やまぶきシニアトラベラー

気まぐれシニア・トラベラーの旅。あの日から、いつか来る日まで、かつ、めぐりて、かつ、とどまる旅をします。

ヴァル・ディ・ノートの鉄道とバス

駅の風景、ラグーザ、モディカ、ノート。

駅の風景、ラグーザ、モディカ、ノート     2018年9月訪問

1)  閑古鳥の鳴くラグーザ駅

シチリア南東部、ヴァル・ディ・ノートの街々を結ぶローカル線の駅を3カ所ほど訪れました。どの駅も、影のうすい存在でした。

まずは、ラグーザ(ラグーサ)駅:Ragusa。 ラグーザ県の県庁所在地、人口7万余のラグーザ市の表玄関のはずですが、誰も寄り付きません。街の中心から徒歩10分ほどのポポロ広場の奥に駅はひっそりと建っていました。

ラグーザ駅とポポロ広場Sep2018
( ラグーザ駅をポポロ広場より見る )

駅前のポポロ広場周辺は、近代建築のマンション街で、ヤシの木や棕櫚(シュロ)の並木がきれいですが、駅は、半分、草むしています。

寂しげなラグーザ駅Sep2018
( 草むしるラグーザ駅舎 )

駅舎の地下は市営駐車場ですが、鉄道利用者とは無関係。休日のため、駅周辺には人っ子一人いません。ラグーザの治安は悪くないので、ひょこひょこ歩いても不安感はありません。

ラグーザ駅構内ひっそりSep2018
( ラグーザ駅構内 )

駅の構内は、旅客列車のプラットホームの奥に、何本もの側線が並び、大きな保線基地になっています。かつては、貨物ヤードだったところを転用しています。

線路の向こうには、観光地区ラグーザ・スーペリオーレの市街地に傲然とそびえるカテドラーレの塔が見えます。直線距離は1km強、少し坂道がありますが、徒歩15分か20分程度です。

こんな場所に、のこのこやってくる物好きな日本人と思うでしょうが、ニッポン人は鉄道好きなので、旅行記にも意外とラグーザ駅のことが書いてあります。皆さん、不便さをそれなりに楽しんでシチリア鉄道の旅を敢行しています。拍手!

ラグーザ駅からカテドラーレ見えるSep2018
( ラグーザ駅構内保線基地の向こうにカテドラーレが見える )


2) モディカ駅は無人の始発と終着駅

次の日にはモディカ駅:Modica の様子をみました。路線バスに乗ってラグーザからモディカに移動しました。

モディカ駅は、時刻表を見ると、1日に数本の始発、終着列車が設定されています。付近一帯の要(かなめ)となる駅であると感じましたが、フタを開けてみると、ややびっくり。ラグーザと五十歩百歩の閑古鳥の鳴く駅でした。

モディカだって、人口4万5千人の小都市で、街の中心部は活気があります。けれども、鉄道の駅は影がうんと薄くなっていました。


モディカ駅Sep2018
( モディカ駅は旧市街のはずれにひっそりと )

モディカ駅は、旧市街中心部から徒歩15分ほどの場所ですが無人駅です。列車の発車時刻が近づいてきても、パラパラと数人の利用者が動いているだけでした。駅の待合室には、お馴染みのキップの自動販売機が鎮座しています。コカコーラの自動販売機みたいな色合いです。


モディカ駅待合室と自動券売機Sep2018
( 無人駅モディカ駅の待合室とキップ自動販売機 )

待合室の中は、きれいに手入れされていました。怪しげなやからがタムロしたり、落書きされることもなく、ほとんど見放された感じです。


モディカ駅で入換中の始発列車Sep2018
( 始発列車が車庫から出てきて転線中 )

その一方、列車の運転関連の施設は現役で、車庫や乗務員の宿泊棟などのそばには制服姿の職員が数人いて、のんびりと談笑していました。おそらく、みんな顔見知りなのでしょう。

雑草が多いとはいえ、線路も立派に改修されていて、公共交通機関を前向きに維持しようという姿勢を感じます。外見だけで判断すると、日本では特急列車も通るような高規格のレールが敷いてありました。


3)  無人のノート駅と観光客

駅体験の最後は、ノート駅:Noto です。

ノートもバロック建築の世界遺産を有する人口2万人強の小都市で、観光地区は、かなりの人出があります。この地方の中心都市シラクーザから30kmの近さにあるので日帰り観光客も多く、ニッポン人だって、見かけない日はないくらいの頻度で観光にやってきます。

