やまぶきシニアトラベラー

気まぐれシニア・トラベラーの旅。あの日から、いつか来る日まで、かつ、めぐりて、かつ、とどまる旅をします。

2018年03月

バスク鉄道ウルダイバイ線のんびり旅

バスク鉄道ウルダイバイ線のんびり旅

1) アチューリ駅の影うすく

バスク鉄道こと、ウスコトレン:Euskotren のビルバオのターミナル駅は、アチューリ駅でした。

けれども、2017年4月のメトロ3号線の開通で、アチューリ駅:Atxuri, Bilbao は、過去の歴史になろうとしています。
ベルメオ方面に向かう電車以外の大半が、アチューリ駅に入らず、メトロと相互乗り入れとなりました。将来計画では、ベルメオ方面の電車もメトロ直通とし、アチューリ駅はトランヴィアの中間駅になるようです。

やや重苦しい雰囲気のアチューリ駅舎は、歴史的な建物となって、ウスコトレンの始発駅であったころの記憶を刻むのかも知れません。

今日は、めっきり電車本数も減ったアチューリ駅から、ゲルニカ、ベルメオへ向かうウスコトレン各駅停車に乗ります。通称、ウルダイバイ線 :Urdaibai と呼ばれています。

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( ビルバオ・アチューリ駅舎正面。右は、始発のトランヴィア )

アチューリ駅は、旧市街の南西部、ネルビオン川沿いの細長い土地にに身をすくめるように作られています。プラットホームは1番線から4番線まであります。1番線は、改札の左奥の方なので、ちょっと分かりにくいです。

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(アチューリ駅正面改札。人影は少なめ )


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( アチューリ駅の線路終端の車止め )




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( アチューリ駅構内。後方は、ネルビオン川とリベラ橋 )

リベラ橋を遠目に見て、準急トラーニャ行きが発車するところです。駅の電光表示が、Semi Expressだったので、「準急」と書いています。平日に数本運転されるだけの通勤通学電車です。

ライトをつけて停車しているのが、次に発車する各駅停車ベルメオ行き:Bermeo です。現役最古参の200系の青い車両です。ベルメオ方面の電車は、平日30分間隔、土曜休日は1時間間隔の運転です。

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( アチューリ駅ホーム先端から下り方向を望む )


2) のんびりとゲルニカに向かう

ベルメオ行きの電車は、1車両に数人の乗客を乗せてアチューリ駅を発車しました。

川に沿って蛇行する複線の線路を左側通行で進むと、3分で、次の駅ボルエタに到着。メトロとの乗換駅ですが、平日の朝の下りに乗ってくる乗客は数名です。周辺は、少し時代がかった工業地帯で、かつて重工業都市だったころのビルバオの面影を残しているようでした。

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( メトロ1,2号線との乗換駅ボルエタ駅:Bolueta )

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( 乗換口。左ウスコトレン、右ビルバオ・メトロ )

各駅停車の電車は、2、3分おきに停車しながら東へ走り、ドゥランゴ方面との分岐点を過ぎると、線路は単線になり、向きを北に変えます。同じようなデザインのマンションが点在する都市近郊風景は一転し、木々の生い茂る丘陵地帯となります。
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( 本線とウルダイバイ線の分岐点の様子 )


電車が、小さな峠を越えると、次第に農地や牧草地が視界に入ってきます。北海道みたいな風景です。前日の雨でぬれた牧草や木々の、しっとりとした緑色が、少し重たく感じます。

私にとっては、とても落ち着く車窓の緑でした。

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( ゲルニカ近郊の農村風景 )

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( 車窓から見たゲルニカの街はずれ )

次第に家が増えてくると、電車は、ゲルニカ駅:Gernika に到着です。アチューリ駅から50分かかりました。ビスカイバスでも45分前後かかるそうです。本数は、電車、バスともに同じくらい。駅とバスターミナルは隣接していますので、ビルバオからベルニカ観光に往復する人は、お好みで交通機関を選べばよいと思います。

