やまぶきシニアトラベラー

気まぐれシニア・トラベラーの旅。あの日から、いつか来る日まで、かつ、めぐりて、かつ、とどまる旅をします。

2020年07月

シラクーザ考古学公園のローマ時代遺跡を見る

シラクーザ考古学公園のローマ時代遺跡を見る    2018年9月訪問

この遺跡公園には、ローマ時代の遺跡も2つあります。

100mくらいはあろうかという長い祭壇と、その隣の楕円形の劇場です。イタリア観光をすると、ローマのコロッセオを筆頭に、あちらこちらでお目にかかる定番の遺跡です。どちらも青空の下、ちょぼちょぼと生えた夏草に半分覆われていました。

最初は、「イエローネ2世の祭壇: Ala di Ierone Ⅱ 」という呼び名の遺構です。解説によれば、100頭くらいの牛を生贄に捧げることもあったとか。それだけ、大掛かりな儀式をして大判振る舞いができるくらい繁栄していたのだなあと感慨深げに眺めました。訪問当時は、遺構保護のためらしく、柵越しに眺めるだけでした。

シラクーザネアポリスイエローネ2世の場Sep2018
( イエローネ2世 ( ヒエロン2世 )の祭壇跡 )

その隣りにあるのが、楕円形型の劇場:Anfiteatro Romano です。考古学公園の目玉であるギリシャ劇場に比べるとこじんまりしています。
シラクーザネアポリスローマ円形闘技場Sep2018
( ローマ劇場跡全景 )

こちらは、ギリシャ式の「大劇場」に対する「小劇場」のような感じだったのでしょうか。役者の細かい表情を見て楽しんだり、サドンデスの決闘ゲームのような臨場感あふれる出し物向けなら効果があったのだと感じました。
シラクーザローマ競技場各種201809 (1)
( ローマ劇場跡の観客席から舞台を見る )

いまは見捨てられ、観光客もほとんど入ってこない遺跡に座って2000年以上前の様子を思い浮かべていました。暑いので、ペットボトルの水を飲む休憩タイム兼です。
シラクーザローマ競技場各種201809 (4)
( ローマ劇場跡。舞台へ向かう、くぐり抜け付近 )

ローマ時代の建築技術は優れていたと言われますが、それでも、何のメンテもせずに2000年放置すると、こんなふうになるんだということも分かって、ちょっぴり勉強になりました。

「じゃ、次に行きましょう」

2020年7月記

シラクーザ、縄ない職人とか、天国とかって何だ

シラクーザ、縄ない職人とか、天国とかって何だ   2018年9月訪問

シラクーザの考古学公園には、和訳すると、何だか訳の分からない見物スポットがあります。

順路に沿って、人がぞろぞろ行き来している遊歩道を歩いていると、出くわします。

まず、「縄ない職人の洞窟:Grotta dei Cordari」。”グロッタ・デイ・コルダーリ”という発音です。

日本語訳はもちろん、イタリア語で耳にしても、何のことだか、さっぱり分かりません。実物を見ると、自然の洞穴を人工的に削って広げた洞穴です。日本語でも、よく仏教用語などを援用して「阿弥陀穴」とか命名していると、日本人には雰囲気が伝わっても、それを外国語で訳して聞いたガイジンが、何となく分かるということはないだろうな、と思うのと同様な気がしました。

シラクーザネアポリスコルダーリの洞窟Sep2018
( 和訳では「縄ない職人の洞窟」という、洞穴 )

「縄ない職人の洞窟」は、”キケン、立入禁止”でした。まあ、一応見たということで一件落着です。

続いて、洞窟の周囲に広がる石切り場跡は、「天国の石切り場:Latomia di Paradiso」という名前だそうです。もちろん、ここ400-500年来の命名です。次の写真のように、ローソク状の切り残しがあったりする、藪のような一帯ですが、ギリシャ時代の遺跡ということで見物スポットになっているようです。