けれども、駅はやっぱり廃墟寸前でした。立派な駅舎ですが、待合室も含めて建物の中へは一切、入れません。キップの自動販売機もプラットホームの壁にくくりつけられています。


ノート駅前がらーんSep2018
( 完全封鎖のノート駅舎 )

数少ない鉄道利用客は、駅舎の両側の隙間を通って、プラットホームへ出入りします。

ノート駅前から観光地区が見えるSep2018
( ノート駅から世界遺産のドゥオーモを目指す観光客 )

昼間の列車でノート観光に来る旅行者は、1列車で10人くらいいます。私も含めて皆んな、駅の向こうに見える世界遺産を目指して駅前通りの坂を昇って観光に行きます。徒歩15分か20分くらいなので、ちょっと地図を見られる程度ならば、列車利用でのノート観光も苦にはなりません。

ノート駅構内草ぼうぼうSep2018
( ノート駅のはずれから駅構内を見渡す )

帰りしなに、ノート駅の端まで歩いて行って構内を見渡してみました。草むした線路や朽ち果てそうな貯水タンクが、SL時代や鉄道華やかなりし時代の活気ある駅風景を思い起こせてくれました。

芭蕉の名句「夏草や、つわものどもの夢の跡」そのものの光景でした。

けれどでも、イタリア最南端の鉄路と駅はいまだに生きています。そして、老いた地元民と、好奇心旺盛な外国人観光客を迎え続けてくれます。


 2019年10月記        了



意外と快適なシチリア南部のローカル線


意外と快適なシチリア南部のローカル線
      2018年9月訪問

1) イタリア最南端の鉄道路線

シチリア島南端のローカル線に少しだけ乗りました。

シラクーザ:Siracusa からイタリア最南端の駅ポッツァーロ:Pozallo をとおり、シクリ:Siculi 、モディカ:Modica 、ラグーザ:Ragusa  、ヴィットリア:Vittoria  を経由してジェーラ:Gela を結ぶ約150kmの路線です。利用したのは、そのうちのモディカからシラクーザまでの、東半分の区間です。

この路線は、全線、単線非電化の典型的なローカル線です。区間運転の列車も含め、1日に8往復ほどの列車しかありません。そして、日曜祝日は全列車運休という徹底ぶりです。

シチリア島内鉄道路線図Sep2018
( シチリア島トレニタリア路線図。一番下の方が乗車区間 )

それでも、線路はコンクリート枕木で、走行中の揺れもあまりありません。列車は、直線区間では時速100kmくらいで快走します。駅の数も少なく、従前に比べて半分以上の駅が廃止になったような印象です。設備の維持管理コストを削減する一方で、スピードアップを図り、乗り心地も良くして少しでも鉄道の利便性を高めようとする努力を感じました。

ノート付近の軌道状態良いSep2018
( それなりに整備された線路。Noto付近 )

少なくともJRの三島会社のように、基金を作ったあとは、各社の経営手腕にお任せというアプローチの結果、ローカル線はボロボロになるばかりという状態ではないようです。最近のイタリア政府のローカル鉄道網に対する施策を知りたいなと思いました。


2) けたたましいローカル線の駅

私が利用したのは、モディカ始発8:34分、終点シラクーザ着10:12分のトレニタリア:Trenitalia の普通列車です。車両は、たった1両のディーゼルカー。列車は、ディーゼル・エンジンの爆音を響かせながら世界遺産ヴァル・ディ・ノートの街々をつなぐように走りました。

モディカ駅舎と橋Sep2018
( モディカ駅。始発、終着列車もあるが駅は閑散 )

モディカ駅:Modica は、沿線のちょうど中間付近にあるため、始発終着列車がありますが、駅の方は完全な無人駅。乗務員の宿泊設備や、車庫だけに人の気配がありました。

駅舎内には、お決まりの近郊区間用のキップの自動販売機があり、プラットホームにはキップの刻印機が取り付けられています。

モディカ駅ホームと高架橋Sep2018
( モディカ駅プラットホームから国道高架橋を見る )