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( ゲルニカ駅に着いたウスコトレンの電車と降車客 )

ゲルニカは、地域の中心都市なので、8割くらいの人が下車。代わりに乗ってくる人がいます。

電車は、ゲルニカ駅で5分以上停車。上り電車の到着を待って発車します。
とても、のんびりとしたローカル線風景です。

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( 上り電車が到着。背後は、ウスコトレンの工場兼車両基地 )

構内踏切には警報器がありません。そのため、上り電車は、時速20kmくらいで、ゆーーーくりとプラットホームに入ってきます。そして、上り電車の降車客が踏切を渡り終わったころ、下り電車が、静かに発車して行きました。

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( ゲルニカ駅で交換する上下の電車 )

ゲルニカ駅も、かなり立派な造りです。
正面入り口奥は、待合室、事務室で、人の乗り降りできる改札口は、正面右の張り出し部分にあります。プラットホームのかさ上げや、自動改札化のときに、動線が変わったようです。

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( ゲルニカ駅舎正面 )

ここで途中下車して、ゲルニカの歴史的建築や、バスクの小都市の、しっとりとした雰囲気を、こころから楽しみました。


3) ウルダイバイ線のハイライトを見よう

ゲルニカ見物を終えて、再び、ウルダイバイ線のお客となりました。
進行方向右側に座り、ウルダイバイ自然公園の湿原風景と、エスチュアリーと呼ばれる河口の地形を楽しみます。

ゲルニカを出た電車は、10分くらい走ると、湿原の縁に出ます。時速80kmくらいですが、かなり揺れます。

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( 2枚ともウルダイバイ自然公園の眺め )

9月半ばを過ぎると、ススキの穂が出始め、一帯も初秋の雰囲気が漂い始めました。湿原の向こうに木々がびっしりと茂った山々が見え、日本と同じスカイラインの田園風景が続きます。こんな風景を見ながら、老いていくのもいいなあ、と思える景色です。

湿原が尽きると、電車の行く先に海が見え始めます。別荘らしき家、ヨットなども目に入ってきます。バスクの豊かさを、さりげなく見せられたような気分です。

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( 車窓に海が見えます。ムンダカ手前付近 )

幾つかの入り江を通り過ぎたところが、ムンダカ駅:Mundaka。ひそひそ声さえ遠くから聞こえそうな静かな漁村です。

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( 終点のひとつ手前、ムンダカ駅 )

途中下車して、どんよりとしたカンタブリアの海を見に行きました。

そして、三たびウスコトレンの客となって走ること5分。ウルダイバイ線の終点ベルメオ駅:Bermeo に着きました。

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( 雨をついてカーブしたベルメオ駅に着く電車)

今日のベルメオは、朝の曇り空が、昼過ぎには本降りの雨と変わりました。もやに霞むベルメオの旧市街に行き、ランチを食べがてら街中散歩も雨模様。晴れれば、カラフルな色合いをした漁港周辺のマンションが、もっと映えるんだろうな、と思わずにはいられません。


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( ベルメオ駅で折返し待ちのウルダイバイ線の電車 )

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( ベルメオ駅前。駅舎は、半地下構造 )

ベルメオ駅についた電車は15分ばかり停まって、折返して行きます。地元の人たちに混じって数人のガイジン観光客も降りてきます。駅員さんに、「サンファン・デ・ガステルガチェ行きのバスは、どこから出ますか」というようなことを聞いているようです。あんなに有名観光地なので、案内表示くらい出せばいいのに、と私は思いますが、ヨーロッパ感覚では、そうはならないようです。

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( ベルメオ駅裏の高台より雨に霞む旧市街を遠望 )

ウスケラが聞こえてくるビスカヤ県の美しい漁港都市ベルメオ風景を脳裏に焼き付けて、帰路につきましょう。
平凡なようで、バスクらしさを感じるウルダイバイ線の電車の旅でした。

