やまぶきシニアトラベラー

気まぐれシニア・トラベラーの旅。あの日から、いつか来る日まで、かつ、めぐりて、かつ、とどまる旅をします。

2019年03月

ミラノ市電古豪1500形ガタゴト

ミラノ市電古豪1500形ガタゴト  2018年3月、9月訪問

ミラノ観光中の市電風景で、記憶に残るのは、新型車両よりもレトロな車両ではないでしょうか。

「えっ、こんな古い電車が、まだ走っているの?」
「おしゃれなイタリアのイメージに会わないわあ」
と、いう感じですかねえ。

この古い車両は、1500形と言って、なんと初登場は1928年だそうです。
約500両製造されたうちの150両ほどが、まだまだ走り続けているのだそうです。

198808ミラノ市電と街並み (2)
( 1990年ごろの1500形。いまと同じ )

1500形は、昔も今も、変わらぬ走りを見せてくれます。

電Tミラノ1500形デアンジェリ201809 (1)
( ミラノ市電の古豪1500形。デ・アンジェリ付近にて )

1500形は、観光ポイントでも見られますし、ミラネーゼの生活エリアでも目につきます。
ガーガー、グァングァン、ギーギー・・・・と、昔風のエンジン音や機械音をうならせて、でも、背筋を伸ばすような雰囲気で走ってきます。

「元気老人、生涯現役、矍鑠(かくしゃく)たる翁・・・・・・」という存在感に、思わず見とれてしまいます。

電Tミラノマジェンタ通19系統1500形走る201803
( マゼンタ通りを行く1500形 )

電Tミラノ1500形センピオーネ201809 (2)
( センピオーネ大通りの芝生軌道を走り去る1500形 )

 ここ4-5年ばかりの間に、カラーリングが濃いオレンジ色から柔らかいオレンジ色系に変化しています。

 広告電車、ラッピング電車も増えました。レトロな存在感を活かして、イベント用に使う1500形もあるとのことです。

電Tミラノ1500形センピオーネ201809 (1)
( 広告塗装の1500形がやってきた )

電TミラノLambrate19系統1500形と緑化軌道
( むらさき色に塗られた1500形もあります。ランブラーテ駅前にて )

電Tミラノ5月24日広場1500形発車待ち201803
( おしろいをべったり塗られたような1500形。5月24日広場にて )

電Tミラノ19系統センピオーネ付近走行 (3)
( 古豪1500形は、新進のオフィスビル、イゾザキ・タワーを横目に走ります )

どこを走っていても、市電のある風景は絵になります。ミラノならではの雰囲気にひたりながら、街中さんぽ、ぶらぶらショッピングも、また、たのしからずやです。

2019年3月 記             了


ミラノ市電のガントレット線路を見よう

ミラノ市電のガントレット線路を見よう   2018年3月

1) ユニークなガントレット線路

ミラノ市電の線路には、「ガントレット: gantlet 」と呼ばれる線路配置がありました。そのほかにも終点ループ線や、三線分岐など、日本ではめったに見られない線路配置がいっぱいあります。

ガントレットは、複線の線路を単線のようにまとめたものです。お互いの線路は、あくまで別々です。せまい通りや、せまいトンネルを通過するとき、分岐器をつくらず、身をよじるようにしてすり抜ける感じです。

ナヴィリオ運河の東隣にある " 5月24日広場: Piazza XXIV Maggio ”の南側、”ティチネーゼ門:Porta  Ticinese”を正面に見る交差点にガントレットはありました。

電Tミラノ5月24日広場線路交錯201803
( ティチネーゼ門と輻輳する市電の線路 )

横断歩道上から線路をまじかに見ると、二組の線路が狭い間隔をおいて単線の線路のように敷いてあります。

電Tミラノ5月24日広場ガントレット201803
( ガントレットを近くで見る )

左側は、広場をループ状に周りながら発着する市電がぐるりと回るための線路です。右側は、門を迂回して、奥のドゥオーモ方向に上る電車が通る線路です。

日本では、かなり前にガントレットはなくなってしまいましたので、レアな見ものです。私の記憶では、オランダのアムステルダム市電の線路にもガントレットがありました。

自由自在に線路配置を考えたヨーロッパの市電は、都市ごとの味わいが出ています。軌道の統一規格を作って線路の敷設コストを安くしたり、メンテを簡素化できないので、日本では受容されにくそうなやり方です。


