やまぶきシニアトラベラー

気まぐれシニア・トラベラーの旅。あの日から、いつか来る日まで、かつ、めぐりて、かつ、とどまる旅をします。

2018年02月

私の旅する外国語


私の旅する外国語  


1) 英語とフランス語

私が海外旅行で使う言葉は、英語とフランス語です。

英語に比べてフランス語のレベルは、かなり見劣りしますが、旅行するくらいならば大丈夫です。

中国語やアラビア語は、まったくできません。日本語も、得意ではありません。空気が読めないという、日本語習得能力における致命的な欠陥を負っているからです。

バスク語と訳されているウスケラや、その他の言語も、一つか二つのあいさつ語くらいは覚えますが、外国語を話すという感じではありません。

その割には、よく海外に行くじゃない、と指摘を受けそうです。
「何だかんだで、旅行者の出没しそうなところ、だいたい英語書いてありますから」

アテネ空港二言語201509
( 海外旅行で英語が書いてあると、ほっとします )

海外旅行や外国関係の仕事において、外国語ができたほうが良いことは自明の理です。その一方、外国語が全くできないからと言って、海外旅行ができないとか、貿易などの仕事ができない、ということもありません。自信を持って、海外に出かけ、外国人と渡り合いましょう。

英語ができると、たいていの国で何とか旅行ができます。日本への旅行でも何とかなります。

フランス語で意思疎通ができると、ヨーロッパ旅行やアフリカの半分くらいの国の旅行が、さらに楽しくなります。また、フランス語が分かると、親戚関係にあるスペイン語、イタリア語、ポルトガル語、ルーマニア語などでの意思疎通が有利になります。恋愛とか男女関係のもつれに寛容になる傾向が出ます。

同じような背景で、ドイツ語ができる人、ロシア語ができる人は、それぞれ類似の言語を話している場所では、他の方々より意思疎通がしやすいと思います。ただし、中国語については、どういうコミュニケーションの広がりが展開するのか、私には想像できません。


2) たくさんの言葉

ヨーロッパに行くと、各国人が集まりそうな場所には、たくさんの言語で説明や注意が書いてあります。

イーリー大聖堂は入場無料だが要寄付198107
 ( 観光地での多言語表記。イギリスのイーリー大聖堂。日本語がユニーク )

実に多種多様な言葉があるんだあ、と実感します。それと同時に、ヨーロッパ系の言語って、何だかんだ言っても、かなり似ているんだ、とも感じます。字面だけで観察すると、いわゆるアルファベット、キリル文字、日本語と中国語に出てくる漢字、アラビア文字の四つくらいが、好対照を成しています。

「この四系統の言葉ができたらすごいな」というのが、率直な感想です。

ですから、
「私は、ドイツ語、オランダ語、ノルウェー語、英語、スペイン語ができます」と、言っても、きびしい評価をすれば、せいぜい、ドイツ語・英語グループと、スペイン語グループの二言語ができます、というくらいに過ぎないのではないか、ということです。私たち日本人と、あまり変わりませんね。

念のため申し添えますが、オランダ語などを卑下する意図は皆無です。各国語の関係には、大くくりなグルーピングがあるので、日本人の考える多言語話者と、ヨーロッパ人の言う多言語話者では、少しレベル感が違うというということを理解してほしい、ということです。


3) 言葉の持つ特異な力

これからの海外旅行では、言葉の問題について、AI、つまり人工知能の成果がどんどん入り込む、と私は信じています。

英語ができないから海外旅行を思いとどまってしまう人たちは、音声認識タイプの小型翻訳機を使えば、不安なく旅行できる時代は目前だと思います。

英語とフランス語ができるなんて、普通の海外旅行者にとって、なんらメリットではなくなるでしょう。スマホ操作が苦手で、美術館やウーバーの予約ができないとか、フライト変更通知が届かないので、出発便の遅れを知らないまま空港まで行って時間の無駄になった、という方が、ロスが相対的に大きくなるでしょう。

それでも、言葉の持つ特異な力は残ります。個人と個人とが信頼し合うためには、肉声で話し合うことが必要です。

肉声には、話し手の感情が乗り移り、それを相手も察知できます。お互いの顔つきや、声の抑揚で、話し手の気持ちを補完して伝えることができます。あなたに好意を持っている、とか、単に客と担当者としてお話ししているかが分かるのです。

AI翻訳機を使って、互いに好意を抱いていることが分かったのでカップルになっても、その次には肉声で話さないと愛情ははぐくまれないと思います。話し手の情熱と思いやりを、肉声で相手に伝えることが絶対に欠かせません。

海外旅行をしていると、たまに、友達の輪が広がる幸運な場面に出会えます。これは、実際に旅行した者だけのユニークな体験であり、人生の肥やしです。

たくさんの方が、地元の人たちとの他愛ない会話を、旅の貴重な思い出として書き残しているのも、同じ理由です。個人と個人との会話は、私とあなただけの秘密体験です。他人に話しても、減ったり、価値が低くなることはありません。名所の説明書きで得たよう知識やグルメ解説は、学者さんやリピーター旅行者の解説にかかれば、ふけば飛ぶような自慢話に過ぎないことと大違いです。


