ラ・メルベイユに驚く平凡なモンサンミシェル観光 2019年4月
1 凡人なので場面の羅列
モンサンミシェル修道院:Abbaye の見学記は、知らず知らずのうちに、判で押したようになってしまいます。単なる場面の羅列に終始してしまいます。
「聖なんとか」、がどうのこうのと聞いたり、書いたりしても、すべて受け売り。本当は、そびえ立つ建物や、美しい列柱を目の当たりにして、「すげえ」とか、「きゃあ」と思っているのですが、気の利いた一言が思い浮かびません。
それだけ、観光客を圧倒する光景が展開する歴史的建造物です。

( モンサンミシェル修道院東面。要塞風の感じ )
先人のたゆまぬ努力の下に完成の日をみた、すばらしい建築遺産が何気にあるって、フランスは恵まれているなあと思います。日本にも、同じような遺産があるはずですが、お客様に、それを見せる工夫、感動してもらえるストーリーを作る工夫が全然、足りていないような気がします。
2 南のテラス、西のテラス
モンサンミシェル修道院を入ると、私たち観光客は、まず、一番高い一般公開地点である南のテラスまで上がります。ここで、シャトルバスが走る橋の方角の「下界」を見物します。
「けっこう、上まで登って来たんだ」
「足がガクガクだけれど、来た甲斐があった!」
眼下に展開する、今しがた通ってきたルートに思わず見入ってしまいます。写真は午後4時ごろの様子。対岸に帰る日帰り客が大勢シャトルバス待ちをしていました。小潮の日でしたので、干潟が開けていて、海に浮かぶモンサンミシェルの雰囲気は、みじんもありません。こればかりは、どうしようもないです。

( 南のテラスから、橋と対岸のホテル街を鳥瞰 )
次に、モンサンミシェル修道院の歴史的変遷をたどった模型の展示してある石造りの小屋を通って、西のテラスに行きます。

( 歴史的変遷を模型で展示した部屋 )

( 西のテラスから、修道院付属教会入口を眺める )
西のテラスは南のテラスの数倍広く、眺望も三方向に開けています。島周辺の広大な干潟や押し寄せる潮の満ち干、フランスの沃野を思う存分目に焼き付けましょう。

( 広い西のテラスからブルターニュ方向を見る )
3 姉妹岩のトンブレーヌ島を遠望
テラスをあちらこちら移動して、北の方角に視線を移します。
絶壁状になったテラスの壁の向こうに、トンブレーヌ:Tombraine 島が見えます。モンサンミシェルと同じ岩山の島ですが、高さは低く、横長の形です。干潮時には、モンサンミシェルからトンブレーヌまで歩いて往復する有料の干潟ツアーがあります。

( 西のテラスとトンブレーヌ島遠景 )
4 ラ・メルベイユ側面を見る
西のテラスの北からは、ラ・メルベイユ:La Merveille と称えられている四層建て石造ビルが目に入ります。この建物を北側の海上から見ると、修道院の高層建築がそそり立つ荘厳なシーンが見られるそうです。横から、ちょろっと拝んだくらいでは、その特徴的な外観が見えないので、観光客は見落としがちです。

( ラ・メルベイユ側面 )
5 修道院付属教会もゴシックづくり
順路に沿って、西のテラスに面して建っている教会に入ります。
見慣れたゴシック建築内陣の様子が目に入ります。アーチで支えられた高い天井がポイント。
「わあ、すごい」
「また、このタイプの教会ね」
皆さんは、どちらですか。私は、後者でした。
本当の背景はわかりませんが、それでも、質素な祭壇が、ここが静かな祈りの場であることを主張しているようで、好感が持てました。

( 修道院付属教会内部と、奥のシンプルな祭壇)