2) 終点ループ線

ヨーロッパの市電の線路にあって、日本の市電に皆無なものが、終点のループ線です。

日本では、「電車は終点では折返すもの」と信じていますが、それは狭い視点です。

多くのヨーロッパの都市では、市電は、終点でループ線をくるりと回って、もと来た方向へ戻ります。ミラノ市電も終点がループ線のパターンですから、運転席は前の1カ所のみ。電車は、絶えず前進し続けます。

ミラノ市電に乗ったら、是非、車両の先頭と一番後ろを観察してください。最後尾は、立ち見の展望席のように何もないスペースになっています。

下の写真は、ミラノのサッカーの聖地、サン・シーロ・スタジアム前の終点のループ線風景です。
スタジアムの開業に合わせて市電を延長し、とても広い駅を設置しました。試合終了時には、何本ものループ線上に10組以上の市電が待機し、数万人の観客を次から次へとさばきます。

電Tサンシーロ前ループ線配線201803
( 終点サン・シーロ停留所。普段はがらーん )

電Tサンシーロループの電車
( サン・シーロのループ線をぐるりと回って都心部へ向かう市電 )

3) 三線分岐

ミラノ市電のポルタ・ジェノバ駅前には、一本の線路から三方向に分岐している「三線分岐」と言われるポイントがあります。ほかの場所にもありますので、三線分岐は、ミラノでは珍しい線路配置でも何でもありません。

ひんぱんにやってくる市電が、その都度、ガタゴトと相当の音をたてながら三線分岐やクロスしている線路を通過していくのを見ると、路面電車の力強さに思わず感動してしまいます。

電TDポルタジェノバ駅寂れて201803 (1)
( 三線分岐。ポルタ・ジェノバ駅前 )

電TミラノPジェノバ駅前1500形
( 三線分岐を横目にクロスした線路を渡るミラノ市電1500形 )

市街地に網の目のように張り巡らされた市電の線路には、たくさんのパターンがあります。道路構造や運転方式に合わせた柔軟な線路配置を、謎解き気分で楽しみました。

2019年3月 記



ミラノ市電の風格

ミラノ市電の風格    2018年3月、9月

1)市電のある街という風格

私は、ミラノに行き、街中をひっきりなしに行き交う市電を見ると、いつも心がときめきます。

電Tミラノカイロリ広場夜景輝き201803 (1)
( ドゥオーモ周辺には数系統の市電が引っ切りなしにやってくる )

「これぞミラノの街中風景!」と、いう気分に、いやおうなくさせられるからです。線路をゴトゴトと走る電車の音、狭い中心部の目抜き通りを我が物顔に横切る、長い長い連接車の存在感こそ、ミラノの躍動感を体現しているもののひとつだと感じます。

『そこのけ、そこのけ、市電のお通りだい!』の世界です。


電T初冬のミラノ市電Duomo前4500系200111
( ガーガー、キーンキーン言いながら交差点を曲がるミラノ市電 )

どこかのコラムで、「市電のある街は風格がある」と、誰かが書いていた記憶があります。私も、その意見に大賛成です。躍動感とともに、成熟した都会の雰囲気が伝わってきます。電車の線路は、めったやたらと動かせないので、市電があるイコール街が安定している、という感じが出るのだと思います。


2) 古きも新しきも

ミラノ市電の代表的な新旧車両を、ちょっとだけ垣間見ましょう。

びっくりするくらい古そうな車両から、先月から走り始めたのではないかと思うくらい新しい車両まで走っています。

まずは、最新鋭7000形。7両連接式の長ーい車両で、省エネ、低騒音、低床設計だそうです。

電TミラノグレコP駅前7100系 (1)
( 最新鋭7000形7連接車。5連接の7500形は、最近登場 )

次は、現役、最古参の1500形電車。ドゥオーモ周辺でもよく見かけます。
なんと、就役以来80年以上も経つんだそうです。矍鑠(かくしゃく)とした老公のような存在です。

第二次世界大戦の空襲をくぐりぬけて来た古参の車両がいっぱい残っていることに驚きました。

電Tミラノ19系統センピオーネ付近走行 (1)
( 昔なつかしいスタイルの現役最古参1500形 )

1500形は、モンテ・ナポレオーネに近いマンツォーニ通りを走る1系統や、サンタ・マリア・デラ・グラーツェ教会前を通る16系統にも走っています。木製の窓枠や床、塗り天井など、ノスタルジックな気分いっぱいの車両です。年配の方ならば、子供の頃のチンチン電車体験の思い出にひたりながら乗るのもいいです。

