パリに呑まれるニッポン人観光客
パリにいるのは私たちだけ 2019年春
「ニッポン人の嫌いな日本人」が、まだまだ残っていたことに改めて気づきました。とても、寂しいことです。
【1 確認が苦手 】
エッフェル塔見学のときでした。
最近の様子をご体験された皆様は分かると思いますが、エッフェル塔は、とても混雑しているうえ、セキュリティチェックあり、事前予約制度あり、入場ゲートの位置がよく変わる人気観光スポットです。

( パリ観光の華のひとつ、エッフェル塔の美 )
そして、この手順や案内表示が、観光する側から見ると、あまり明確ではないのです。
私たちは、公式サイトから時間指定キップを事前購入した予約客でした。今のエッフェル塔は、土台を囲むように透明のフェンスが延々と張られています。フェンスの切れ目を探して、まずセキュリティ・チェックを受け、その後に入場ゲートへ行きつかなければなりません。
大勢の人が並んでいるセキュリティ・チェックの行列に近づくと、2、3列に一本の割合で立て札があり、「レストラン予約者レーン」、「時間指定予約レーン」、「キップ購入レーン」と3種類の表示があるものの、どの列がどれに相当するやら、あいまいです。
そこで、真ん中あたりの列の後ろに入り、前に並んでいた方に、
「すみません、ここは、時間指定予約キップの列ですか?」
とフランス語、英語の順で尋ねると、何と素敵なニッポン人カップルでした。
「私たちは、時間指定キップを持っていますが、前の方のキップは3時間先のようです」
と、日本人の方は、ご自身のキップの指定時刻を私たちにヒラヒラさせながら答えてくれましたが、顔には「実は、不安です」と書いてありました。3時間先のキップを持った方は、中南米からの旅人のようです。
これでは確認できません。
時間指定のキップは、予約時刻から30分限りで効力発揮。その30分間に限って、他の一般客を飛び越えて優先的に取り扱ってくれる制度ですが、遅刻したら一般客扱いになります。また、3時間先のキップは、現在時刻では、一般客の取扱いと変わりありませんし、厳しい場所では、「まだ早すぎます。入れません」と言われて、待機場所にさえ入れてくれないケースもあります。予約は、遅刻してもだめ、早く行き過ぎてもだめなのです。
結論として、前の方の2組の例だけでは、私たちの列が時間指定入場用の優先レーンであることは確認できません。

( ルイヴィトン本店。ここも入場制限がかかるときがあります)
【2 何とかしなければと思うタイミング 】
そのため、仕方なく、面倒くさいのですが、列の人混みを「すんません」とかき分けて、10人くらい前の人のところへ、にじり寄って、同じ質問をすると、「私は時間指定キップを持っていて並んでいます。そして、優先レーンだと思っています」との答え。
この状況ですと、8割方、予約者の列のような感じ。列も少しづつ進んでいるので、いまさら、似たような長さの「本当の」優先レーンを見つけて移動しても、スピードアップにはならない状況です。7対3くらいの信頼性で、このまま列に並んでセキュリティチェックを受け、そこで、何かあったら係の方と再交渉の方が、トータルで何とかなりそうです。
それで、戻ってくると、
「たぶん、おそらく、ここで大丈夫でしょう。前の方の人も『多分ここ』と言っていたから」
と状況報告。「日本人は、こういうとき、確かめる作業をしないんだよね」と、ぶつぶつひとりごとを言ったのが、先方様にはお気に召さなかったようです。その後は、口も開いてくれません。
①「日本人は」論で、他のニッポン人を誹謗中傷する昔風の口調に聞こえた。
②「私は正しい」と思って並んだカップルの男性の判断が確実ではないことを、私があばいてしまい、同行者に恥をかかせた。特にマダムの方が、パリ慣れしている感があり、男性が、もともと気おくれしていたところへ、男性の判断に不安材料があることが発覚したので、余計、頭に血がのぼった。
どうして、分からないなら分からないと素直に答えて、確認作業をしないのでしょう。
また、間違った列に並んだため、列の並び直しを指示されたり、入場時刻に遅れた場合、まとまって多くの人数で交渉に臨んだ方が得策です。入場ゲートを突破するまで、一時的な連帯を結成しようと思わないのでしょう。「多勢に無勢」作戦は、土産の値引き交渉などで、よく中国人がやります。マナーが悪いと成功率は低いのですが、おっとり型でルール重視のニッポン人がやると、意外に効果を発揮します。
【3 パリでメンツをつぶされる屈辱 】
「『男のメンツ』をつぶした、あなたは、すごく恨まれていると思う」とは、我がマダムの弁です。カップルの女性の方が、どう思ったかのコメントはありませんでしたが、「あの人たちは無礼な観光客だし、彼は意外と気弱だし、ああ、頼れるのは、やっぱり私自身しかないのね」と、思ったのではないでしょうか。
パリの誘惑は妖艶です。日本人に対して、とても強い作用を引き起こす場合があります。誘惑されてしまうと、ご本人たちのカップルやグループの周りに、一人として個人行動のニッポン人は存在しません。私たちは、彼らからすると、あってはならない存在なので、見て見ぬふりをするしかないのです。頭の中では、彼らはフランス人に取り囲まれて、ほとんど優雅に、でも、ときどきフランス語にうんざりしながらパリ観光を、不安感50%くらいで満喫しているのです。アメリカ人やアフリカ系の皆さまは、パリの国際性を演ずるエキストラみたいになるようです。