午前8時すぎのモディカ駅のプラットホームです。私の背後では、始発列車に乗務予定の運転手さんや車掌さんがペチャクチャおしゃべりをしていますし、10人に満たない乗客も、思い思いの立ち位置で列車を待っていますが、全体にがらーんとしたムードが漂っています。治安は良いので、不安感や恐怖感は全く感じません。

駅の向こうに、モディカ一帯の谷を、100メートル弱の高さで跨ぐ真新しい国道高架橋が、いやでも目に入ります。19世紀の鉄道技術と、21世紀の道路技術の差を、まざまざと見せつけられているようなシーンでした。

少し経つと、車庫からディーゼルエンジンの音も騒々しく1両の列車が姿を現わしました。何回か線路を転線して駅舎に隣接したプラットホームに入ってきました。


モディカ駅で入換中の始発列車Sep2018
( 車庫から出てきたモディカ始発のシラクーザ行き普通列車の車両 )

みんな車掌さんにキップを見せてバラバラとディーゼルカーに乗り込みます。

ちなみに、こんなローカル線でも、ネットや駅の窓口で買ったキップはQRコード付きです。車掌さんは、自分のタブレットにQRコードをかざして検札します。瞬時に旅客情報が分かるし、データが蓄積されるので大変、便利です。

こういうやり方を目にするにつけ、紙のキップにスタンプを押したり、車内を回って、目視で乗客数を数えたりする日本古来の流儀は、ほほえましいのですが、何か時代遅れ、周回遅れのサービスのような気がしてなりません。

そして、何と、この車両は旧型車であるにもかかわらず冷房付きでした。9月とはいえ、昼間は暑いので、思わず「やったあ」と、心の中で喝采。ただし、冷房改造されていない旧型車両の方が多いので、ローカル線では、過度な期待は禁物です。

モディカディーゼルカー車内Sep2018
( 旧型ディーゼルカーの車内 )

ゆったりとしたクロスシートに腰掛けて待つこと15分、やっと、モディカ止まりの普通列車が10分ほどの遅れで到着しました。向こうは、ばりばりの連接式新型ディーゼルカーで、けっこう、かっこいい外観です。

トレニタリア新型DCSep2018
( モディカ止まりの普通は新型車両 )

10人ほどの乗客が降り、2,3人を除いて、こちらの接続列車に乗り移ってきました。私も含めてガイジン観光客が目立ちます。

紙面や画像では分からないですが、イタリアのローカル線では、列車が前の駅を発車すると、次の駅では、チンチンチン・・・・、と大音量で予告用のベルが5分くらい鳴り響き、けっこう、うるさいです。

「遥かなるローカル駅のベンチに座っていると、ただ聞こえるのは、田園をわたる風音のみ」、というようなロマンチックな表現があったとしても、列車到着前ならば絶対にウソです。旅情をそそらせるために、そのように書きたいところでしょうが、現実は安全優先、旅客への注意喚起第一です。


3) 最果てのディーゼルカーは走る

旧型ディーゼルカーは、さらにエンジンのうなりもけたたましくモディカ駅を発車し、一路、終点シラクーザを目指しました。モディカを発車した時点では20人弱の乗客がいました。バロックの世界遺産の街シクリ、イタリア鉄道最南端ポッツァ―ロ、同じく世界遺産の街ノート、農産物で有名なアボーラなどを通る約1時間40分の鈍行列車の旅です。

列車は、ポッツァーロやノートで10人弱の乗り降りを繰り返し、少しずつ乗客を増やしながら終点へ向けて走ります。イタリア鉄道最南端の駅ポッツァーロの前後では、車窓のかなり先に海が見えます。

のんびりしたムードで、つい、うつらうつら・・・・・・・。

ノート駅の普通ディーゼルカーSep2018
( ノート駅に着いた普通列車。ディーゼルカーの単行 )

世界遺産の街ノートの駅も完全な無人駅で、実にのんびりしたムードです。行き違い列車もないので、駅舎に沿った線路以外は錆付き草むしています。

それでも、ローカル列車は、あまり多くない乗客を乗せて走り続けています。

最後の停車駅、フォンターネ・ビアンケ:Fontane Bianche (白い泉、の意味)では、一気に10人くらいが乗り込み、列車はそれなりの賑わいになって終点シラクーザに着きました。いつの間にか10分弱の遅れを取り戻し、シラクーザには1分か2分遅れただけで到着しました。この鈍行列車からは15分くらいの接続時間で、特急ローマ行きに乗換えられるので、定時運行に努力しているようです。

