPetit Trianon442疑似農家と家禽たち
( アモーの田舎風景を管理していたスタッフたちの建物 )

池越しに、アモーの主役「王妃の家」の全景を、もう一度、眼に焼き付けて歩みを進めました。
VersaillesPetit Trianon王妃の家アップ
( アモーの「王妃の家」を目に焼き付けて )

快晴の青空、秋の黄葉、雪景色、そして嵐の夕暮れ、など、季節ごとに美しく、そして儚く(はかなく)佇むアモーを想って。

2019年9月記                        了




マリーアントワネットの領域、プチトリアノン離宮

マリーアントワネットの領域、プチトリアノン離宮    2019年4月訪問

ベルサイユの庭園の奥には、2つの離宮があります。グラン・トリアノン:Le Grand Trianon  と、プチ・トリアノン:Le Petit Trianon ( プティ・トリアノン) です。

ベルサイユ見物客の1割にも満たない人しかトリアノンまで行きません。時間に押されるのと、疲れ果ててしまうからです。

けれども、少しでも「ベルばら」に興味があるならば、プチトリアノンだけでも見学することを、是非、おすすめします。アモーと呼ばれる疑似田園風景の中にたたずむメルヘンチックな建物や、「これじゃあ革命になるわ」、という浮世離れした光景が、目の前に飛び込んでくるからです。「オスカル様のお怒り、ごもっともですわねえ」、となるかも知れません。
VersaillesPetit Trianon401森の長い道15分
( トリアノンへ通じる長い道のり風景 )
VersaillesPetit Trianon402aやっと見えてきた 
( やっと見えてきたプチ・トリアノン正面 )

トリアノンは、ベルサイユ宮殿から2kmくらい離れています。大運河前のアポロンの(戦車の)噴水から、少し早足で歩くこと10分ほどでグラン・トリアノンとプチ・トリアノンの分岐点に着きます。両トリアノンまでは、そこから、さらに5分くらいかかります。行く手の彼方に宮殿風の建物が見えてきますが、なかなか近づきません。

歩くのが苦手な方で、多少の出費はいとわないならば、宮殿そばの「水辺の花壇」の北側付近から、SL風のプチトランという電動カートが出ています。2019年4月現在、1日券は大人1人8ユーロです。ルートは一筆書きで、宮殿前を出て、グランカナル脇、グラントリアノン、プチトリアノンを回り、宮殿前に帰ってきます。

やっと、プチトリアノンの離宮前に到着しました。正面が本館で左側の付属棟から入館します。
見どころは、建物内部と、アモーを含む右奥に広がる広大なイギリス式庭園です。
VersaillesPetit Trianon402宮殿正面
( プチトリアノン離宮正面。いわゆるマリー・アントワネットの領域 )
VersaillesPetit Trianon403見学入口
( プチトリアノン通用門は、今は見学者入口 )
VersaillesPetit Trianon404中庭
( 離宮左の中庭。左に進むと礼拝堂 )

プチトリアノンは、通称「マリー・アントワネットの領域(館):Domaine de Marie-Antoinette」と言うように、今ではマリー・アントワネットのイメージ一色です。もともとは、ルイ15世の寵姫ポンパドール夫人のために建てられたということですが、ご本人が完成前に逝去したこともあり、プチトリアノン=マリー・アントワネットという図式です。

分かりやすくていいですね。

そのためか、マリー・アントワネットの人気が上昇するまでは、一般公開エリアながら半ば打ち捨てられていたようです。

そんな歴史を思い出しながら、離宮の建物へ入りました。1階が玄関、台所、衛兵の控室、2階が住居です。
VersaillesPetit Trianon405宮殿1階ホール
( 1階階段室を、まずは奥へ進んでひとまわり )

まず、1階の階段裏の部屋を一回り。少し、あせっていたせいで、本館向かって左の礼拝堂を見学し忘れました。「あっ、しまった」ですが、ベルばらファンながらベルサイユ初体験のマダムは、そんなこと、お構いなしにずんずん先に進みました。
VersaillesPetit Trianon405台所配膳室
( 主に台所の役目をした召使たちのたまり場 )

1階をさらりと一周したあとは、階段を使って2階に上がりました。
VersaillesPetit Trianon406メイン階段で2階
( きらびやかさを抑制気味の優美な階段室 )

金色の装飾も、宮殿本体に比べると落ち着いた感じ。ほんのりうすいベージュ色の壁もエレガントでした。

階段を上がり切って、すぐ右の部屋の壁に、マリー・アントワネットの有名な肖像画が掛けてあります。お気楽マダムそのものの雰囲気が、よく出ている絵です。ご本人も気に入っていたという話です。
VersaillesPetit Trianon408控室
( 階段室右の控えの間と、マリー・アントワネットの有名な肖像画 )

窓の外には、グラントリアノン方面へ通じるフランス式庭園が雨にむせぶっていました。正面の建物は、「フランス館」という名前の東屋です。濡れるのがいやだったので、そこまで歩いていかずにパス。

VersaillesPetit Trianon407窓越しに仏庭園とフランス館方向
( 大広間付近から「フランス館」という東屋を望む )

つづいて大広間。私的なパーティ会場用の部屋とのこと。柔らかい感じのインテリアが目に焼き付きました。
VersaillesPetit Trianon409居間
( 一番大きな部屋は私事パーティ用の広間兼用 )

次は居間、サロンです。マリー・アントワネットが、子供たち、あるいは気の置けない友人たちと過ごした空間です。赤が基調色なので、華やかなイメージです。
VersaillesPetit Trianon410お供の間
( 娯楽室は赤基調で華やか )

その先が、白地にうすい水色を配した小食堂。鏡で窓を隠せば、写真のように外からのぞかれないようになっています。

マリー・アントワネットが、不倫相手のフェルゼン伯爵と食事をしたのもここ、という風説がいっぱいありますが、本当のところはどうなのでしょう。こういうレベルの男女関係の話は、事実と噂が混同しがちです。

ベルばらの世界に浸る限り、そんなことはどうでもよいので、皆さんのイメージのままに感じましょう。
VersaillesPetit Trianon411ゲーム室
( 移動壁で窓を隠せる食事の間 )

いずれにせよ、マリー・アントワネットが恋人を密かに招き入れて「二人だけ」で食事をするなんてあり得ないことは確か。口外無用の誓いをした召使たちは、どう思っていたのでしょうね。

離宮2階の角部屋は、マリー・アントワネットの寝室です。子供たちを連れてきたときは、彼らはどこに寝たのでしょうね。
VersaillesPetit Trianon412西端の寝室
( マリー・アントワネットの寝室 )

当時のベッドは、どこでも寸詰まり。枕をいっぱい背中にあてて、半分、寄っかかるような姿勢で寝ていたので、こういうサイズで十分だったようです。

現代の私たちからすると、あんまり、くつろげない寝姿ですが、当時はそれで安眠できたのでしょう。また、2人で愛を語るときも、そんな姿勢のままだったということなのでしょうか。