                                                2018年3月 記   了






酔狂で乗るウスコトレン各駅停車

酔狂で乗るウスコトレン各駅停車  2017年9月

1)ウスコトレンは遅い

バスク鉄道ことウスコトレン:Euskotrenは、ハイレベルな狭軌鉄道ですが、スピードが遅いのが玉に傷です。
それも、かなり大きい傷です。

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( ウスコトレンのロゴと950型車体側面 )

安全、安心、清潔、正確。安いし、本数も多めのラウンドダイヤで、時刻表要らずで乗れるのはいいのですが、遅いのです。最高時速は90km、平均時速は30kmから40kmくらいです。電車は、ほとんどが各駅停車で、快速や急行は、ビルバオ付近で平日通勤時に数往復走っているだけです。

ウスコトレンでの20分から30分くらいの短距離通勤や移動は苦になりませんが、1時間くらい離れた場所に行くときは、バスの方が早いことも、しばしばです。

特に、ドノスティア、ビルバオ間の約100kmは、ウスコトレンの各駅停車で移動すると2時間半以上かかります。1時間おきの運転で、運賃は6ユーロです。

この区間は、高速バス利用が圧倒的に便利です。所要時間は1時間半以下、朝6時から午後10時過ぎまで10分から30分間隔で発車。運賃は7ユーロから18ユーロくらいです。鉄道は競争に勝てません。


2)酔狂な電車移動

そういう区間なので、今回は、意を決してウスコトレン鈍行列車の旅を試しました。鉄道の旅も好きなのですが、ちょっと酔狂な電車の旅でした。

始発は、ドノスティア・アマラ駅:Amara Donostia です。狭軌で、折り返し式の駅なので、プラットホームの先端に立って線路を眺めると、日本の大手私鉄と変わらない鉄道風景が目に入ります。

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( ウスコトレンのアマラ駅から見る線路 )
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( アマラ駅正面 )

ドノスティア、つまりサンセバスチャンから電車に乗って、延々と西へ進むとビルバオです。

2017年4月8日より、ウスコトレンはビルバオの地下鉄3号線と相互乗り入れを開始しました。新しい終点は、マティコ駅:Matiko, Bilbao です。旧来のアチューリ駅には入りません。その代わり、他のメトロとの乗換や、都心部へのアクセスが便利なサスピカレアク/カスコビエホ駅:Zazpikaleak/ Casco Viejo に直行できるようになりました。

「また、ひとつビルバオのウスコトレンが便利になりましたね」
「まあね。でも、電車は遅いよ」
「マティコまで2時間50分かかりますものね」
「そういうこと。近隣の通勤通学者は便が良くなったと思うよ」

東武の宇都宮あたりで、「東武の電車も半蔵門線乗入れだから、渋谷まで乗換なしで行けるよ」と、会話しているような感じです。

車内の路線図は、ばっちり、新しい運転系統のものに変わっていました。けれども、9月ごろの段階では、website上の路線図や時刻表は旧来のままでした。年末になって、やっと変更されました。勤勉なバスクでも、意外と、のんびりしたところもあるので、ほっとします。

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( ビルバオ・マティコまで相互乗り入れ表示をした車内路線図 )


写真は、午後の明るい時間帯のアマラ駅ホーム風景です。
さわやかな雰囲気の駅です。

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( 午後の陽ざしを浴びるアマラ駅と電車 )

ビルバオ行き電車は、アマラ駅を定刻に発車しました。ここから西では、電車は左側通行となります。進行方向右側に乗ると、ところどころで海が見えます。左側に乗って2時間くらいすると、ドゥランゴ:Durango  という小都市の奥にそびえている石灰岩の奇峰が見えます。

電車は、たいていすいています。景色に合わせて席を移れば、ギプスコア県からビスカヤ県一帯の田園風景のハイライトを、居ながらにして見られます。

だんだん退屈してきて、ぼおっとしていても大丈夫です。この辺りでは、旅の者の荷物をかすめ取るような軽犯罪は、めったにありません。


3) 海と山と集落と

車窓から、雲間にカンタビリアの海と、石灰岩質の崖が荒々しい海岸風景が、ちらりと見えました。

山陰本線の出雲市から江津あたりの車窓風景と似ている気がしました。林の中をくねくねと走る列車は、ところどころでトンネルに入ったかと思うと、砂浜を取り囲むようにできた集落を見渡すように走ります。

