闘うミラノ   2018年3月訪問

1) テロの恐怖

ミラノも、テロの恐怖と無縁ではありません。

2016年7月14日、フランスのニースで、トラックが革命記念日の花火大会の群衆に突っ込みました。2017年8月17日には、スペインのバルセロナの目抜き通りにクルマが突っ込み、犯人が自爆しました。いずれのテロでも100名以上の死傷者が出ました。

これからは、「何かの拍子に、ニッポンも標的にされることがある」、と考えるのが合理的だと思います。テロに立ち向かう強い意思と、自己責任の原則を忘れずに、暮らしや観光を楽しみます。

ミラノでも、私たち観光客が何気に通り過ぎる場所は、かなり厳重に見張られています。クルマで人混みに突っ込む無差別テロ、自爆テロを防ぐためです。また、ミラノのメトロも、本当は写真撮影禁止のようです。

電メトロ1号線Lima駅
( メトロの駅。地下空間は要警戒 )


2) ドゥオーモの防御

ドゥオーモは、ミラノのシンボルです。テロリストに、いつ狙いを定められるか分かりません。そのため、ドゥオーモ前広場に通じる入口には、すべてコンクリート製バリケードが置かれています。人々は、バリケードの隙間から出入りします。

Duomoガレリア前バリケード201803
( 落書きいっぱいのバリケード )

クルマで猛スピードで突っ込んできてもブロックされます。かなり大きなクルマでも、ガツンと当たればひっくり返るくらいの防御力はあります。

落書きがカラフルなので、野外芸術か何かだと思っていた人もいるようです。ツアーの添乗員さんも、はっきりと「テロ対策用のバリケードです。当局の努力に敬意を払ってください」と、説明した方がよいと思います。

もちろん、ドゥオーモ入場の際は、それなりのセキュリティ・チェックがあります。私が行く少し前に、当局の警備強化方針があったとかで、チェックがかなり細かくなったようです。それでも、まだまだイタリアンなムードに見えました。

Duomo警備兵士201803
( ドゥオーモ入口の警備兵 )

こうした光景に、ミラネーゼも、もう慣れっこになっているようですが、やっぱり、ないに越したことはありません。

Duomoガレリア横バリケード201803
( ドゥオーモ広場を防衛する別のバリケード )
Duomo前のバリケート夜゙2018
( ドゥオーモ前のバリケードと夜景 )


3) スフォルツェスコ城を護れ

軍人さんが護っているのは、ドゥオーモだけではありません。お城も護っています。「当たり前だろ!」と、言いたくなってしまいますが、今やスフォルツェスコ城は100%観光地です。

CS城の前の午後風景201803 (1)
( 昼下がりのスフォルツェスコ城前の広場 )

噴水の後ろの方で軍人さんが歩き回っています。警備姿を写真に撮ろうなどという気には、なかなかなれません。

CS城ライトアップと警備兵201803
( 女性兵士による夜警 )

夜の噴水を撮影していたら、夜警中の女性兵士が、偶然、映りこんでいました。かっこいいですね。


4) 治安と自由を反比例させないために

このような感じですから、これまでと比べて、街中のスリ・かっぱらい、押し売りや浮浪者は激減です。テロの恐怖が高まるのと反比例するかのように、日常の軽犯罪の確率は減っています。いくら狙いが違うからと言っても、大勢の軍人さんや警察官が闊歩している中で、気の弱そうなニッポン人や、純真なカナダ人などにつけ込むのは、やはりプレッシャーが大のようです。

その一方、何も悪いことをしていない側の私たちも、同時に監視されています。成熟した民主主義社会において、当局に、私たちひとりひとりの人生を四六時中、監視する権利はないはずです。

それを何とも感じないとなると、奥深いところの精神構造は、キタの方々とか、西隣りの大陸の方々と、いっしょだと言えましょう。「儲かるならば、当局から暗に陽にチェックされても仕方がない」というスタンスです。

観光地や繁華街の治安対策の名のもとに、私たちの自由やプライバシーが、かなり侵害されそうになっているのは不安です。自由に生きられるという歓びを、もっと大切にしたいと、私はアピールします。


                                                   2018年6月記       了