「ふうん」という感じで、木洩れ日の中を散策しました。「これも見物したぞ、チェック」って感じです。

シラクーザネアポリス切り残しSep2018
( 和訳では「天国の石切り場」という採石場跡 )

「せっかくシラクーザ見物に来たのですから、できるだけあちこちに顔を出しました、ハイ」、ということで。

2020年7月記                             了

シラクーザのディオニシオの耳の中で

シラクーザのディオニシオの耳の中で   2018年9月訪問

ギリシャ劇場を出て、次は「ディオニシオの耳: Orecchio di Dionisio 」と呼ばれる洞窟に向かいます。

この洞窟は、写真のように、天井がとても高い割に奥行きがあまりない構造です。

シラクーザネアポリスディオニシオの耳入口Sep2018
( ディオニシオの耳の入口 )

実際に洞窟の入口に来ると、耳の形をしているんだなということが実感できます。
どうして、このような形の洞窟ができたかは、いっさい解説がありません。耳のことばかりに気を取られていて、水の流れや、岩がえぐり取られるまでの長い年月のことは忘れてしまったようです。

洞窟に入っていくと、外の暑さを忘れる程度に涼しい空気が充満しています。ほっとするひとときです。

シラクーザネアポリスディオニシオの耳の天井Sep2018
( ディオニシオの耳の天井を見上げて )

見上げるばかりの高さに、鋭角の天井が、奥の方に向かって、うねうねと続いています。何だか、サザエの穴に入って行くような気になりました。浅くとぐろを巻くように、うねっている感じです。

シラクーザネアポリスディオニシオの耳の中Sep2018
( グループ客は、ついついハミング )

中は、観光案内に書いてあるとおり、見物客の声が響きます。みんな普通にしゃべっているようです。拍手をする人もいますし、奥の方からもエコーが聞こえてきました。たぶん、ドイツ人ツアー客でしょうが、10人くらいのグループが讃美歌のようなリズムの曲を歌って、周囲から、やんややんやの喝采を浴びていました。一人かカップルだったら、プロ並みの自信がない限り、絶対に歌など唄わないでしょう。群衆心理は、どこでも同じなんだなと、妙に納得したことを覚えています。

洞窟の行止りまで行って、折返してくるころには、炎天下のギリシャ劇場でかいた汗もすっかり引いていました。
「さて、そろそろ、次の見物先に行くか」

2020年7月記                            了


シラクーザのギリシャ劇場跡に立って

シラクーザのギリシャ劇場跡に立って   2018年9月訪問

シラクーザは、ギリシャ時代にはとても栄えた都市だったと観光案内などに書いてあります。だから、走れメロスの物語も生き生きとしてくるし、天才数学者が現われても不思議はありません。

現在の、海辺の中規模観光都市シラクーザの実際を見ても、なかなかピンときません。

「こんな中小都市に君臨していた暴君と、近郷近在の青年の心の迷いと友情を題材にしたって、田舎芝居みたいだよね」と、言われて終わり。それが、「ギリシャ人の都市で1,2を争う繁栄を謳歌している街で起こった話です」と切り出すからこそ、一転して緊張感のある物語となるのです。

シラクーザネアポリスギリシャ劇場見下ろしSep2018
( ギリシャ劇場と遥か先の地中海を見渡す )

シラクーザの伝統的な観光名所、考古学公園に入り、半円形の野外劇場と、その向こうに広がる紺碧の地中海と青空を眺めると、かつて繁栄した都市のざわめきが脳裏に浮かんできました。

解説によると、現存しているなかでは最大級の劇場遺跡だそうです。また、観光イベント用に年に数日、現役で使われているとのこと。石造建築の利点を生かした集客アイデアです。

順路に沿って、まず、上の方へ向かうと半円形の劇場の頂上に出ます。放射状にすぼんだ劇場が見事な弧を描いて横たわっています。特段、見学順路が設けられているわけでもありません。みんな、思い思いにロープで仕切られた通路に入り込み、階段を昇り降りしたり、石造りの座席に腰をかけて2000年以上昔の華やかなりし時代を思い浮かべているようです。