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( ウスコトレンの車窓から望む海、サラウツ前後 )

線路は、山すそや、川の蛇行に忠実に沿ってカーブしながら西へ西へと続いています。日本に、とても似ている雰囲気の場所を走ることもあります。

”のんびり過ぎるバスク途中下車の旅”、というタイトルで、テレビ放映してほしいな、と思います。


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( ウスコトレンの車窓から見える川と緑の山々 )

電車は、30分から1時間におきくらいに、それなりの規模の町に入ります。電車は、サラウツ、デバ、エイバル、ドゥランゴなどを経て、終点のビルバオに向かって行きます。



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( デバ駅プラットホームと電車 )

途中の駅は、年季の入った建物も少なくありません。そして、有人駅は、よく手入れされています。簡易型自動改札機も全線で設置済みです。

ウスコトレンの主要駅は、古風な外観を保ちつつ、21世紀型サービスの提供も怠ってはいません。常に、時代にキャッチアップするべく、投資を続ける経営姿勢に、とても好感が持てます。

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( デバ駅の改札口と簡易自動改札機 )

ウスコトレンのビルバオ行きは、行程の半分あたりで、U字カーブを切りながら峠越えする区間に入ります。

緑いっぱいの山々の間に、小さな町が点在しています。しかし、一帯は、過疎になやむ山村ではありません。中小の機械系の工場がたくさんある工業地帯です。ウスコトレンの電車を製造しているCAFという車両メーカーの登記上の本社も、こういう雰囲気の小都市、ギプスコア県のベアサインという町にあります。エイバル:Eibar という都市のサッカーチームは、スペイン全国リーグ入りをするくらいの強さです。

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( 県境の山間にある小工業都市風景 )


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( 現代的製造業が盛んなエイバルの駅 )


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( ドゥランゴ付近から遠望する石灰石の山々 )

電車は、山合いの谷間をくねくねと走り、小さな町ごとに、パラパラと乗ったり降りたりを繰り返しながら、ビルバオ近郊まで来ました。線路の左右に、10階建てくらいのマンションが点在するようになると、ビルバオ通勤圏です。いつの間にか線路も複線になり、スピードも上がって、コンスタントに時速80km以上を出すようになります。

メトロ3号線への乗り入れ駅、ククヤーガ・エチェバリ駅:Kukullaga Etxebarri に到着です。

相互乗り入れ開始に際して、全面的に改築され、真新しい駅と何ら変わりません。日本の大都市郊外の新興住宅地に伸びてきた私鉄新線の駅の雰囲気です。プラットホームと電車の床面の高さが、ぴったりと揃い、駅の色合いも日本のカラーリングセンスと似ているのも、親近感のひとつの理由だと感じました。

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( ククヤーガ・エチェバリ駅で発車待ちのメトロ直通電車 )

メトロ3号線は、ウスコトレン仕様で建設され、ウスコトレンが運転しているので、ウスコトレンの地下新線と言っても過言ではありません。

きょろきょろと、地下新線区間を物珍し気に見ている間に、ビルバオ都心部への最寄り駅、サスピカレアク / カスコビエホ 駅に到着しました。

「よくぞ電車で来たもんだ! ちょっと疲れたあ」
「次は、やっぱ、高速バスにしよっ!」

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4) 消え始める風景

別のタイミングで、ウスコトレンのビルバオの本拠地アチューリ駅:Atxuri を訪問しました。
駅舎は、100年くらい経つ、重厚な感じの石造建築です。少し暗い印象です。


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( アチューリ駅正面と、トランヴィア )

メトロとの直通運転開始で、アチューリ駅に入ってくる電車は、かつての半分以下です。土曜休日には、1時間に1本しか電車がありません。もう少しすると、郊外電車の発着をやめ、市電相当のトランヴィアをククヤーガ・エチェバリまで延長して、路線網をすっきり再編成したいようです。