( パリ独特の街角カフェの優雅な雰囲気 )
「別に、パリは、あのカップルなんかに特に目をかけていないと思うけど」、と言うとケンカになるので黙っているに越したことはありません。

(La Joconde/モナ・リザ。別にあなただけに微笑んでいるわけではありませんことよ)
それとも、用意周到に事前予約をしていたにもかかわらず、トラブル発生でエッフェル塔に上れず、とブログに書く方が格好よいのでしょうか。ちょっと声かけするだけで、エッフェル塔観光なんか、何ら問題なくできます。「尋ねるは、いっときの恥、知らぬは、一生の恥」です。声をかけあってパリ観光、フランス旅行を楽しめばよいのではないでしょうか。
【4 優先レーンの取扱はどうなのよ 】
言い忘れましたが、本題の、一般レーンと優先レーンの区別はどうであったかと言うと、
「あまり列が長くない場合は、適当にセキュリティ・チェックの列に並ばせる」
だったと感じました。
おそらく、全体が長蛇の列になって、場の雰囲気がざわざわし始めると、間違えて並んだ人を、係員が声掛けして、本来の優先レーンに誘導したりするのではないでしょうか。フランス人は、こういうとき、意外とカンがよいので、長蛇の列の整理に取り掛かる確率が高いです。
2019年6月記 了
パリにいるのは私たちだけ 2019年春
「ニッポン人の嫌いな日本人」が、まだまだ残っていたことに改めて気づきました。とても、寂しいことです。
【1 確認が苦手 】
エッフェル塔見学のときでした。
最近の様子をご体験された皆様は分かると思いますが、エッフェル塔は、とても混雑しているうえ、セキュリティチェックあり、事前予約制度あり、入場ゲートの位置がよく変わる人気観光スポットです。

( パリ観光の華のひとつ、エッフェル塔の美 )
そして、この手順や案内表示が、観光する側から見ると、あまり明確ではないのです。
私たちは、公式サイトから時間指定キップを事前購入した予約客でした。今のエッフェル塔は、土台を囲むように透明のフェンスが延々と張られています。フェンスの切れ目を探して、まずセキュリティ・チェックを受け、その後に入場ゲートへ行きつかなければなりません。
大勢の人が並んでいるセキュリティ・チェックの行列に近づくと、2、3列に一本の割合で立て札があり、「レストラン予約者レーン」、「時間指定予約レーン」、「キップ購入レーン」と3種類の表示があるものの、どの列がどれに相当するやら、あいまいです。
そこで、真ん中あたりの列の後ろに入り、前に並んでいた方に、
「すみません、ここは、時間指定予約キップの列ですか?」
とフランス語、英語の順で尋ねると、何と素敵なニッポン人カップルでした。
「私たちは、時間指定キップを持っていますが、前の方のキップは3時間先のようです」
と、日本人の方は、ご自身のキップの指定時刻を私たちにヒラヒラさせながら答えてくれましたが、顔には「実は、不安です」と書いてありました。3時間先のキップを持った方は、中南米からの旅人のようです。
これでは確認できません。
時間指定のキップは、予約時刻から30分限りで効力発揮。その30分間に限って、他の一般客を飛び越えて優先的に取り扱ってくれる制度ですが、遅刻したら一般客扱いになります。また、3時間先のキップは、現在時刻では、一般客の取扱いと変わりありませんし、厳しい場所では、「まだ早すぎます。入れません」と言われて、待機場所にさえ入れてくれないケースもあります。予約は、遅刻してもだめ、早く行き過ぎてもだめなのです。
結論として、前の方の2組の例だけでは、私たちの列が時間指定入場用の優先レーンであることは確認できません。