シラクーザギリシャ劇場上座201809
( 劇場の中段付近から最上部を見上げる )

さすがに、舞台の周りは立ち入り禁止ですが、最上部の方は、どこでも出入り自由に近い状態です。けっこう、太っ腹といえばそれまでですが、上の方は傾斜が急なので、高齢者中心の見学客は、歩きやすく整備された通路を行き来するようです。

シラクーザギリシャT石座席ごつごつ201809
( 炎天下をゆっくり行き来するシニアツアー客の面々 )

シラクーザギリシャT見上げと糸杉201809
( 劇場の舞台裏付近から客席方向を眺める )

私は、左右の階段を回り込むようにして降りてきて、舞台裏付近から観客席を眺めてみました。出演者目線ですが、思ったより急傾斜感はありません。それでも、扇形に座ったお客がぎっしりと並び、自分に視線を浴びせるなかで、芝居をしたり演説をするのは、さぞ快感でしょう。おそらく、音の響きもよいはずです。

画面の右に生えている糸杉は、ここ200-300年のものでしょう。ですから、往時において舞台の視界をじゃますることはなかったはずです。

雨の少ない暖かい気候の土地だからこその野外劇場なんだということを、改めて実感しました。それと反対に、日本のような、高温多湿かつ緑いっぱいの土地では、きっと薪能のように、森閑とした暗闇をバックに、かがり火で赤々と照らされた舞台に登場するのが最も効果的なのかも知れないなとも感じました。

9月とはいえ、まだまだ暑い陽射しのなか、だんだん、ばてて来ましたので小1時間ほどで劇場見学を終わりにしました。

2020年7月記                              了


シラクーザのギリシャ遺跡へ向かう

シラクーザのギリシャ遺跡へ向かう   2018年6月訪問

シラクーザのギリシャ遺跡は、街の中心部から1.5kmほど北上した丘の上にあります。

あたり一帯は、広大な「考古学公園:Parco Archeologico della Neapolis」となっていて、シラクーザ観光の目玉のひとつです、というよりは、オルティージャ島の復興や映画マレーナがヒットするまでは、シラクーザで唯一の観光スポットでした。

シラクーザ観光案内所パンフ本土201809
( シラクーザ観光案内所配布の市内地図 )

公園は、観光案内所の地図を見ると、駅から北東方向に位置しています。駅から歩いて20分強、オルティージャ島のドゥオーモからだと徒歩45分くらいで着きます。のんびりと歩くもよし、タクシーで行くのもよし、分かりずらい路線バスを乗り継いで行くのもよしです。もちろん、団体さんはツアー専用バスで、ひゅうー、っとひとっ走りです。「いいなあ」

シラ考古学公園が見えて201809
(  奥の緑がギリシャ遺跡の端っこ )

私は、朝の涼しい空気のなかをてくてくと歩いて行きました。地図を見ながら駅裏のジェローネ大通り:Corso Gelone に出て、突当りを目指して10分ほど、緩い上り坂を歩くと考古学公園の南端に至ります。左右は、コンクリート造りのマンションやホテルが並ぶ近代的な市街地です。

シラクーザギリシャ遺跡公園入口付近Sep2018
( 地中海風の松林が続く遺跡内の道 )

「やったあ、着いたあ」と、ぬか喜びしてはいけません。公園の端から、お目当てのギリシャ劇場入口までは、さらに5-6分かかります。日本のそれとはちょっぴり異なる樹形の地中海松の並木を進んで行くと、やっとこさ入場口に着きました。陽も高くなってきたので、かなり暑くなっていました。「ふうー」

シラクーザ考古学公園観光バスT201809
( ツアーバス乗降用の大駐車場と奥の公園入口 )

上り坂の右手がツアーバス専用の大駐車場兼お土産センター、左手が個人客用入場券売場と、遺跡入口です。

シラクーザネアポリス考古学公園団体バス土産物売場Sep2018
( ツアーバス乗降場にはお土産屋がいっぱい )