( 木造の天井 )
ここも、例のパリの聖堂と同じく、天井は木造です。
「火の用心!」
6 ラ・メルベイユの回廊庭園だ
教会を出て、順路に沿って石段を数段、降りると修道院内随一の光景と評判の高い「回廊の庭園」:cloitre が見えてきました。二重になった列柱上部に掘られた装飾が精巧で美しいです。オリジナルの彫刻は、ごく数点のみだそうです。現代修復技術のなせる技はすごいです。

( 回廊の庭園の二重列柱と彫刻 )

( 回廊の庭園のシンプルな美しさ )

( 回廊の庭園と教会の尖塔 )
庭の芝生は、以前は花壇。もっと昔は薬草園だったそうです。オリジナルが良いか、いまのようなシンプルなデザインがよいかは迷うところかも知れません。ここは、空中庭園みたいなものですから、下の階へ水漏れしないようにするのは大変とのことです。
回廊の壁の切れ目から、外をのぞいてみました。延々と広がる干潟の向こうに、ブルターニュの広大な平地が広がっていました。春の陽ざしに照らされた沃野が美しいです。

( 回廊の庭園から望むブルターニュ方向の平地 )
7 大食堂
回廊の庭園の奥が大食堂です。修道院として事実上機能しなくなって久しいので、どの部屋も、宗教的な雰囲気を残す石造りの空間です。解説や、かなりの想像力がないと、修道院時代のイメージはつかみにくいと感じました。

( 大食堂 )

( 大食堂の回廊につながる出入口 )
8 貴賓の間
続いて、階下におりると貴賓の間にでます。ここも、説明があってこそ初めて理解できる部屋でした。

9 フニクレールがあった
外海に面した貴賓の間から、本土側に順路をたどって進んだところに、牢獄時代に使われたフニクレールのレプリカがありました。ケーブルカーと同じ原理の、ケーブル式巻揚げ機です。牢獄の運営に必要な食糧や物資を巻き揚げたそうです。1回2トンの荷物を揚げたとのことです。日本語のガイドさんが、そう説明するのでしょうが、旅行記などでは姿、形に由来した「大車輪」のような呼び名が多いようです。

( 巻揚げ機の側面。レプリカ )

( 巻揚げ機のロープ。滑車の大きさも分かる )

( まさにフニクレール。ほぼ直登に近い絶壁 )

( 下から見上げたフニクレール )
なかなか、すごい装置です。
10 秘密の階段
真の巡礼者を迎え入れるための空間へ通じる階段。観光客は、お呼びでなさそう。

( 奥へ向かう階段)
続いて「騎士の間」。修道院時代は作業室、牢獄時代は何の部屋?

( 騎士の間 )
11 シャバの雰囲気に戻って
かつての「施しの間」は、ミュージアム・ショップ。私たちは、モンサンミシェルにお金を落とす側です。

( 「施しの間」であった現、お土産屋 )
モンサンミシェル修道院の公式ガイドブックをはじめ、修道院からみの土産は、ここでしか売っていないものも多いです。なんだ土産屋か、と通り過ぎない方がよい場所です。
12 再びラ・メルベイユ
お土産を買い終えて、裏の庭園に出ました。晴れてきた空に向かってそびえ立つ尖塔と、ラ・メルベイユの堅牢な建物が静かに時の流れを刻んでいました。

( 庭園から見上げたラ・メルベイユ )
ラ・メルベイユの北面。

( ラ・メルベイユの北面 )
絶壁感が半端ではありません。湿り気のある強風が吹きつけるので、かなり苔むしています。修行で来ても厳しそうだし、お勤めで入牢したら、もっと厳しそうな雰囲気が出ていました。
ほんとに、観光客でお気楽に見物できてよかったな、です。