いつも言うように、観光は「見物客が見たいように見せる」という側面があるので、真偽のほどは専門書などを理解しないといけませんね。

寝室を見学して、ぐるりと向きを変えると、部屋の裏側にトイレと浴室がありました。マリー・アントワネットがいたころから30年ほど後の、革命後の仕様だそうですが、なかなか立派な造りです。トイレの壁を隔てた場所には、浴槽が置いてあり、入浴時には女官たちが壺に入れたお湯をざあーーと流し込んだようです。

挿絵でもあると当時の入浴の方法も分かりやすいのでしょうが、ありませんでした。
VersaillesPetit Trianon413トイレ後付け
( 寝室近くのトイレは革命以降のものだが往時をしのべる )


外へ出て、離宮を少し遠目に見たところです。緑のなかに、こじんまりと佇む、癒しの空間であることを感じます。
けれども、王妃様が、国民のことや政治的配慮そっちのけで、田舎暮らしごっこなどに現を抜かしていると、私たちが知ってのとおりの結果になりました。多少、歴史的な運不運もありますが、ほめられた振る舞いでなかったことは確かでしょう。
VersaillesPetit Trianon北側側面
( 寝室、娯楽室などを北側から見る )

「すべては、歴史の彼方に」という、さばさばした気分で、歩き回りましょう。何気なく植えてある木々や草の早春の黄緑や緑色が、しっとりと濡れていて、気が休まる光景であることは、間違いありません。

2019年9記                         了


ベルサイユのオランジュリーを眺める

ベルサイユのオランジュリーを眺める     2019年4月訪問


1 オランジュリーは普段は見るだけ

宮殿近くの庭園は、写真のように左右対称の幾何学模様が美しい、いわゆる「フランス式庭園」です。

庭園ゲートを入って直進すると、眼の下の一段低い場所にもフランス式庭園が広がっています。近くまで来ないと、視野に入りません。

ここが「オランジュリー:Orangerie」と呼ばれる、特別なスペースです。

Versailles202B遠くにスイス人の池
( 下段の「オランジュリー」 の春景色 )
Versailles202C肌寒いオランジュリー201904
( 後方の「スイス人警護兵の池※」は、道路を隔てた向こう側 )

(※スイス人傭兵の池、という訳語もある)

4月の末ですと、フランス北部はまだまだ肌寒い風景です。小振りなヤシの木の植木鉢が数個並んでいましたが、そろそろ出してもよい頃合いなのでしょうか。


2 オランジュリーはぜいたくの証

オランジュリーは、発音から想像できるように”オレンジ園”です。
Q 「どうして、そんな名前なの?」
Q 「別に、ミカン(オレンジ)の木なんか植えてないですよね」

A 「オレンジ園ではなく、意味を汲んで、『大温室』と言えば理解しやすいかも知れません」

要は、オレンジ、レモン、ヤシの木などの暖かい地方の木々の植木鉢を春から初秋にかけて置くスペースです。

王政時代は、オレンジなどを冬越しさせるガラス窓のある部屋を持っていたのは大金持ちだけでしたので、いつの間にか、オレンジ園=金持ち、の意味になりました。現代の「蘭マニアの温室」に通ずるところがあります。
Versailles202スイス人の池とオランジュリー
( 寒い季節のオランジュリー。暖地性植物は建物内で冬越し )
Versailles203夕焼けオランジュリー夏とスイス池198609
( 暖かい季節のオランジュリーの夕暮れ )

1990年代後半の夏の写真ですが、建物内で冬越ししていた暖地性植物の大きな植木鉢がならんでいます。昔は、芝生に模様もなかったのですね。

最近の写真を拝見すると、大きなヤシの木の植木鉢はないようです。どこかに売ってしまったか、人前に出さないのか私レベルでは分かりません。


2019年9月記                             了










ベルサイユのラトヌの噴水と噂の真相

ベルサイユのラトヌの噴水と噂の真相     2019年4月訪問

1. ラトヌの噴水ってどれだ

ベルサイユに来ると、ガイドさんの台詞や案内書に、部屋の名前や噴水の名前が、いっぱい出てきます。けれども、いっぱい過ぎてしまい、「鏡の間」と「マリーアントワネットのベッド」以外、全部、忘れてしまいます。

ですから、庭園に出て正面階段を下った場所にある、まあるい噴水の名前もたいてい忘れます。水が流れていない場合は、なおさらでしょう。

下の写真は、観光客の目に入ってくる典型的なベルサイユ庭園の場面です。噴水は、普通は出ていません。
「大きな池と、遠くに水路が見えた」程度でしょう。
Versailles211B振り向き下にラトナ噴水
( 実際に目にするベルサイユ庭園の典型的なイメージ )
Versailles211D3月のグランカナルとラトナ泉と奥アポロン泉
( ほぼ同じ構図の冬の情景 )

写真中央の丸い池の真ん中に盛り上がっているのが、ベルサイユ3大噴水のひとつ「ラトヌの噴水:Bassin et Parterre de Latone」です。英語では、Latona's Fountain。そのため、多くの人が「ラトナの噴水」と呼んでいます。

ギリシャ神話由来のラトヌ(ラトナ)の物語の一場面を再現した噴水です。ルイ14世の強い希望で選んだテーマだそうです。神話の詳細は、他の専門家や解説マニアの作品を参照いただきたく。


2. 水が上がってこそのラトヌの噴水

まず、噴水あり、なしの写真を紹介します。「やっぱり、噴水は吹き出してナンボですね」と、改めて実感しました。
Versailles225b ラトナ噴水その2
Versailles225bラトナ噴水なし428
( 噴水あり、なし、のラトヌの泉 )

ラトヌの噴水の近くに寄ってみると、「があー、ざあー」という音とともに、ものすごい量の水が、人物、亀、カエルの口から吹き出しています。風下にいると、水しぶきが容赦なくかかります。「わあ、涼しい」

Versailles226ラトナ近景
Versailles225aラトナ全景
( 水の芸術、ラトヌの噴水 )

3. ルイ14世の王権誇示説の噂

このラトヌの噴水、ガイドさんの何人かが、「ルイ14世の王権にさからった奴は、亀やカエルに変身させるぞ、と間接的に絶対王政を誇示した意図があった」、という趣旨のエピソードを披露してくれるそうで、たくさんの旅行記に、それが書いてあります。

けれども、それを証明する文献や、研究家の論文はありません。見学者の気を惹く雑談以上のものではなさそうです。ウソも100回言えばホント、のように、毎日、毎日、ガイドさんが日本人客に同じ話を聞かせていたら、「うそだあ」と声をあげた方が、却って白い目で見られて形勢逆転かも知れません。