そうなった頃に、また、ビルバオに行けたらいいなあ。

脳裏に、そんなことを浮かべながら構内に入ると、ウスコトレン新旧電車三代が、そろい踏みでプラットホームに停まっていました。左端が、現役で一番古い200型、真ん中が最新鋭900型、右端が300型です。右の奥に、ちらりと見える黄緑と白の車体は、トランヴィアで、昼間は使わない編成をアチューリ駅の隅に留置しているようです。

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( ウスコトレン三代。左から200系、900系、300系 )


ウスコトレンも、アチューリ駅も、バスク旅行気分を、じんわりと盛り上げてくれる脇役です。リピーターの方々、お住まいの方々にとって、いつまでも身近な公共交通機関でありますように。


                                                  2018年3月記   了



















































ビルバオのRENFEの影うすく

ビルバオのRENFEの影うすく


1) ビルバオのレアな特急電車

2017年9月現在、ビルバオの長距離電車は、絶滅危惧種です。

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( 1日2往復のマドリード行き特急アルビア:Alvia。アバンド駅にて )

ビルバオ・アバンド駅:Abando 発着の特急電車は、1日4往復か5往復しかありません。マドリードやバルセロナに行く途中の峠越え区間でスピードが出ないため、飛行機やバスに比べて競争力がなくなってしまったのです。

下の写真は、アバンド駅の、長距離列車到着案内です。マドリード、バルセロナまで各2本、西の端のビーゴまで1日1本の特急電車があるだけです。マドリード発着の1往復は、休日運休です。

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( ビルバオ発着の長距離列車は絶滅寸前。2017年9月 )

マドリードまで、特急電車でも5時間、高速バスでも5時間なので、旅行者は、安くて本数の多い高速バスに流れます。そのため、アバンド駅で、特急電車を見かけたら、とても貴重な旅行体験です。

スペイン版の新幹線が開通するまで、ビルバオと特急列車の縁はうすいままでしょう。

ビルバオ発の夜行列車は、とっくの昔に全滅。4-5時間くらいの距離にあるサラマンカやバヤドリド、ログローニョなどへ往復していた準急列車も、ろうそくの炎が尽きるように、ひっそりと消えた感じです。


2) 観光名所アバンド駅:Estacion  Bilbao Abando Indarecio Prieto

長距離列車の衰退と入れ替わるように、アバンド駅は、観光名所化していました。

最近の正式名称は、アバンド・インダレチオ・プリエート駅。何で、長ったらしい名前にしたのでしょうね。まあ、実態としては「アバンド駅」で通用しています。

2017年9月現在、駅舎は改修工事中です。母屋は、列車本数に似合わず、堂々たる構えです。鉄道全盛時代に、スペイン北部の中心都市ビルバオの玄関口として設計された気概が感じられます。どっしりとした石造建築で、5本のプラットホームはすべてドーム屋根で覆われています。

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( 改修工事中のRENFEビルバオ・アバンド駅。2017年9月)

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( 従前のビルバオ・アバンド駅舎。1990年7月 )

駅舎入口は1階、プラットホームは2階です。ゆるやかな坂にある地形を上手に利用した作りです。
かつては、長距離用の切符売場が1階に並んでいました。今では、通勤通学客を意識したエキナカ商店街に変身です。

バスクの駅なので、ゴミや落書きもなく、床の掃除も行き届き、清潔で静穏な空間が広がっています。

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( アバンド駅1階から2階へ上がるエスカレーターを見る )

アバンド駅の2階へあがります。
エスカレーターを上がった右に、きっぷ売場と、近郊電車のきっぷの自動販売機が並んでいます。

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( アバンド駅の有人きっぷ売場。階下よりホーム脇に移っていた。2017年9月 )