「それどころじゃないでしょ。ミラノなんだからスリに気をつけないとね。おちおちレトロな市電の乗り心地なんて楽しめないぞお!」
という、グチが聞こえてきそうです。

「そこまで、びくびくしなくても大丈夫。ちょっと2-3駅、郊外に出たところで乗ればいいのです」
「そ、それもそうだな」

こういう観光客の声が届いたのか、1500形は、ミラノ市電の顔のようなイメージになってきたようです。イベント用の車両になったりします。当分、現役で走り続けるようなので、米寿、白寿まで頑張ってほしいです。

電Tミラノ1500形センピオーネ公園脇をガタゴト201803 (2)
( 広告塗装の1500形。平和の門付近 )

日本の鉄道風景、市電風景とは異なるところもありますが、街並みに安定感を与えるという点では、古今東西を問わず、同じ効果があるようです。


2019年3月 記











市電あふれるミラノにて

市電あふれるミラノにて   2018年3月、9月


ミラノは、ファッションの街であり、商業、金融、そして工業の街でありますが、市電の街でもあります。

200111初冬のミラノ (3)
( ミラノ城を遠目に群れをなして走るミラノ市電 )


イタリア、歴史遺産、お洒落、グルメ・・・・といったイメージから連想しにくいポイントです。私も、一番さいしょにミラノを訪れたとき、こんなにいっぱい市電が走っているとは思いませんでした。

我が家の息子は路面電車ファンなので、ミラノに行ったとき、次々とやってくる市電の走りっぷりに大興奮でした。

「ギャー、すげえ。あ、また来たあ。こっち見て・・・・」の世界です。

200508Milano Tram (2)
( 21世紀初頭に登場した7000形低床連接車 )

ミラノ市電路線図のサイトを紹介します。

http://www.urbanrail.net/eu/it/mil/tram/milano-tram.htm

1893年の開業で、現在の総延長は117kmほどだそうです。日本でも、広島市は路面電車がいっぱい走っているイメージがありますが、その総延長は宮島線を入れても約35kmです。いかに、ミラノには市電がいっぱい走っているかということです。そのうえ、ときどき短距離ながら新路線が開通しているのです。

198808ミラノ市電と街並み (1)
( ミラノというよりヨーロッパならではの市電風景 )

ですから9割以上の旅行者の皆さまが、ミラノ市電の一コマ、二コマを旅行記で紹介しています。無意識のうちに目につくくらいいっぱい走っているということです。ローマやトリノ旅行記で、鉄道ファンでもないのに市電のことを書いている方なんて、ほぼ皆無ですから、ミラノの市電の存在感の大きさが分かろうというものです。

人懐っこい雰囲気のドゥオーモや、次々と振り返ってしまうお洒落な美男美女の姿も貴重なミラノ体験ですが、街中をガーガーとひっきりなしに走る市電も、実はミラノならではの旅行体験です。是非、1区間でも、5分でもよいので市電にも乗ってほしいです。

198808ミラノ市電連節車内部
( ミラノ市電の車内。4900形連接車 )

下り方向の電車だと、ルートや行先が分からないので、どこに連れていかれるか不安いっぱいです。ですから、上り電車での市電体験がおすすめです。上り方向の電車は、たいていドゥオーモ付近を必ず通るので、どれに乗っても何とかなります。

最後の晩餐を見物し終えてドゥオーモ方面に戻るときの16系統、ナヴィリオ運河沿いのバルでアペリティーボや夕ご飯を食べてドゥオーモ方面に向かうときの2系統、3系統、14系統などが、おすすめです。電車は5分から15分間隔くらいで朝から夜まで走っています。停留所には、ちゃんと時刻表が貼ってあり、けっこう定時運行しています。

電Tミラノ5月24日広場4700形201803
( 3系統上り電車。奥がドゥーモ方向 )

異国の地で、不安気な顔で市電に乗っても楽しくありません。深呼吸をしてミラネーゼ気分になって市電のステップを上がりましょう。

是非、プラス・アルファの市電体験にチャレンジして、短めになりがちなミラノ滞在を楽しみましょう。

電TミラノNaviglioのベルサーチ電車7500形201803 (1)
( ベルサーチの広告いっぱいの市電の夜の風景 )

ミラノに、もっと親しみを覚えてくれる日本人の旅行者が増えるようお祈りしています。

2019年3月 記








ミラネーゼと南イタリア気質

ミラネーゼと南イタリア気質   2018年3月、9月


イタリアは南北間の違いが大きく、そのうえ、地方ごと、都市ごとの違いも目立つと言われています。

イタリア人たちがバルのテラスで延々とおしゃべりする姿を見ると、ミナミの気質もキタの気質も、あんまり変わりないと思うのですが、当人たちに言わせると、かなり違うようです。

ミラネーゼPAVIAのバル風景2018
( バルのテラスで楽しそうにおしゃべりするイタリアン )