こんな観光トリックに思いを馳せて歩いていると、ラトヌの噴水風景も遠ざかり、緑いっぱい、噴水いっぱい、の美しい全景が見えてきました。
Versailles225dラトナ噴水を囲む緑
Versailles225cラトナ噴水中の遠景
( やや遠目に見たラトヌの噴水とベルサイユ宮殿 )

噴水のアーチが、美しい白い花が垂れているように見えました。うっとり。

2019年9月記                                了








ベルサイユの迫力のアポロンの戦車の噴水

ベルサイユの迫力のアポロンの戦車の噴水    2019年4月訪問

アポロンの噴水は、ラトゥーヌの噴水(ラトナの噴水)やネプチューンの噴水と並ぶ、ベルサイユの庭園内3大噴水のひとつです。
宮殿裏正面から、真っすぐに伸びた「王の散歩道」という遊歩道を5分くらい歩いていきます。

まずは、宮殿振り返りで1ショット。
Versailles224Bアポロン前から宮殿を
( 王の散歩道終端から宮殿を振り返る )

宮殿方面から来ると緩やかな下り坂なので、ちょっと楽。この辺も、週末の夜間限定で、ライトアップと花火のショーが開催されるときは、幻想的なシーンになります。

反対側では、すざましい勢いで、アポロンの噴水が、ごおごおと水音を響かせながら吹き上がっています。

「うわあ・・・・・・・。すごい音、すごいしぶきだあ・・・・」
Versailles221アポロン噴水
( アポロンの戦車の噴水 (アポロンの噴水)と背後のグランカナル )

正式な名前は、「アポロンの戦車の噴水:Bassin du Char d'Apollon 」ですが、呼びにくいので、「アポロンの噴水」で通っています。

彫刻は、ギリシャ神話の神のひとり、アポロンが、戦車に乗って夜明けとともに地上に現われる様子を再現しているとのことです。ルイ14世の、お好みのテーマだったそうですが、上手に造ったもんだと感嘆。爆音を聞きながら、ただただ見入るばかりでした。

Versailles238Bアポロン横の姿
( 木立を背景にしたアポロンの噴水 )

写真で見ると、単に大きな噴水程度ですが、実際に、そばで見ると、すっごい迫力があります。

太い水柱が、ごうごうと上がり、それが、バシャーーーと大音響で池に落下。同時に、馬の口あたりから吹いてくる水も、バシャバシャっと跳ねて池に注ぎ込みます。そこいらじゅう水の音であふれ返り、話し声も途切れがち。
風向きによって、容赦なく水しぶきが降りかかってきますので、神経質な方はご注意です。

「けれども、これこそベルサイユの大噴水の醍醐味です」
Versailles238Cアポロン戦車拡大

少し、場所を変えてアポロン出現の様子を観察しました。水面に現われる感じが、とてもよく伝わってきたアングルでした。
Versailles222アポロン噴水近景
( 大量の水と、水しぶきの大迫力 )

Versailles238A再びアポロン
( 大運河寄りの芝生越しに、アポロンの(戦車の)噴水 )

真夏には、この辺りも人出がいっぱいですが、春先の肌寒さの残る日曜日は、見物人もあまり多くありません。
Versailles238Dアポロン噴水北西より芝生越し
( 少し遠目に、アポロンの噴水と深緑色のベルサイユの森 )

アポロンの戦車の噴水は、彫刻が水面にあまり顔を出していません。ですから、噴水が出ていないときは、「ただの池」。写真のように、かなり間延びした光景となってしまいます。
Versailles221aアポロン噴水なし428
( 噴水がないときは、ただの池 )

ですから、水しぶきが見えないと、宮殿前あたりから、はるか遠くの大運河まで行ってみようというモチベーションは下がってしまいますね。

2019年9月記                          了




足でかせぐベルサイユの噴水めぐり

足でかせぐベルサイユの噴水めぐり     2019年4月訪問

1 ベルサイユの庭園の噴水マップ

ベルサイユ宮殿の庭には、20くらいの噴水があります。ある程度、計画を立てて回っても、なかなか1日で全部を見切れません。

とにかく、庭園入口で噴水マップをもらって、木立の間に分け入っていきましょう。お姫様や貴公子から一般庶民まで皆んなが楽しんだという、いろいろな噴水が見られます。

Versailles噴水パンフ2019 (7)
( ベルサイユの庭園の噴水マップ )

噴水は、春から秋の土曜日曜の午前中1時間、午後1時間半しか吹き上がりません。いかにものんびりした顔つきを装っても、内心では時計に絶えず注意です。


2. 木立に分け入る

私たちは、どちらかというと、大運河に向かって右側の木立の中にある噴水めぐりをしました。

濃い緑に囲まれた遊歩道は、当時は格好のナンパコースであったことが想像できます。木々の陰でイチャイチャできるからです。
「おっほん、噴水の出る時刻であるぞよ・・・・」
Versailles231Dauphin王太子噴水方
( ベルサイユ庭園の木立に分け入る )

けれども最初は、左側の木立内の、コロンナードの噴水(泉水):Bosquet de la Colonnade。
Versailles217Bコロンナード拡大
Versailles217Aコロンナードの小噴水休止中
( 水の出ていないコロンナードの噴水:Bosquet de la Colonnade )

柱の間のお盆状の台から、一筋の水がいっせいに出るようです。少し来るのが早すぎました。

ベルサイユの公式サイトなどでは、いわゆる噴水でも、Bassin とBosquetの2語をフランス語の言い方に応じて訳してあったりします。 日本人感覚では、どちらも「噴水」でいいような気がしました。大きい水柱がぶふぁー、と出ているとか、女神像の脇から水が優雅に舞うように出ているとか、の差異はありますが、そういうのは訳語の差異で感じるのではなく、実際に自分の眼で見て感じましょう。

ベルサイユの噴水はバラエティに富んだ、水の芸術的な要素がいっぱいです。

次は、右の木立の宮殿寄りにある、セレの噴水:Bassin de Ceres 。
ギリシャ神話由来らしいですが、勉強不足で分かりません。
Versailles233セレ噴水越しに宮殿北
( セレの噴水は彼方に: Bassin de Ceres )

つづいて、王太子の噴水:Bosquet du Dauphin。 「王太子」という権威ある名前の割には、小ぶりな噴水です。私の気づかない由来や裏事情があるのかも知れません。
Versailles232王太子の森の噴水
( 王太子の木立と噴水:Bosquet du Dauphin  )

3. とろーり、ぶらーり

今度は、ギリシャ神話風の寝姿の女性像から、水がぶふぁあと出ているパターン。フロールの噴水:Bassin de Flore、です。宮殿からだんだん遠ざかってくると、歩いている人も劇的に減ってきます。
Versailles234フロールの噴水
Versailles235フロールの水しぶき
( フロールの噴水と水しぶきいっぱい: Bassin de Flore )