( ルイヴィトン本店。ここも入場制限がかかるときがあります)
【2 何とかしなければと思うタイミング 】
そのため、仕方なく、面倒くさいのですが、列の人混みを「すんません」とかき分けて、10人くらい前の人のところへ、にじり寄って、同じ質問をすると、「私は時間指定キップを持っていて並んでいます。そして、優先レーンだと思っています」との答え。
この状況ですと、8割方、予約者の列のような感じ。列も少しづつ進んでいるので、いまさら、似たような長さの「本当の」優先レーンを見つけて移動しても、スピードアップにはならない状況です。7対3くらいの信頼性で、このまま列に並んでセキュリティチェックを受け、そこで、何かあったら係の方と再交渉の方が、トータルで何とかなりそうです。
それで、戻ってくると、
「たぶん、おそらく、ここで大丈夫でしょう。前の方の人も『多分ここ』と言っていたから」
と状況報告。「日本人は、こういうとき、確かめる作業をしないんだよね」と、ぶつぶつひとりごとを言ったのが、先方様にはお気に召さなかったようです。その後は、口も開いてくれません。
①「日本人は」論で、他のニッポン人を誹謗中傷する昔風の口調に聞こえた。
②「私は正しい」と思って並んだカップルの男性の判断が確実ではないことを、私があばいてしまい、同行者に恥をかかせた。特にマダムの方が、パリ慣れしている感があり、男性が、もともと気おくれしていたところへ、男性の判断に不安材料があることが発覚したので、余計、頭に血がのぼった。
どうして、分からないなら分からないと素直に答えて、確認作業をしないのでしょう。
また、間違った列に並んだため、列の並び直しを指示されたり、入場時刻に遅れた場合、まとまって多くの人数で交渉に臨んだ方が得策です。入場ゲートを突破するまで、一時的な連帯を結成しようと思わないのでしょう。「多勢に無勢」作戦は、土産の値引き交渉などで、よく中国人がやります。マナーが悪いと成功率は低いのですが、おっとり型でルール重視のニッポン人がやると、意外に効果を発揮します。
【3 パリでメンツをつぶされる屈辱 】
「『男のメンツ』をつぶした、あなたは、すごく恨まれていると思う」とは、我がマダムの弁です。カップルの女性の方が、どう思ったかのコメントはありませんでしたが、「あの人たちは無礼な観光客だし、彼は意外と気弱だし、ああ、頼れるのは、やっぱり私自身しかないのね」と、思ったのではないでしょうか。
パリの誘惑は妖艶です。日本人に対して、とても強い作用を引き起こす場合があります。誘惑されてしまうと、ご本人たちのカップルやグループの周りに、一人として個人行動のニッポン人は存在しません。私たちは、彼らからすると、あってはならない存在なので、見て見ぬふりをするしかないのです。頭の中では、彼らはフランス人に取り囲まれて、ほとんど優雅に、でも、ときどきフランス語にうんざりしながらパリ観光を、不安感50%くらいで満喫しているのです。アメリカ人やアフリカ系の皆さまは、パリの国際性を演ずるエキストラみたいになるようです。

( パリ独特の街角カフェの優雅な雰囲気 )
「別に、パリは、あのカップルなんかに特に目をかけていないと思うけど」、と言うとケンカになるので黙っているに越したことはありません。

(La Joconde/モナ・リザ。別にあなただけに微笑んでいるわけではありませんことよ)
それとも、用意周到に事前予約をしていたにもかかわらず、トラブル発生でエッフェル塔に上れず、とブログに書く方が格好よいのでしょうか。ちょっと声かけするだけで、エッフェル塔観光なんか、何ら問題なくできます。「尋ねるは、いっときの恥、知らぬは、一生の恥」です。声をかけあってパリ観光、フランス旅行を楽しめばよいのではないでしょうか。
【4 優先レーンの取扱はどうなのよ 】
言い忘れましたが、本題の、一般レーンと優先レーンの区別はどうであったかと言うと、
「あまり列が長くない場合は、適当にセキュリティ・チェックの列に並ばせる」
だったと感じました。
おそらく、全体が長蛇の列になって、場の雰囲気がざわざわし始めると、間違えて並んだ人を、係員が声掛けして、本来の優先レーンに誘導したりするのではないでしょうか。フランス人は、こういうとき、意外とカンがよいので、長蛇の列の整理に取り掛かる確率が高いです。
2019年6月記 了