電車の発着案内表示もあって、一応、駅らしい雰囲気が漂っています。
ただただ広い空間に、申し訳程度に切符売場や電車が見える光景は、少し寂しい限りです。

そして、エスカレーターを降りて、後ろに振り向くと、シュールなオブジェと、アバンド駅名物の大きなステンドグラスが、どどーんと視界に飛び込んできます。

「おおっ」と、ビルバオのすごさに惹かれる瞬間でもあります。

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ここは、ビルバオ街歩き名所のひとつなので、かなり観光客がいます。ボランティア・ガイドさんに連れられたガイジン客ご一行様と遭遇するときもあります。

電車に乗らずとも、アバンド駅2階のステンドグラス見物くらいは、是非、お立ち寄りください。


3) そおっと走るRENFE近郊電車

2017年9月時点で、ビルバオのRENFE近郊路線は3系統あります。セルカニアス:Cercanias、というサービスです。すべて、アバンド駅を起終点としています。
観光客に縁があるのは、サントゥルティ:Santurti に向かう路線で、メトロ2号線と、つかず離れず走り、ビスカヤ橋最寄りのポルトゥガレテーテ駅を経て、終点に至ります。

アバンド駅の中央改札口にくると、赤と白に塗り分けられた通勤電車がずらりと並んでいて、ちょっとしたターミナル駅感覚を味わえます。この電車は、マドリード一帯の車両より、一世代前の形式です。

どの系統も、朝夕20分毎、昼間30分から40分毎の運転なので、全体的に、のんびりムードが漂っています。乗客もパラパラ程度です。自転車の持ち込みも可能です。サイクリストも、あまり混雑を気にせず、指定の場所に自転車を持ち込んで、乗ってきます。

環境にやさしい街づくり、交通サービスは、スペインでも当たり前の光景です。

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( RENFE近郊電車の自動改札口。自転車利用も可能 )

近郊電車は、向かって右寄りの1番線から5番線に発着します。

特急電車は、左の6番線、7番線、8番線に発着します。特急ホームに入るためには、専用の改札口へ回り、荷物検査を受けます。けっこう、ものものしいのは、過去の列車爆破テロの教訓でしょう。日本人感覚では、びっくりする人がいそうです。

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( 長距離ホーム6番線に入線した特急アルビア、マドリード行き )


3) 通勤電車に乗る

近郊電車は、3両1ユニットです。
写真で見ると長い編成のように感じますが、遠近法のなせる錯覚です。

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( アバンド駅ホームに揃うRENFE近郊電車。マドリード圏より古いタイプ )

車内はクロスシート。メトロやウスコトレンの電車に比べると、横幅が広く、車体も長いつくりです。軌間1668ミリメートルの広軌鉄道ですが、サイズ的には軌間1435ミリの標準軌の電車と、ほぼ同じです。

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( RENFE通勤電車の車内。メトロより広めの空間 )


RENFEの通勤電車:セルカニアスは、ときどき思い出したように、アバンド駅をすうっと発車して行きます。左側通行で走ります。

アバンド駅のプラットホームは、長距離列車用に作られたため、気の遠くなるくらいの長さです。写真の奥に見える坂の下のトンネルをくぐると、すぐに次の駅です。ビルバオ都心部の駅と駅の間は、1kmくらいしか離れていません。

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( アバンド駅を発車するRENFE近郊電車。背後はビルバオの団地風新市街側 )

ですから、電車は、スピードを上げる間もなく、次の駅に停車します。数人が乗り降りすると、プシュー、とドアが閉まって、ゆっくりと発車します。

RENFEの電車は、アバンドから20分ほどで、ビスカヤ橋の最寄り駅、ポルトゥガレーテ駅:Portugalete に到着します。メトロの駅と同名ですが、ふたつの駅は1.5kmくらい離れています。RENFEの駅は、ネルビオン川沿いなので、駅を降りると、すぐにビスカヤ橋が見えます。けれども、RENFEに乗るまでが手間なので、日本人の大多数は、メトロ利用のようです。それが、合理的な選択だと思います。

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( 朝のRENFEポルトゥガレーテ駅風景 )