ばしゃばしゃという音を聞きながら水しぶきを、ずうっと見ていると、とろーんとしてきます。

木々の奥へ重たくなった足を、ふらふらと引きづって行くと、空高く吹いている水柱がありました。
はっと、眼が覚めました。オベリスクの噴水:Bosquet de l'Oberisque、です。水の形が、エジプト史で出てくるオベリスクに似ているのでつけた名前ですね。
Versailles236Bオベリスクの噴水遠景
Versailles236オベリスクの噴水
( 水柱が高いオベリスクの噴水: Bosquet de L'oberisque )

ここは池も広いので、水しぶきも豪快に風下に降りかかります。ごおごおと音を立てて池に落下する噴水は勇壮です。

このあたりは、庭園のはずれですので、向きを変えてグラン・カナル=大運河の方へ向かいます。
Versailles237アポロンへ戻る森の道
( 木立の隙間にアポロンの噴水が見えてきた )

早春の木々の芽吹きが、まだ初々しいプラタナスの並木道の先に、アポロンの大噴水がちらちらと見えてきました。

2019年9月記                                  了

ベルサイユ宮殿前の水辺の花壇

ベルサイユ宮殿前の水辺の花壇    2019年4月回想

1. 水辺の花壇とは何か

ベルサイユ宮殿の裏正面には、左右対称で噴水の出る長方形の池がペアであります。
水辺の花壇、という意味の、「パルトゥール・ドオ:Parterre d'Eau」です。

普通に庭園を歩いていると、あまり記憶に残らないのですが、よく思い出すと、下の写真のような状態です。噴水が出ている場合が少ないので、忘れてしまうのかも知れません。

「花なんか植わってないじゃない」
「ち、違います。噴水が花みたいでしょ」
「なーるほど」
Versailles211A宮殿正面池の噴水
( ベルサイユ宮殿2階から見た「水辺の花壇」)

噴水が出ている時間は少ないので、その代わりに、角の女神みたいな彫刻が、皆さんのベルサイユ見学記に、よく登場します。四つの像は、フランスの四大大河を表していますが、どれがどれだが分かりません。

Versailles241噴水終了夕暮れ
( 水辺の花壇の四隅で寝転がっているシンボル彫刻 )

あらためて見ると、噴水が出ていない場面だけでは「何じゃこれ?」ですね。


2. 少し昔のベルサイユ庭園風景

ベルサイユ宮殿の庭園は、修復が進んだ今の方が、ずっと凝った造りです。単なる芝生だった場所が、少しずつ幾何学模様のフランス式庭園模様に変わり、私たち見物客の眼を楽しませてくれます。その代わり、庭園の有料拝観日が増えました。噴水の日9.5ユーロ、BGM音楽の流れる日8.5ユーロ、など、当局も増収策に余念がありません。

20-30年前、噴水のある日も無料入園だったころの夏のベルサイユ庭園風景を思い出しました。いつの時代でも、緑いっぱいの美しい庭園を、楽しく、けれども疲れ気味に歩いたことに変わりはありません。

Versailles212C夏の噴水むかし無料199007
( 左が「水辺の花壇」の噴水。庭園北から南東方向を見た場面 )
Versailles212D夏のベルサイユ庭園風景199007
( 1990年代の夏の日のベルサイユ庭園とピラミッドの噴水 )

昔の写真を見たら、ちらりと「水辺の花壇」の噴水も写り込んでいました。変わらないベルサイユに、ほっとしました。

2019年9月記                           了

庭から眺めるベルサイユ宮殿

庭から眺めるベルサイユ宮殿     2019年4月他

1. 世界遺産の庭に出る

ベルサイユは、宮殿と庭園がセットになった世界遺産です。宮殿を作った国王ルイ14世も一押しの、天才造園家アンドレ・ル・ノートル設計の庭園を是非、訪れましょう。

庭園を歩き回ると足が棒のようになりますが、それだけの価値はあります。

庭園へ出るためには、宮殿本体のやや南側の、くびれた部分をくぐって進みます。

Versailles201A庭園有料入口風景
( ベルサイユ庭園へ宮殿直下から入るゲート )

2. 庭園から宮殿を眺める

庭園へ出てまず目にするのは、幾何学模様の庭園と、その向こうに長々と横たわる宮殿です。鏡の回廊(鏡の間)から、南ウィングあたりが最初に視界に入ります。
Versailles205B庭園の奥の宮殿裏正面堂々
( フランス式庭園の彼方に横たわる宮殿。2階が「鏡の回廊(間))

庭を、のんびり歩きながら、刻々と位置を変え、姿を変えて行くベルサイユ宮殿を眺めました。

「うーーん、あんまり時間がないのです」
「少し、急ぎ足で歩きましょう」
「足が疲れた」

Versailles205A前庭と宮殿遠景
( 位置を変えながら見るベルサイユ宮殿 )

Versailles207宮殿を正面に見て
( 裏正面から見た宮殿 )

Versailles208A前庭北と宮殿夕
( 庭園より宮殿北ウィングを見る。小さくプティトランが見える )

3. 歩くかプティトランか

足が疲れた方々用に、宮殿の北ウィング前から有料のプティトランという園内専用の簡易移動車が出ています。2019年4月現在、1日券は大人一人8.5ユーロ、約1100円です。

プティトランは楽ですが、宮殿正面から大運河まで真っすぐに伸びている「王様の散歩道」を通りません。楽をすると、ベルサイユの庭園屈指の風景が見られません。

体力の続く限り、宮殿を背に大運河まで散歩がてら歩くことをお勧めします。
ものの5分も歩けば、次の写真のように、ラトゥナの噴水越しに威風堂々のベルサイユ宮殿が見られます。

いかにも、「豪華絢爛で巨大な宮殿と庭園」いうシーンです。段差を設けて建物と庭園を配置しているのが妙だと思いました。
Versailles225dラトナ噴水を囲む緑
( 噴水越しにベルサイユ宮殿を望む美しさ )

但し、噴水サービスのある時間は、原則として、4月から10月の土日の11:00~12:00と、15:30~17:00のみ。なかなか噴水が出ている場面に当たりません。各種サイトの宣伝写真や、旅行会社のパンフレットなどに過度な期待をしないようにします。

噴水サービスのある日時や入場料の最新詳細は、以下の宮殿公式サイトを開き、ticket;英語、 billet ;フランス語、のページを選択して確認します。フランス語と英語版のみしかありません。

http://en.chateauversailles.fr/plan-your-visit/tickets-and-prices?


2019年9月記                                         了








これぞベルサイユ土産

これぞベルサイユ土産     2019年4月訪問

(1) ベルサイユ土産だ!

