FEVEバルマセダ線の思い出  1986年から1990年

1) 狭軌鉄道の栄える都市

スペインのバスク一帯では、線路の幅が1000ミリの狭軌鉄道が大活躍しています。

ビルバオのメトロとトランヴィア、バスク鉄道ことウスコトレン、それにスペイン国鉄系のFEVEの4社です。

ニッポンの鉄道さながらの狭軌鉄道王国です。

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( バスクの鉄道の多くは狭軌。イメージ画像 )

ふと見ると、線路や架線の張り方が、日本の郊外電車やローカル線風景と、何と似ていることか。
バスクの旅が、とても心地良く、安眠できる日々になるのが、こんなところからも納得できます。


2) コンコルディア駅舎は見るばかり

バスクの狭軌鉄道4社のうち、日本人にもっとも馴染みがうすいのがFEVE:フェーベ、でしょう。

FEVEは、ビルバオから西の北部沿岸に長距離路線網を持っています。ほとんどが、1日に数往復のローカル線ですが、ビルバオやサンタンデルの都市近郊では、30分から1時間おきに電車があり、中都市の通勤通学路線となっています。

FEVEは、スペイン語の「スペイン狭軌鉄道」の略称。現在では、スペイン国鉄の、RENFEオペラドーラという会社の一部門です。

私は、縁あってFEVE近郊区間のビルバオ、バルマセダ間:Bilbao -- Balmaseda に、かつて乗りました。2000年代に電化され、ビルバオ市内のルートも変わりましたが、始発駅は、コンコルディア駅:Concordia のままです。

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( 日本人旅行者にも人気のFEVEコンコルディア駅舎遠望。2017年 )

コンコルディア駅舎は、緑色の縁取りと、細かい模様、優雅なアーチで、日本人のビルバオ旅行者にも、そこそこの人気。半分くらいの方は、「あの建物は何だ」で、終わっていますが、目をひくことは確かです。

とても、嬉しい限りです。
「駅舎は、変わらなくてもいいですが、サービスは変わってもらわなくちゃ」

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( FEVEコンコルディア駅舎南口とネルビオン川 )

コンコルディア駅は、ネルビオン川沿いの斜面に建っているので、川沿いのベンチに腰掛けると、市民さながらに憩いのひとときを過ごせます。ぼおーっとしながら、駅舎やビルバオの旧市街を眺めましょう。


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( FEVEコンコルディア駅のRENFEアバンド側出入口 )

コンコルディア駅も、反対側のアバンド駅側の出入口は、現代風です。

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( FEVEコンコルディア駅中央改札と切符自動販売機 )

駅舎内と改札口の様子です。通勤通学時間帯以外は、利用者も多くないので、がらんとしています。

FEVEも、バスク州政府の公共交通機関支援策がないと、とっくに廃止されたかも知れません。先進国のローカル鉄道や、路線バスの在り方について、得失をわきまえながら、ヨーロッパ流の取り組み方を学ぶことも、必要ではないでしょうか。


3) ディーゼルカーでがったんごっとん

1990年代まで、FEVEのバルマセダ線も非電化でした。ディーゼルカーが、ビルバオ中心部から、エンジンのうなりを立てて発車していました。

FEVEビルバオAchurli駅DC1990年7月
( コンコルディア駅に停車中のFEVEディーゼルカー。1990年7月 )

狭軌鉄道なので、車両はRENFEの車両より小ぶりでした。かわいい感じの車両です。
車両は、どれも2両編成で1組です。

FEVEディーゼルカーバルマセダ近郊1990年7月
( アラングレン - バルマセダ間を走るFEVEの下り普通列車。1987年9月 )



車両は、数形式あり、いちばん新しいものは、ステンレスカーでした。夕方の通勤通学時間帯は4両編成の列車もありました。

デザインが当たり前すぎるので、日本のディーゼルカーと同じムードです。バスクの、真面目過ぎる実用指向が感じられます。ちょっと、つまらないかも。

緑したたるバスク西部の山あいを、ディーゼルエンジンの音を響かせて走る列車は、日本のローカル線風景とそっくりです。狭い平地に点在する家庭菜園のブドウ棚や、野菜畑も、よく手入れされ、ゆったりとした、ゆとりある空間を作り出していました。



4) バルマセダに分け入る

終点のバルマセダ:Balmaseda 駅は、小都市の拠点駅の風貌です。ビルバオから50分ほどかかります。かろうじて、ビルバオ通勤圏です。

バルマセダ駅は、大きくはないけれども、人の気配も、それなりにあります。貨物も取り扱っていたので、たまに石炭を満載した貨車が、構内を移動していました。

時間がゆっくり流れている駅に降りると、ほっとします。

FEVEバルマセダ駅まだDC1990年7月 (1)
( バルマセダ駅で発車待ちの上りビルバオ行きディーゼルカー。1986年9月 )

FEVEバルマセダで入換中のDL石炭貨物1990年7月
( バルマセダ駅で入換中の石炭貨物列車とディーゼル機関車。1986年9月 )

現在では、このバルマセダ線も全線電化され、ビルバオの近くは複線、地下トンネルで走り抜けています。貨物列車もなくなったようです。これからも、住民の足として、活気を持って走り続けてほしいものです。

次回は、ちゃんと電車でバルマセダまで往復して、時の流れをしみじみと見つめたい。

2018/3月記