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( RENFEポルトゥガレーテ駅改札口 )

RENFE近郊電車体験もしたかったので、終点のサントゥルーティまで乗ってきました。

貨物線が、さらに伸びているので、線路は先のほうまで続いています。港町の岸壁沿いにある何の変哲もない駅です。風情も何もありません。発車5分くらい前になると、地元の人が、ばらばらと集まってきて、「はい、発車あ」の世界です。

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( サントゥルティ駅に停車中のRENFE近郊電車:Cercanias )


4) 思い出のアバンド駅風景

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( 1990年のビルバオ・アバンド駅ホームと、背後のBBVAタワー。長距離列車もそれなりにあった )



1990年夏のアバンド駅プラットホーム風景です。

マドリードから着いた夜行急行が奥の方に停まっています。電気機関車が引っ張る客車急行も待機中。その隣りが、近郊電車です。現在とは逆に、1番線から5番線が長距離列車、6,7,8番線が近郊電車発着ホームでした。

ドーム屋根の向こうにそびえる、現BBVA本店タワービルが、ビルバオのゆるぎない経済力を象徴しているかのようです


198709ビルバオアバンド駅構内と夜行列車着
( マドリードより着いた夜行列車。アバンド駅、1990年 )

2017年の現在、茶色と白のカラーリングの客車も、なつかしの一コマとなりました。
乾燥したカステーヤの大地を、羊の群れや、朽ち果てた風車らしき遺構を見ながら、延々と走り続けるスペイン独特の長距離列車の旅も、20年くらい前になくなったようです。ガイジン旅行者の、勝手なノスタルジーですね。

現在では、スペイン国内で、AVEその他の高速電車と、クロスシートの近郊電車以外で移動することは、ほとんど体験不能になったようです。ヨーロッパ風鉄道ムード満点の、コンパートメント方式のスペイン鉄道の旅は、記憶の中だけになりました。

鉄道旅行ファンにとっては、味気ない内容ですが、時代の趨勢です。

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( アバンド駅の近郊電車と奥のステンドグラス。1990年 )

しかし、アバンド駅突当りのステンドグラスは、変わらぬ姿です。

198709ビルバオアバンド駅近郊電車が到着
( 1990年頃のRENFEのビルバオ近郊電車 )

青地に黄色の帯を巻いた3両1ユニットの近郊電車に、時の流れを感じます。30年経っても、近郊電車は3両編成のまま。同じような内容で、ビルバオ一帯を黙々と走っているというのは、安定というべきか、進歩がないと言うべきか、ちょっと迷います。



                                        2017年9月訪問/2018年3月記     了



FEVEバルマセダ線の思い出

FEVEバルマセダ線の思い出  1986年から1990年

1) 狭軌鉄道の栄える都市

スペインのバスク一帯では、線路の幅が1000ミリの狭軌鉄道が大活躍しています。

ビルバオのメトロとトランヴィア、バスク鉄道ことウスコトレン、それにスペイン国鉄系のFEVEの4社です。

ニッポンの鉄道さながらの狭軌鉄道王国です。

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( バスクの鉄道の多くは狭軌。イメージ画像 )

ふと見ると、線路や架線の張り方が、日本の郊外電車やローカル線風景と、何と似ていることか。
バスクの旅が、とても心地良く、安眠できる日々になるのが、こんなところからも納得できます。


2) コンコルディア駅舎は見るばかり

バスクの狭軌鉄道4社のうち、日本人にもっとも馴染みがうすいのがFEVE:フェーベ、でしょう。

FEVEは、ビルバオから西の北部沿岸に長距離路線網を持っています。ほとんどが、1日に数往復のローカル線ですが、ビルバオやサンタンデルの都市近郊では、30分から1時間おきに電車があり、中都市の通勤通学路線となっています。

FEVEは、スペイン語の「スペイン狭軌鉄道」の略称。現在では、スペイン国鉄の、RENFEオペラドーラという会社の一部門です。

私は、縁あってFEVE近郊区間のビルバオ、バルマセダ間:Bilbao -- Balmaseda に、かつて乗りました。2000年代に電化され、ビルバオ市内のルートも変わりましたが、始発駅は、コンコルディア駅:Concordia のままです。