2019年のいま、ベルサイユ土産の定番は「マリー・アントワネット商品」です。

Versailles154マリーアントワネットグッズ
(  マリー・アントワネット土産は種類が豊富 )

手帳、ボールペン、ノートなどの文具類から始まり、香水、ポーチなどの化粧品類、ブローチなどのアクセサリーなど小物類がいっぱいあります。ドロップ類もあったような記憶があります。これからも、マリー・アントワネット・グッズは増えていくでしょう。

ちなみに、これらのお値段は、1つ5ユーロから30ユーロくらいで微妙。いっぱい買い込むと、思わぬ金額になります。「お客さん、ここでしかマリー・アントワネット柄は買えないのですよ」、と囁かれると、ついつい、多めに手が出ます。


(2)迷ったら買え

ベルサイユ宮殿内のお土産屋さんは、自由見学コースの順路の途中にもあります。写真の売店は、王立礼拝堂脇のもの。カタログと文具類専門です。

お土産屋さんは、順路の最後にもあるし、ちょっと脇道にそれた場所にもあります。

けれども、「見学終えてからお土産を」、と思っていると、じっくりお土産を買えません。お買い物に重点をおいている方は、目についた売店でさっさと買うのが良いと思います。「海外旅行では、迷ったら買え!」です。

Versailles153礼拝堂脇2Fの土産店
( 王立礼拝堂脇のお土産屋さん )

(3) 割り切って商売、商売

ここ20年ばかり、美術館や博物館も積極的にお土産を売るようになっています。財政難の補填も兼ねています。ベルサイユなどは話題性に事欠かないので、お客の気を惹くグッズがいっぱいあるかと思いきや、お土産の品揃えは意外と地味です。

大きく分けると3つしかありません。カタログ、太陽王ルイ14世関連、マリー・アントワネット関連の3つです。ベルサイユ宮殿の形がレリーフされたチョコレート、王族の紋章入り携帯ホルダー、手鏡なんか作ればいいのに、と思っていますが、ありません。

IMG_7391 smallsize
Versailles154bみやげ0428
    ( ベルサイユ土産の例 )

IMG_7398
( マリー・アントワネット関連みやげは種類が多め )

最近でこそ、マリー・アントワネットとベルサイユの相性は良くなっているので、マリー・アントワネット・グッズは増えています。けれども、現在のフランス政府からすれば、絶対王政は敵ですから、ベルサイユの歴史やイメージを肯定的にアピールすることなど容認しずらかったのでしょう。そのため、長らくマリー・アントワネット・グッズは、ベルサイユというかフランスではタブー扱いだったような印象です。

本来の趣旨からいえば、「しっかりとベルサイユの華と陰を五感で感じて帰る」のがベルサイユ観光の姿なのだと思いますが、それでは、お客も当局も満足できません。こちらは、「ベルサイユへ確かに行った」という物証がほしいのです。

その結果、「いろいろあったけれど、お客さんが楽しめるなら商売、商売」に大転換。

いったん、吹っ切れたら地力のあるベルサイユのこと。お土産やイベントの新企画が出るわ出るわで大盛況。いま、ベルサイユ観光に来る私たちは幸せものです。

一気に人気者に登りつめたマリー・アントワネット・グッズは、宮殿内の各売店に所狭しとならんでいます。是非、最低でも2つ、3つと買って帰りましょう。もちろん、伝統のカタログ類も、従前に比べて充実。日本語版もばっちりあります。

2019年8月記                                            了

自由に楽しむベルサイユ

自由に楽しむベルサイユ    2019年4月訪問


1) 豪華絢爛で巨大

ベルサイユ宮殿は、「豪華絢爛で巨大」の一言につきます。

宮殿内の自由見学コースを1時間強で見物しただけでも、十分に圧倒されます。ベルサイユを代表する「鏡の回廊(鏡の間)」:Galerie des Glaces = The Hall of Mirror  に加えて、国王関連の部屋や王妃の寝室、ナポレオンの間などを周るだけでも、目がくらくらし、人混みでぐったりするでしょう。

私たちも、そんなベルサイユ宮殿の自由見学コースを見物して、ブルボン絶対王政の光と陰を堪能しました。見どころや由来は、ガイドブックや、多くの方々が、繰り返し丹念に描写していますので、さらりと写真チェックして、余韻に浸ります。

Versailles自由見学と正面
( 自由見学コースの入口 )

左から右へ中庭を抜けて入ります。本当は、奥まった場所の正面玄関まで歩み寄って大理石の玄関先や精巧な外観を堪能するべきなのでしょうが、混雑で気が急いているので、そそくさと通り過ぎてしまいます。
「まっ、いいか」、という感じです。


2) 礼拝堂から国王の間

Versaillesシャペル縦0428
( 自由見学コースからのぞく王室礼拝堂 )

Versailles151裏の大広間と安絵画
( 1階の北にある十字軍の間と言われる部屋の数々 )

十字軍の間あたりは、最近、一般公開されたようです。特別貸切で夕食会やパーティもできるとのことです。

Versailles北庭噴水0428
( 2階の国王の寝室入口付近から見た庭園北側 )

土日は、午前11時から12時までは、庭園の噴水が吹きあがります。午後の部は3時30分からです。

Versailles155a王の部屋群混雑
( 国王の寝室一帯は、大混雑。人息れでムンムン )

Versailles国王の間天井
( ベルサイユ宮殿の天井画は、ひときわゴージャス )

Versailles156王の部屋群アポロンの間とルイ14世の絵
( 高校の世界史の教科書にも出てくるルイ14世の肖像画 )

ヨーロッパに行って、世界史や美術の教科書に出てきた肖像画や名画を、この眼で見たときの歓びは格別です。歴史は暗記物だと思っていた方も、自分も過去や世界とつながっているんだ、という実感に浸れます。

このルイ14世、カツラをかぶり、かなり高いヒールの靴を履いています。それらを取り去った姿を想像するのも面白いものです。

「中背、やや腹が出て、髪も薄く、歯もほとんどなくなっている、このオヤジが国王だってえ?」と、叫びたくなるようなお姿なのかも知れません。


3) クライマックス鏡の回廊 (鏡の間)

Versailles161戦争の間と奥の鏡の回廊
( 戦争の間から左に折れたところが「鏡の回廊」(鏡の間)の入口 )

ベルサイユ宮殿きっての有名ポイント「鏡の回廊」には、みんなお行儀よく列を作って入って行きます。

我が物顔に人を押しのけて歩みを進めたのは、かつて王族、戦後はアメリカ人、バブル時代は日本人、そして今は中国人、といったところでしょうか。

Versailles162豪華絢爛鏡の間(回廊)
( 鏡の回廊 (鏡の間) は息を呑む美しさ )

Versailles163鏡の修復も良好
( すっかり鏡の輝きも修復されました )