( 出口は坂道の途中。逆走不可。トンブレーヌ島が見えた )
我ながら改めて感じたのは、「モンサンミシェル修道院見学記って、誰が書いても同じようになってしまうな」、ということ。
見ごたえのある場面がいっぱいな大歴史ロマンの観光地なのか、綿密に計算されたテーマパークのシンボルタワーの内部見学なのか、楽しい中でも、少しだけ考えてしまいました。
2019年7月記 了
1 凡人なので場面の羅列
モンサンミシェル修道院:Abbaye の見学記は、知らず知らずのうちに、判で押したようになってしまいます。単なる場面の羅列に終始してしまいます。
「聖なんとか」、がどうのこうのと聞いたり、書いたりしても、すべて受け売り。本当は、そびえ立つ建物や、美しい列柱を目の当たりにして、「すげえ」とか、「きゃあ」と思っているのですが、気の利いた一言が思い浮かびません。
それだけ、観光客を圧倒する光景が展開する歴史的建造物です。

( モンサンミシェル修道院東面。要塞風の感じ )
先人のたゆまぬ努力の下に完成の日をみた、すばらしい建築遺産が何気にあるって、フランスは恵まれているなあと思います。日本にも、同じような遺産があるはずですが、お客様に、それを見せる工夫、感動してもらえるストーリーを作る工夫が全然、足りていないような気がします。
2 南のテラス、西のテラス
モンサンミシェル修道院を入ると、私たち観光客は、まず、一番高い一般公開地点である南のテラスまで上がります。ここで、シャトルバスが走る橋の方角の「下界」を見物します。
「けっこう、上まで登って来たんだ」
「足がガクガクだけれど、来た甲斐があった!」
眼下に展開する、今しがた通ってきたルートに思わず見入ってしまいます。写真は午後4時ごろの様子。対岸に帰る日帰り客が大勢シャトルバス待ちをしていました。小潮の日でしたので、干潟が開けていて、海に浮かぶモンサンミシェルの雰囲気は、みじんもありません。こればかりは、どうしようもないです。

( 南のテラスから、橋と対岸のホテル街を鳥瞰 )
次に、モンサンミシェル修道院の歴史的変遷をたどった模型の展示してある石造りの小屋を通って、西のテラスに行きます。

( 歴史的変遷を模型で展示した部屋 )

( 西のテラスから、修道院付属教会入口を眺める )
西のテラスは南のテラスの数倍広く、眺望も三方向に開けています。島周辺の広大な干潟や押し寄せる潮の満ち干、フランスの沃野を思う存分目に焼き付けましょう。

( 広い西のテラスからブルターニュ方向を見る )
3 姉妹岩のトンブレーヌ島を遠望
テラスをあちらこちら移動して、北の方角に視線を移します。
絶壁状になったテラスの壁の向こうに、トンブレーヌ:Tombraine 島が見えます。モンサンミシェルと同じ岩山の島ですが、高さは低く、横長の形です。干潮時には、モンサンミシェルからトンブレーヌまで歩いて往復する有料の干潟ツアーがあります。

( 西のテラスとトンブレーヌ島遠景 )
4 ラ・メルベイユ側面を見る
西のテラスの北からは、ラ・メルベイユ:La Merveille と称えられている四層建て石造ビルが目に入ります。この建物を北側の海上から見ると、修道院の高層建築がそそり立つ荘厳なシーンが見られるそうです。横から、ちょろっと拝んだくらいでは、その特徴的な外観が見えないので、観光客は見落としがちです。

( ラ・メルベイユ側面 )
5 修道院付属教会もゴシックづくり
順路に沿って、西のテラスに面して建っている教会に入ります。
見慣れたゴシック建築内陣の様子が目に入ります。アーチで支えられた高い天井がポイント。
「わあ、すごい」
「また、このタイプの教会ね」
皆さんは、どちらですか。私は、後者でした。
本当の背景はわかりませんが、それでも、質素な祭壇が、ここが静かな祈りの場であることを主張しているようで、好感が持てました。

( 修道院付属教会内部と、奥のシンプルな祭壇)

( 木造の天井 )
ここも、例のパリの聖堂と同じく、天井は木造です。
「火の用心!」
6 ラ・メルベイユの回廊庭園だ
教会を出て、順路に沿って石段を数段、降りると修道院内随一の光景と評判の高い「回廊の庭園」:cloitre が見えてきました。二重になった列柱上部に掘られた装飾が精巧で美しいです。オリジナルの彫刻は、ごく数点のみだそうです。現代修復技術のなせる技はすごいです。