ずっと前、キタの代表であるミラネーゼに直截的に尋ねたことがあります。
「北と南のイタリア人って、どんな風に違うの?」

友人は、ちょっと考えてから、ひとつの例をあげました。少し考えるところからして、「キタ」の人間ですね。

「ある晩に嵐が来て、翌朝、大通りに大きな木が何本も倒れていたとしましょう」

『おおっ、新手のテーマじゃないか』と、内心、ほくそえむ私。

「『これは大変』、と近所中が声を掛け合って、市役所の作業員が来る前でも、最低限、クルマが通れるように皆んなで木をどかすのがキタ」

「ふんふん」

「道路の管理は市役所の仕事だ、と言って役所に通報するけど、その後は木が片づけられるまで待っているのがミナミ」

ミラネーゼSiracusaのおしゃべり2018
( イタリア中どこでもバルのテラスは明るいムード )

こういう風に、オチもなく、真面目に解説してくれるのがミラネーゼですね。
なーるほど。

2019年3月記                了



ミラネーゼがいないと

ミラネーゼがいないと    2018年3月と9月

イタリア通を密かに自負する皆さんならば、当然、ミラノの人々、つまりミラネーゼ:Milanese の悪評も耳にしていることでしょう。

ミラネーゼは働き者201809
( ミラノの人々は働き者 )

「ミラネーゼときたら、朝から晩まで働きづくめで・・・・・・」

「ミラネーゼは、二言目には『カネ、かね、金』!」

「ミラネーゼは、お高くとまって何様のつもりだい?」

「イタリアで、一番美味しくないのはロンバルディア料理だ」

こういう小話が、イタリア文化の入門書の隅や、ガイドブックの一口メモ欄などに、しばしば書いてあります。

ミラネーゼマネキン201809
( 理想のミラネーゼ像かも )

そのあとは、判で押したような郷土自慢です。

「それに比べりゃ、俺たちは人間らしく働いているだろ!」

「人生、カネばかりじゃないよな」

「どうだい、俺たちの町は人情味にあふれているだろ」

「うちの料理がイタリア最高さ」

こういうミラノ観を知って、ちょっと笑っておしまい、というのでは、いかにも芸がありません。
別な視点から見てください。

「イタリアのほとんどの都市や地方は、ミラノなくして存在感がないのですね」

「悪役ミラノがあるからこそ、産業振興や技術革新が上手く軌道に乗らない都市や、何の変哲もない町もプライドが保てるのです」

ミラノがイタリアにとって、なくてはならない都市であることが実感できます。
そして、よーくよく、我が身のことも考えましょう。

「働きづくめの会社人間、出世第一と利益必達、ガイジン差別・・・」

東方の島国の人々も、ミラネーゼとあんまり変わらない資質だと思いませんか。ですから、私は、「東京とミラノって、意外と相性がいいのでは」、と密かに思っています。

「ミラネーゼ評が悪口に聞こえたら、ニッポン人の振りも見直せ!」


2019年3月記     了




ミラネーゼの普段着

ミラネーゼの普段着   2018年3月、9月


着倒れの評判が高いミラノ市民の普段着を観察してみました。

ファッション誌の記事では、みんな、街中でお洒落を競い合っているかのような雰囲気です。これは、半分ウソで、半分ホントだと私は感じます。イタリアの諸都市よりはファッショナブルな人々が多いですが、これは、ミラノが豊かな都市だからという理由が大きいと思います。トーキョーの街中を歩いている人たちの服装がパリッとしているのと同んなじ感じがします。

私は、ファッション系に疎いので、ただ、漫然と道行く人々やバルのお客たちを視野に入れるだけでした。

まず、「やっぱり、若いっていうのは、それだけで素敵です」

ミラネーゼポリテクニク学生201803
( ミラノ・ポリテクニク大学の学生たち )

学校帰りは、意外と地味です。学生は、カネがないのだ!

ミラネーゼBrera通201803
( ブレラ美術館付近にたむろする若いミラネーゼ )


ミラネーゼはイゾラ歩き201809
( イゾラ散歩中のカップル )


ミラネーゼスピーガ201809
( 観光客がいっぱいのベネチア通りの気取ったバル )

全体では、小ぎれいでさっぱりした感じですが、すれ違う人の3人に1人くらいは、思わず振り返ってしまうというほどでもありません。モードの中心、モンテ・ナポレオーネ通りやスピーガ通りあたりを歩いている、お洒落しすぎ、天女のような方々ばかりを目にしたら、そうなるかも知れませんね。


2019年3月記     了


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