この空間、最近は「鏡の『回廊』」と訳してあることが多いようですが、昔は「鏡の『間』」と言うのが普通でした。フランス語の「Galerie」の訳を、うるさく言う人がいたのでしょうね。実物を体験すると、大きくて細長い空間なので、「回廊」でも「間」でもなく、強いていえば「広間」っぽい感じが一番しっくりきます。英訳は「Hall」=「広間」ですね。

4) ルイ14世の寝室

「鏡の間」の壁の裏側は、ルイ14世の寝室や「閣議の間」、控室などです。「鏡の間」と行ったり来たりしながら豪華絢爛なインテリアを目に焼き付けました。

Versailles165鏡の裏の閣議の間
( 閣議の間 )
Versailles166ルイ14世の寝室
( ルイ14世の寝室 )
Versailles167牛の眼の控室428
( 「牛眼の間」は控室見合い )


5) 王妃の寝室

「鏡の間」を出て左に曲がったさきに「王妃の寝室」の一群があります。
ベルサイユに縁のあった王妃様は数人いますが、ここはマリー・アントワネット仕様になっています。思わず「萌え・・・・」とする方も多いはず。何しろ、「ベルばら」の場面と同じく、寝室の壁には、ちょっと見には分からない隠しドアが仕込まれています。

Versailles171王妃のベッド
( マリー・アントワネット仕様の「王妃の寝室」 )

当時は、膝を折って寝る習慣でしたので、意外とベッドの奥行きがありません。「ベルばら命!」の皆さまも、いちどブルボン王朝風の姿勢で、お休みになってはいかがでしょう。

Versailles173王妃の居間とMアントワネットの絵
( 続きの部屋。控えの間だったかな )
Versailles王妃系0428
( 大膳の間。部屋の中央には入れません。どうしてかな )
Versaillesナポレオン系の部屋0428
( こちらも続きの間。詳しくは、「うんちく」いっぱいのブログをご覧あれ )

6) ナポレオンの間

王妃の寝室群の一部は、「ナポレオンの間」に改造されています。何たって、ナポレオンは現代フランス社会の立役者ですから、王朝の皆さまより重要なことは言うまでもありません。

Versailles174ナポレオンの戴冠ダヴィドのベル版
( 超有名な「ナポレオンの戴冠」ベルサイユ宮殿バージョン )

「ナポレオンの戴冠」は、ルーブル美術館にある絵が1作目、ベルサイユ宮殿にある絵が2作目で、ほんのちょっぴりだけ違います。他所のブログかガイドブックで差異はご確認ください。

私が初めに思った疑問は、そんなことではなく、「女性に冠を授けているのに、どうして『ナポレオン』の戴冠なの?」と、いうことでした。

史実は、ナポレオンは戴冠式で、自ら帝冠を手に取って、自分の頭に載せて政治力をアピールしたのですが、それを絵に残すと、あまりに生々しすぎるという配慮で、皇后へ専用の冠を授ける場面を描くことにしたとのこと。

実際は実力でトップに昇り詰めたのに、それは、さも神とか天から「授けられた」、あるいは「選ばれた」と装って、自己の権威付けを図る政治家が99%を占めるなかで、ナポレオンの成したことはユニークです。だからこそ、時代を超えて受け継がれる数々の法令や社会の仕組みを残せたのだと思います。

Versailles175ナポレオンの肖像
( ナポレオンの肖像画。 ご本人は小柄だったようですが )

7) 戦史の間と南ウィング

普通に見学していると、このあたりへ来るころは、だいぶ疲れてきています。

「あと少しです。足を引きづってでもベルサイユ宮殿を見物しましょう」

Versailles176戦争画のギャラリーの木目床
( 戦史の間。「鏡の間」の手前は「戦争の間」で、ちょっと名前が違います )

この部屋は、2014年3月9日に、かのカルロス・ゴーンさんが、ルノー社の祝典と称して、実質的に自分の還暦祝い誕生日パーティを催した空間です。有名シェフのアラン・デゥカスさんが料理を担当したとのことです。さぞかし、豪勢で美味なるパーティだったことと思います。ゴーン氏も、会社のパーティでしたならば堂々と公言すればよかったのに、やはり気が引けたと見えて、当時は「どうか内々に」と招待客に一声お願いをしていたそうです。

今となって考えてみれば、それだけの器しかなかった人物なのか、ベルサイユ宮殿のきらびやかで由緒あふれる伝統の前に、魂を抜かれてしまったのか、分かりません。

Versailles南端ルイフィリップ画0428
( 「戦史の間」のさらに奥は、国王ルイ・フィリップの絵の部屋 )

Versailles177戦争画裏の美しい回廊
( 「戦史の間」の壁の背後を通って出口方向へ戻る )

Versailles179出口への南翼大階段
( 大階段から1階に降りる。下にお土産屋、トイレ、庭園への出口などがある )

まだ少し歩き回れるところはあるのですが、足の疲れも限界にきています。あまりの豪華さに感覚もマヒしています。「まだ見たい」、という欲望より、「一休みしたい」、「もういいわ」、気分が勝りましたので、引き揚げました。

足が棒のようになっていますが、最後の力を振り絞り、大階段を下りて、お土産屋とトイレへ向かいます。

こうしてベルサイユ宮殿に圧倒された数時間は終了しました。


2019年8月記                     了


ようこそマリー・アントワネットの祝いの間へ

ようこそマリー・アントワネットの祝いの間へ   2019年4月


1  シャペル:Chapelle

ガイドツアーの締めは、王室礼拝堂:Chapelle と王室オペラ劇場:Op*era でした。( * アクセント記号あり)

2019年4月現在、王室礼拝堂は修復工事のため、外側が覆われてしまっています。いまのところ2020年完了予定です。工事が終われば、下の写真のように、周囲から頭ひとつ出した端正な姿が観光客の前に現われるでしょう。

Versailles王室礼拝堂199007
( 王室礼拝堂遠景。修復工事前のすがた )

私たちは、ガイドさんの誘導に従ってシャペルの中に入りました。大理石の床なので、多少、冷え冷えとした豪華な空間が広がっています。

Versailles132王の礼拝堂正面
( 王室礼拝堂正面祭壇 )

往時、ここでは毎日、ミサが行なわれ、国王も2階席で参列したと言われています。フランス王家は、一応、キリスト教の守護者でもあったので、建前上は信心深く振舞うのがお約束でしょう。教義と実生活との大きな差に関して、どういうメンタリティでバランスを取っていたのか、私には興味深いところです。

また、1770年5月16日に、将来のルイ16世とマリー・アントワネットの結婚式が行なわれたのも、この空間でした。

「お互いに、初めて、実物の相手方を見て、どう思ったのでしょうね?」
「少しは、『萌えっと』したかも知れません。けれども、本人も含めて、誰にも分からないと思います」
これが私の意見です。
「えっ?」
「まず、ホンネをもらした記録があるやに聞いていません。本人も、一応、嬉しいのでしょうが、早熟気味とはいえ、まだ二人とも15歳でした。恋愛結婚ではないので、当日は、かなりどきまぎしていたのではないでしょうか」
「そんなものなのですかねえ」