大駐車場をL(エル)字形に囲んでぎっしりと並ぶお土産屋さんは圧巻。シラクーザと言わず、シチリアのロゴを付けた土産もぎっしりと並んでいます。これぞ観光地の気分がたっぷりと味わえます。

私も、暑かったので、まずお土産屋さんのひとつでアイスを食べ、少し涼を取ってからキップを買って入場しました。


シラクーザネアポリス考古学公園入口Sep2018
( 考古学公園入口の個人客用入場券売場 )

ツアーバス駐車場の出入口から道を挟んだ向かいが考古学公園の本当の入り口です。ふらふら中に歩いていくと、左手に入場券売場がありました。単独券もあれば、近隣の考古学博物館などとのセット割引券もあります。お好みで買いましょう。私は、2館共通券、大人1名17ユーロ也を買いました。もちろんクレジットカードが使えます。この辺は、日本の観光地よりIT化は2-3歩進んでいますが、入場料の相場はやや高い印象を受けました。

皆のあとについて、ギリシャ遺跡に入りましょう。

古代史マニアではなくとも、「現存する中で最大級のギリシャ劇場」なんて言われたら、入る前からわくわくします。

2020年7月記              了


昼間も夜もディアヌの噴水

昼間も夜もディアヌの噴水   2018年9月訪問

「シラクーザと言えばアルキメデス」というのは日本人観光客の定番の発想です。現代イタリア語では、アルキメデ:Archimede  です。けれども、街中では、この大数学者の名前はあんまり見かけません。

昔も今も、一般人にとって、数学はあんまり関わりたくない科目のようです。

そのなかで、アルキメデを冠した数少ない場所が、ドゥオーモから北へ5分ほど歩いた場所にあるアルキメデ広場:Piazza Archimede です。オルティージャ島の、ちょうど、おへそあたりの場所です。徒歩で本土からドゥオーモへやってくると十中八九通ります。
アルキメデ広場昼下がり
( アルキメデ広場とディアナの噴水)

この広場の真ん中に鎮座しているのが「ディアナの噴水:Fontana Diana」です。周りにソテツの植え込みがあって、シラクーザが南の国にあるんだよ、ということをアピールしています。

夏の昼も夜も、ちゃあんと水が出ています。昼間はクルマが多く、音や排気ガスで少しばかりげんなりしますが、水のある風景に少し癒されます。

オルティージャD噴水前を歩く独ツアー客暑い
( ディアナの噴水を横目に歩くドイツ人ツアーご一行さま )

私が通ったとき、ちょうど反対方向から団体さんが歩いてきました。整然としたグループでしたので、遠目には日本人の皆さまかなと期待半分で待っていたのですが、近くに来たらドイツ人ご一行さまだということが判明しました。
「ありゃま、ちょっと残念」

写真のように、ドイツ人の皆さまは、ディアナの噴水の横を歩いているというのに、見向きもしません。画面の右側に来ると、噴水前に立てば順光になります。ちょいと立ち止まって記念写真を撮ろうというメンバーがいてもおかしくないのですが、前を向いて淡々と前進しています。
「さっき寄ったから、もういいの」、だったら私の勘違いで済むのですが、本当かどうか確かめることもありませんでした。

オルティージャダイアナ噴水夜景Sep2018
( ディアナの噴水のピンク色のライトアップ )

ディアナの噴水は、日が暮れると濃いピンク色にライトアップされます。セクシーなディアナ神のイメージをを直接的に表現しているし、夜の街は色彩感に乏しいので、とっても好ましい感じです。けれども、噴水周りにいたのは、一匹狼のような旅人や、勝手知ったる家族連ればかり。

せっかく、走れメロスとアルキメデスのシラクーザに来たのですから、「ニッポン人よ、もっと出歩いてシラクーザの昼も夜も満喫してね」、とつくづく思いました。

2020年7月記                  了
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