シラクーザ駅のジェーラ行きディーゼルカーSep2018 
( シラクーザ駅のモディカ方面行き列車発着ホーム )

シラクーザ駅も、小ぎれいに整備されていました。線路も敷き直したようで、バラストも枕木も真新しい状態でした。

ノート、モディカ、ジェラ方面のディーゼルカーは、駅舎正面のプラットホームではなく、左の奥に進んだ位置にある西1番線から西3番線:Ouest 1--Ouest 3 に発着します。

カターニア、メッシーナ方面の列車が発着するプラットホームには、4両編成とか5両編成の列車が停まっています。たった1両のディーゼルカーから降りた我が身には、それを見ただけで、何か都会に出てきたような気分になりました。

シラクーザ駅本線方面Sep.
( シラクーザ駅の西ホームから本線ホームを見る )

乗り終えてみれば、なかなか味わいのあるイタリアのローカル線の旅でした。

                        2019年10月記                          了











ヴァル・ディ・ノートの鉄道時刻表2018

ヴァル・ディ・ノートの鉄道時刻表2018     2018年9月


シラクーザと、ノート、モーディカ、ラグーザ、コミーゾ、ジェラを結ぶ、JR相当のトレニタリア:Trenitalia  最南端の路線は、超ローカル線です。単線、非電化で、ルートは大回り、列車本数も少なく、車窓風景も、期待ほど良くありません。海は、かすかに見えるか見えないか程度です。

それでも、鉄道を使って旅行する人はいるし、ときには日本人だって乗ります。2018年9月現在の列車時刻情報です。

シチリア島内鉄道路線図Sep2018
( シチリア島のトレニタリアの全駅、全路線図 )

今回、紹介する路線は、地図の右下の路線。線路が逆U字型に大回りしている場所がラグーザです。

この路線図は、縮尺どおりなので、シチリアの鉄道網を理解しやすいです。ただし、エトナ山麓を回る路線は書いてありません。トレニタリアではない、別の私鉄だからです。

イタリアでは、かつて、日本人にもとっつきやすい冊子タイプの時刻表を駅の売店で売っていましたが、今はないようです。ネット時代ですから、そんな重たいものは、マニア中のマニアしか買わないので、当然、廃刊です。

列車の時刻表を調べるためには、トレニタリアのwebsiteを利用します。

http://www.viaggiatreno.it/viaggiatrenonew/index.jsp

利用区間や希望日を入れると、たちどころに列車時刻が案内されます。駅名を指定して列車の発着時刻を検索することもできます。各駅の発着時刻表は、現地の駅にも印刷して張り出してあります。

ラグーザ駅列車発着時刻表Sep2018
( ラグーザ駅の列車発着時刻表。白が到着:Arrivi 、黄色が発車:Partenze )

ピンポイントで、ある都市から別の街へ移動する場合は、websiteの時刻表検索サービスや、駅ごとの発着時刻表で事足ります。けれども、旅のおおまかな移動パターンを練るため、周辺一帯の列車時刻をいっぺんに見たいときは、不便です。

そのため、発着時刻表を主に読み込んで、シラクーザ以南の全列車の時刻表を書き出しました。駅も1駅を除いて書き出してあります。小さい駅をどんどん廃止したので、駅間は、たいてい10kmくらい離れています。

1枚目が、シラクーザ発の下り、2枚目がシラクーザ着の上りです。

SiraGela線時刻表Sep2018 (1)
       ( シラクーザ~ジェラ線時刻表2018年:下り )

SiraGela線時刻表Sep2018 (2)
     ( シラクーザ~ジェラ線時刻表2018年:上り )

驚きを超えるくらいの閑散路線です。そして、いわゆる高校生ダイヤです。

途中駅の時刻は、websiteの各駅時刻表をつなぎ合わせると、分単位の部分で、一致していない場合が多いです。5分くらいの誤差はあると思っても、大勢に影響はありません。イメージづくりのメモとしては有用です。

そして、実際、乗って見ると、鉄道旅行好きな人にとっては楽しい体験です。そうではない人にとっては、のちのちまで語り継いでもよいくらい貴重な体験だと思います。

※2019年にダイヤ変更があり、シラクーザ発11:00の下りが30分程度繰り上がっています。13:04発下りは13:30発に繰り下がっています。

                                  2019年10月記                     了



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