結果論ですが、このご夫妻には公式寵姫がいませんでした。
ベルばらで有名になったように、奥方についての噂はたくさんありますが、旦那様は堅かったようです。

Versailles133b
( 王室礼拝堂の祭壇 )

現在のシャペル内は、椅子などが取り外されています。豪華絢爛な祭壇は見事なまでに輝いています。床も負けじと美しい細工物で覆われています。天井も、あいた口が塞がらないくらいゴージャスです。

祈りの場というより、儀式の間です。

Versailles133d
( 王室礼拝堂の天井画 )

シャペルは、自由見学コースでも入口から内部をのぞけます。
ですから、シャペルの写真に見覚えのある方はいっぱいいらっしゃると思います。

けれども、内部までずんずんと入れるのはガイドツアーのみです。ガイドさんは、「写真を撮ったら両脇にどいてね」と、私たちを促します。のぞき口から祭壇を見る多くの見学者への配慮です。

Versailles133c
( 王室礼拝堂の見事な床と側面アーチ )

自由見学者は、押すな押すな状態でシャペルをのぞいています。
Versailles133王の礼拝堂祭壇から入口
( 王室礼拝堂の祭壇から入口方向を見る )

2. 王室オペラ

王室礼拝堂(シャペル)の見学を終えたので、王室オペラ劇場に向かいました。本日の最終コースです。場所は、正面向かって右のかなり奥の方です。普通のベルサイユ全景写真には写り込まない位置です。

ガイドさんは、私たちを促して、ずんずんと奥へ歩いて行きました。
そして、外見上は地味な大理石の柱や壁に覆われた入口から劇場内に入って行きました。
Versailles131一般エリアとガイドさんアンヌ0428
( 専属ガイドさんの誘導でオペラ劇場へ向かう )

Versailles145一般ルートに合流
( オペラ劇場へ向かう長い廊下 )

内部に出た瞬間、そこにも、金ピカで豪華絢爛、精巧な細工と紋章に飾られた空間が広がっていました。
「わあー、これぞベルサイユ!」

オペラは、、マリー・アントワネットのお輿入れを祝って作られました。
Versailles142オペラ座席と我ら
Versailles141舞台の幕
( オペラの席と正面舞台の緞帳 )

ここは、いまでも現役の舞台なので、全体の空気が生き生きとしていました。自由見学で回る「鏡の間」は、同じく豪華絢爛でも、なんとなく展示品のイメージですが、オペラは豪華さで劣るものの、今を生きる人々の息吹きが漂っていました。舞台の緞帳などにホコリがなく、輝いているのです。

オペラでは、ときどきコンサートや、政府の歓迎イベントがあるそうです。前者は、早い者勝ち、金運次第なので、是非、チャレンジしましょう。
Versailles144cオペラ天井
( ギリシャ神話を題材にした天井画 )

相変わらず、見事な天井画とシャンデリアです。ぽかんと口を開けて、ずうっと上を見ていたので首が少し痛くなりました。

「あそこの格子窓が国王の席です。顔を出すと、みんな舞台そっちのけで王様の方を見てしまうので、その対策です」
ガイドさんの淀みのない説明に、一同納得。
「それにしても、すごい」
Versailles144aオペラ格子の王の席
( 宮殿オペラ劇場の王の桟敷(格子窓の部屋))
Versailles144bOPERA
( 王の桟敷とシャンデリア、天井 )

「でも、王様は、一番前で、かぶりつきで芝居を見たいなんて思わなかったのでしょうか」、と思いました。
天皇陛下が国技館で相撲観戦のときも、微妙に遠い場所が貴賓席。一番前に出たいとは思わないのでしょうか。

ですから、2019年5月に、かなり前の席にて相撲観戦されたアメリカのトランプ大統領夫妻は、本心から相撲楽しんだことと思います。

「でもね、やっぱり芝居は見るものではなくて、出るものよ。おほほ」
マリー・アントワネットのささやきが、私の耳の奥に響いたところで、ガイドツアーは終了となりました。

なかなか充実した内容に、あらためて感動しました。ていねいに、そして簡潔に見物個所の説明をしていただいたガイドさんに拍手を送って、さよならをしました。


2019年8月記                       了



密かにまわるベルサイユ

密かにまわるベルサイユ  2019年4月

1 ガイドツアーにそおっと入る

私たちが予約した個人向けガイドツアーは、人知れず、そおっと入ります。始めは、Aile des Ministres Nord=内閣府北棟、という建物にある受付に向かいました。予約券の地図に、はっきりと受付場所は指示してあります。建物前には、きちんと案内表示が出ていますので、迷うことはありません。

ガイドツアーは1組25人程度です。また、時刻をずらして募集していますので、受付に向かうのは一握りの人たちです。ほとんど、誰もいないと言ってよいでしょう。
「あの人たち、何しに行くんだろうね」と、いう風に思われたかもしれません。

Versailles104ガイドツアー受付案内
( ガイドツアー受付場所の案内表示 )
Versaillesガイドツアー受付
( Aile des Ministres Nord:内閣府北棟、の建物 )

ベルサイユに来ると、前方の宮殿玄関の方に視線が集まりますので、左右の建物のことは見落としがちです。衆人注目のなかで受付に入るような場所でなくて、ほっとしました。

日本人にとって一番こわいのは「妬み」です。きちんと手順を踏んでいるのにもかかわらず、「自分だけ得しやがって」と思われると、もうどうしようもありません。


2  粋な待合室

受付のドアを押すと、係のスタッフがいて、「ボンジュー」の一言のあと、すぐさま入場券と予約券を照合、確認されました。そして、背後の廊下沿いに並ぶ待合室のひとつに案内してくれました。トイレは、待合室の並ぶ廊下の奥です。

肌寒い気候の日に、少しばかりですが暖房の入った部屋で、座って待てることに感動しました。室内で防寒と体力温存ができる一石三鳥のサービスに、思わず「ああ、ガイドツアーに申し込んでよかった」。

待合室の壁は、部屋ごとに、ベルサイユ・ムードを醸し出すデザインです。ここは、宮殿の中でも実務遂行のための建物であったようで、質素な印象です。木組みの床は高級そうで、さすがベルサイユ。けれども、定番の金ピカムードは一切ありません。もちろん、現在のニーズに合うよう改修されています。

Versailles105B待合室428
( 連続するガイドツアーの待合室 )

私たちが入った部屋の壁は、国王、王妃、そして公式の愛人である寵姫(ちょうき)の影絵をあしらったデザインでした。

「ほら、マリー・アントワネットもいるよ」

ベルばらファンのマダムは、ベルサイユの雰囲気に呑み込まれていましたので、最初は何のことやらという顔をしていました。私の指した影絵と名前を見ると、急に眼が輝き出しました。”こんなところにも、もうマリー・アントワネットが顔を出すのか”、というマダムの表情が、とても新鮮でした。「物語の世界が現実にあったんだ」、と実感する瞬間は、誰でも体験しているはずです。

