プレ・ループは熱かった   2019年10月訪問

アンコールワット遺跡めぐりの「大回りコース」の、はじめか終わりに位置するのがプレ・ループ:Pre Roup temple  遺跡です。

写真のとおり、見た目は平凡な赤っぽい石積みの、半分崩れかけたヒンズー寺院遺跡。最近では、夕日が見られるスポットとして、団体さん中心に夕方の訪問客が増えているようです。けれども、実際の夕日風景は期待ほどではなかったという感想が多いです。

「あたしは、ここしか見ていないから、人気のプレア・カーンと比べられませんわ」
「写真を見て比較しても優劣は感じられますよ」
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 ( プレ・ループ遺跡正面 )

ここの主塔へ昇る階段は、見た目に反して意外と急傾斜でした。次の写真のように、実際に取りつくと直登気味になります。上から降りてきたカップルも、びくびくしながら、一歩一歩、踏みしめるようにゆっくりと足を出していました。
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( 急傾斜で熱いプレ・ループ遺跡の正面階段 )

そして、真昼間にくると、この階段、手をつけないくらい熱いのです。

「あちっ!」

私も、階段についた手を思わひっこめてしまいました。石の表面が、焼けるように熱かったのです。10月でも、カンボジアの太陽の熱量は正午前後はとても強烈です。空気も暑く、石も炙られていました。対策として、指先だけを階段に置くようにしてバランスを取りながら急階段をよじ昇りました。

やっとのことで最上部のテラスに上がると、暑い中にも、のんびりムード。適当な場所に腰を下ろして、汗が引くのを待ちました。崩れかけ、雑草にまとわりつかれ、ぼろぼろになりかけた寺院跡の様子がよく分かりました。
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( 上のテラスから下のテラスや周囲の森を見る )

昼間のプレ・ループには、ほとんど観光客がいません。静かに心を落ち着けて遺跡の様子を見ることができました。解説版や照明はもちろん、柵もほとんどありません。放置された遺跡感がたっぷりと出ています。たまに、一体か2体、崩落の少ない彫像があって、ちょっと目を惹きます。下草も刈ってあるので、管理されているんだなということが分かりました。

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( 原型を残しているライオンの彫像 )

正直、当局は、2流、3流の寺院遺跡まで、ていねいに修復する余裕も気力もないと思います。アンコールワット遺跡全体は、とても広く、遺跡や遺構が掃いて捨てるくらいいっぱい散在しているからです。

こんなふうに荒れた感じがアンコールワットの魅力のひとつだと、私は思いました。

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( 崩れ去り、赤茶色の石と摩仁グルマのデザインの窓が残った壁 )

遺跡の下の方の回廊一帯は、ほとんど壁だけしか残っていません。じりじりと炎暑の中にたたずむ姿に無常観が出ています。

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( ただただ太陽に照らされてたたずむばかりのプレ・ループ )

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(プレ・ループ遺跡と主塔を側面から仰ぎ見る )

汗が収まるのを待って、遺跡の上下や周囲を一周して、外に出てきました。青い空と白い雲のしたに無言で立ち尽くしている塔の数々が、最後に印象に残りました。

2020年3月記    了