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( 日本人旅行者にも人気のFEVEコンコルディア駅舎遠望。2017年 )

コンコルディア駅舎は、緑色の縁取りと、細かい模様、優雅なアーチで、日本人のビルバオ旅行者にも、そこそこの人気。半分くらいの方は、「あの建物は何だ」で、終わっていますが、目をひくことは確かです。

とても、嬉しい限りです。
「駅舎は、変わらなくてもいいですが、サービスは変わってもらわなくちゃ」

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( FEVEコンコルディア駅舎南口とネルビオン川 )

コンコルディア駅は、ネルビオン川沿いの斜面に建っているので、川沿いのベンチに腰掛けると、市民さながらに憩いのひとときを過ごせます。ぼおーっとしながら、駅舎やビルバオの旧市街を眺めましょう。


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( FEVEコンコルディア駅のRENFEアバンド側出入口 )

コンコルディア駅も、反対側のアバンド駅側の出入口は、現代風です。

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( FEVEコンコルディア駅中央改札と切符自動販売機 )

駅舎内と改札口の様子です。通勤通学時間帯以外は、利用者も多くないので、がらんとしています。

FEVEも、バスク州政府の公共交通機関支援策がないと、とっくに廃止されたかも知れません。先進国のローカル鉄道や、路線バスの在り方について、得失をわきまえながら、ヨーロッパ流の取り組み方を学ぶことも、必要ではないでしょうか。


3) ディーゼルカーでがったんごっとん

1990年代まで、FEVEのバルマセダ線も非電化でした。ディーゼルカーが、ビルバオ中心部から、エンジンのうなりを立てて発車していました。

FEVEビルバオAchurli駅DC1990年7月
( コンコルディア駅に停車中のFEVEディーゼルカー。1990年7月 )

狭軌鉄道なので、車両はRENFEの車両より小ぶりでした。かわいい感じの車両です。
車両は、どれも2両編成で1組です。

FEVEディーゼルカーバルマセダ近郊1990年7月
( アラングレン - バルマセダ間を走るFEVEの下り普通列車。1987年9月 )



車両は、数形式あり、いちばん新しいものは、ステンレスカーでした。夕方の通勤通学時間帯は4両編成の列車もありました。

デザインが当たり前すぎるので、日本のディーゼルカーと同じムードです。バスクの、真面目過ぎる実用指向が感じられます。ちょっと、つまらないかも。

緑したたるバスク西部の山あいを、ディーゼルエンジンの音を響かせて走る列車は、日本のローカル線風景とそっくりです。狭い平地に点在する家庭菜園のブドウ棚や、野菜畑も、よく手入れされ、ゆったりとした、ゆとりある空間を作り出していました。



4) バルマセダに分け入る

終点のバルマセダ:Balmaseda 駅は、小都市の拠点駅の風貌です。ビルバオから50分ほどかかります。かろうじて、ビルバオ通勤圏です。

バルマセダ駅は、大きくはないけれども、人の気配も、それなりにあります。貨物も取り扱っていたので、たまに石炭を満載した貨車が、構内を移動していました。

時間がゆっくり流れている駅に降りると、ほっとします。

FEVEバルマセダ駅まだDC1990年7月 (1)
( バルマセダ駅で発車待ちの上りビルバオ行きディーゼルカー。1986年9月 )

FEVEバルマセダで入換中のDL石炭貨物1990年7月
( バルマセダ駅で入換中の石炭貨物列車とディーゼル機関車。1986年9月 )

現在では、このバルマセダ線も全線電化され、ビルバオの近くは複線、地下トンネルで走り抜けています。貨物列車もなくなったようです。これからも、住民の足として、活気を持って走り続けてほしいものです。

次回は、ちゃんと電車でバルマセダまで往復して、時の流れをしみじみと見つめたい。

2018/3月記


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