しかし、彼女だけ頭飾りが断トツで派手なのですね。

Versailles105Aガイドツアー待合室と壁面
( 私たちの待合室は歴代君主、王妃、寵姫の影絵 )


フランス史の知識がないと、影絵の人物たちの歴史上の位置づけが分かりにくいと思いますが、宮殿見学のムードを出す部屋の雰囲気を味わうだけでも十分だと思います。

ところで、「ベルばら」に登場する人物は何人くらい描かれているのでしょう。マリー・アントワネット、ルイ15世、ルイ16世、デュ・バリー夫人の4人くらいです。


3 ガイドツアーが始まった

集合時刻5分くらい前になると、スタッフの方が現われて、みんなに専用のイヤホンを配り、性能テスト。間髪をおかずに当日のガイドさんも登場して、自己紹介と簡単なルート説明をしました。ガイドツアー用のイヤホンの有無で、ガイドツアー参加者を見分けるので、常時、装着してほしいということも言われました。

それでは、早速出発です。ツアーその他見学者用に「B」ゲートに行き、最優先で入場してセキュリティ・チェックを受け、正面玄関前の、王家の中庭:Le Court de Bonheur に出ました。


Versailles106宮殿真正面 顔塗り
( 王家の中庭と、大理石の正面玄関 )

ガイドさんは、ここでベルサイユの歴史を2-3分で要領よく語ってくれました。ガイドブックやブログのとおりです。
そして、いよいよ、自由見学不可エリアに入って行きました。多くの皆さまがオーディオガイドを借りる部屋を左折したあたりから、仕切りの柵を開けてもらって入り、階段を昇った2階がルイ15世の住まいです。

外から見ると、正面玄関右手の2階付近一帯です。

Versailles112王の私室への裏階段
( ルイ15世の住まいへ上がる階段 )

落ち着いた金箔に彩られた、しっかりと作り込まれた感じの階段を、ぐるぐると昇った先には、金ピカの空間が待っていました。

Versailles107A王の私室へ階段昇る428
( ルイ15世の住まいのオモテの最初の部屋の前 )

ルイ15世の住まいは、いわゆるオモテとオクの2種類がありました。オモテは、特に重要な人物や知人を招き入れる空間です。オクは、本当のプライベート空間で、家族や親せき、超VIPだけの部屋だったそうです。

どちらもベルサイユの基本デザインである、白壁に金泊の縁取りで豪華に飾られ、ギリシャ神話由来の天井画と、輝くばかりのシャンデリアが下がった部屋であることは変わりません。けれども、慣れてくると、オモテの方が、見た目重視で、より豪華絢爛に造られています。オクの方は、暮らしやすいように造られています。石造建築は、真冬に、想像を絶するくらい冷え込むことがあるので、南向けの部屋を作って太陽を取り込み、暖房効果を上げるために間取りを小さくしています。また、派手過ぎる飾りつけは避け、エレガントで落ち着きのある金泊の空間になっていました。

また、ベルサイユ宮殿の家具調度類は、フランス革命真っ盛りのころに大半が競売にかけられて売られました。外国軍や反乱軍に対抗するための戦費調達目的です。国家の存亡がかかっていたのですから当然ですが、よくぞ、建物本体は無償で残ったと言うべきでしょう。

ですから、見学者が見る家具類の大半は、最近、買い戻したものや、何らかのイベント用にしつらえたものの残りです。その一方、壁や天井やシャンデリアはオリジナルで超豪華絢爛。筆舌に尽くしがたい美しさを放っています。

ベルサイユをいったん見てしまうと、同系統の宮殿は、すべて「ベルサイユと比べるとねえ」、という気持ちでしか鑑賞できなくなります。日本の迎賓館(赤坂離宮)も、その例外ではありません。

ここでは、受け売りの解説など書きません。

ただただ豪華絢爛、エレガントで高貴な雰囲気のルイ15世の住まい、ルイ16世の図書室などの写真を紹介します。

Versailles113C王の謁見室付近
( ルイ15世のVIP謁見の部屋。私室のオモテの続きの間 )

Versailles113A時計の間
Versailles114王の私室の調度
( ルイ15世のVIP謁見の部屋。私室のオモテ )

Versailles115王の私室から雨のテラス
( 王の住まいから見た、私的な中庭 )

Versailles111a外交団通行階段
Versailles111b大使の階段反対側
( VIPがルイ15世に面会するために通った階段 )

ここからは、ルイ15世の住まいのオクの部分になります。
Versailles116王の私的食堂か居間
( 狩りの後の談話室兼軽食室 )

Versailles117a楽器のデザインの部屋
Versailles117王の音楽のサロン
( 家族のサロン。扉と壁が一体化した造り )

Versailles118ルイ16世の図書室
( ルイ16世の図書室。本はレプリカ )

ルイ16世の趣味は、錠前づくりと世界地理。前者は、とても有名ですが、後者は初めて耳にしました。部屋のテーブルは、当時の世界地図が広げられる大きさにしつらえたそうです。

王様が皆、政治的才能に恵まれているわけではありませんから、この程度のカネのあまりかからない趣味に興じてくれるのがベストなのでしょう。

私の思うところ、これは古今東西を問わず共通なようです。

Versailles119a磁器の食堂
( 家族の食堂。調度類は現代のもの )
Versailles120王の娯楽室
( ビリヤードやゲーム室 )

ガイドさんは、ゲームの間あたりから扉を開けて、私たちを自由見学エリアに出してくれました。ヴィーナスの間という部屋で、金ピカで天井画も豪勢なベルサイユ風のインテリア。大勢の観光客で激コミ。大半の人たちは、私たちが入ってきたことに気付かなかったようです。当時との最大の違いです。

「王様や王族は、こうやってプラーベート空間から公式の間へ姿を表したんですよ」
という、ガイドさんの説明と上手な誘導に感謝、感激です。
Versailles121b公私境界扉
Versailles121天井画見事一般エリア重複
( ガイドツアーのプライベート空間から、オモテに出たところ )

私たちは、王族よろしく、再びプラーベート空間へ密かにもどり、内部の階段を下りて、次の見学先に向かいました。

見ごたえのある王族の私室や、オモテとオクの違い、いろいろな趣向の部屋の数々に感動し、ガイドさんのよどみない英語の解説を耳にしながら、声もなく歩く感じです。

ちなみに、ちょっとだけ他のメンバーと話してみると、中国系のアメリカ人の方、ドイツ人の方などもいました。向こうも「日本人!こんな英語ツアーに珍しいね」という反応でした。


2019年7月記                             了





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