( 回廊の庭園の二重列柱と彫刻 )

( 回廊の庭園のシンプルな美しさ )

( 回廊の庭園と教会の尖塔 )
庭の芝生は、以前は花壇。もっと昔は薬草園だったそうです。オリジナルが良いか、いまのようなシンプルなデザインがよいかは迷うところかも知れません。ここは、空中庭園みたいなものですから、下の階へ水漏れしないようにするのは大変とのことです。
回廊の壁の切れ目から、外をのぞいてみました。延々と広がる干潟の向こうに、ブルターニュの広大な平地が広がっていました。春の陽ざしに照らされた沃野が美しいです。

( 回廊の庭園から望むブルターニュ方向の平地 )
7 大食堂
回廊の庭園の奥が大食堂です。修道院として事実上機能しなくなって久しいので、どの部屋も、宗教的な雰囲気を残す石造りの空間です。解説や、かなりの想像力がないと、修道院時代のイメージはつかみにくいと感じました。

( 大食堂 )

( 大食堂の回廊につながる出入口 )
8 貴賓の間
続いて、階下におりると貴賓の間にでます。ここも、説明があってこそ初めて理解できる部屋でした。

9 フニクレールがあった
外海に面した貴賓の間から、本土側に順路をたどって進んだところに、牢獄時代に使われたフニクレールのレプリカがありました。ケーブルカーと同じ原理の、ケーブル式巻揚げ機です。牢獄の運営に必要な食糧や物資を巻き揚げたそうです。1回2トンの荷物を揚げたとのことです。日本語のガイドさんが、そう説明するのでしょうが、旅行記などでは姿、形に由来した「大車輪」のような呼び名が多いようです。

( 巻揚げ機の側面。レプリカ )

( 巻揚げ機のロープ。滑車の大きさも分かる )

( まさにフニクレール。ほぼ直登に近い絶壁 )

( 下から見上げたフニクレール )
なかなか、すごい装置です。
10 秘密の階段
真の巡礼者を迎え入れるための空間へ通じる階段。観光客は、お呼びでなさそう。

( 奥へ向かう階段)
続いて「騎士の間」。修道院時代は作業室、牢獄時代は何の部屋?

( 騎士の間 )
11 シャバの雰囲気に戻って
かつての「施しの間」は、ミュージアム・ショップ。私たちは、モンサンミシェルにお金を落とす側です。

( 「施しの間」であった現、お土産屋 )
モンサンミシェル修道院の公式ガイドブックをはじめ、修道院からみの土産は、ここでしか売っていないものも多いです。なんだ土産屋か、と通り過ぎない方がよい場所です。
12 再びラ・メルベイユ
お土産を買い終えて、裏の庭園に出ました。晴れてきた空に向かってそびえ立つ尖塔と、ラ・メルベイユの堅牢な建物が静かに時の流れを刻んでいました。

( 庭園から見上げたラ・メルベイユ )
ラ・メルベイユの北面。

( ラ・メルベイユの北面 )
絶壁感が半端ではありません。湿り気のある強風が吹きつけるので、かなり苔むしています。修行で来ても厳しそうだし、お勤めで入牢したら、もっと厳しそうな雰囲気が出ていました。
ほんとに、観光客でお気楽に見物できてよかったな、です。

( 出口は坂道の途中。逆走不可。トンブレーヌ島が見えた )
我ながら改めて感じたのは、「モンサンミシェル修道院見学記って、誰が書いても同じようになってしまうな」、ということ。
見ごたえのある場面がいっぱいな大歴史ロマンの観光地なのか、綿密に計算されたテーマパークのシンボルタワーの内部見学なのか、楽しい中でも、少しだけ考えてしまいました。
2019年7月記 了