4) 将来の海外旅行体験

グーグルマップや動画サイトの普及により、今以上に、遠くの風景や出来事も、自分の居場所で簡単に見ることができるようになるでしょう。

ますます現地報告型の体験談や、旅行記は意味を失います。旅行者が何を感じ、旅先の人や物とどういうふうに接し、どういう気持ちになったかが、旅行記や体験談の最大のポイントになると思います。

写真が発達したため、従前のように、肖像画や風景画を綿密に描く必要がなくなったとき、西洋で、人間の感動を、物や表情を通さず、記号や模様を使って表現する抽象芸術が発達しはじめました。私たちは、生活上では、昔ながらの絵や彫刻を見慣れているため、抽象芸術を受け入れない人が多いです。物の形や顔があると、そちらにイメージが引っ張られてしまい、感動の本質がぼけてしまう側面も理解してほしいな、と思います。

技術の変化により、海外旅行体験でも同じようなことが、進行するような気がします。グーグルサービスで見た名所旧跡を実地で確認して、大げさに語ったところで、「ああ、知ってるよ。それが、どうかしたの?」で終わりです。

それよりも、人と人との接触を通して、旅行者ひとりひとりが何を感じたか、もっともっと直接的な感想を伝えてほしいです。

「窓口の係員は親切だったけど、入場料お一人様60ドル。出口で、これでもかの笑顔でチップねだり。ぼったくり体質だなあ」

「注文の料理が売り切れたおわびに薦めてくれた料理を、片言の英語で一生懸命説明する店主の、おもてなしの気持ちに、この国の真面目さを感じました」

そして、何語で話したのかは、けっこう大きなポイントだと思います。言葉は文化なので、各言語特有の言い回しを通して、旅行者ひとりひとりは、旅先の人と文物を感じるでしょう。

例えば、英語で旅するフランスと、フランス語で旅するフランスは、微妙に違った国になります。最近では、「フランスってのは、フランス語オンリーだ」と、戦々恐々としながら渡航したフランスで、観光業関係者の大半が、きれいな英語で応対くれた体験を、驚きと歓びいっぱいで語る人の多さが印象的です。

ルーブル仮設土産店中国語有り201509
( フランスでも多言語表記は当たり前になった。ルーブルにて )

「でもねえ。世界中どこへ行っても、英語、エイゴ、っていうのも恐ろしい」
「その気持ち、よく分かります。だから、反、英語帝国主義みたいな流れがありますね」
「そういうとき、フランス語を出すと、一気に雰囲気なごむんだよね」

フランス語というのは、いまだに、隠然たる力を持っているようです。


2018年2月








ドノスティア行き電車の旅

ドノスティア行き電車の旅    2017年9月

1) バイヨンヌからローカル電車に乗って

バスク地方は、あまり広くありません。町から町へ移動するときは、普通電車や路線バスの旅が多くなります。

今回は、パス・バスク:Passbask というフリーきっぷを使って、バイヨンヌ:Bayonne からドノスティア:Donostia へ普通電車で移動です。ここは、ビルバオとドノスティア間の高速バス移動に次いで、往来が頻繁な区間かも知れません。

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( バイヨンヌ駅に並んだTERアキテーヌのローカル電車 )

旅程は、フランス国鉄:SNCFの電車で国境のアンダイ:Hendaye まで行き、そこで ウスコトレン:Euskotren (バスク鉄道)に乗り換え、目的地ドノスティア (サン・セバスチャン):Donostia を目指すという内容です。約80km、乗車時間およそ2時間の、のんびりした移動です。

久しぶりに、ローカル線風の電車と鉄道風景を楽しみました。

バイヨンヌ駅舎は、白っぽい石でできた、時計塔のある威風堂々とした構えです。最近の経済成長のおかげか、壁を洗い、駅前の改良工事中です。きちんと手入れを怠らない姿勢が伝わってきました。さすがフランスです。時計が全然役に立たないのは、あきらめるしかありません。

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( 時計塔のある堂々としたSNCFバイヨンヌ駅舎 )

きっぷを自動刻印機に通して、使用開始の印字をします。これをやらないと、キセル乗車になります。くわばら、くわばら。インテリアの色使いが華やかで、いかにもフランス風です。

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( バイヨンヌ駅舎内部と改札口付近 )

駅構内には、3本のプラットホームがあり、1番線から5番線まであります。そのうち、真ん中の2番線がパリ方面行き、3番線がアンダイ方面行きのホームです。人は、多くなく、朝夕の通勤時間帯でも、のんびりとしたムードが漂っています。

これから乗るTER Aquitaine (テル・アキテーヌ)という普通電車は、地方政府がお金を出し、SNCFが受託運行している地域内のローカル電車です。連接台車の4両編成の車両は、まだ、新しく、車内もきれいです。

※時刻表は、別のブログ「バスク時刻表2017年メモ」を参照してください。

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電車の出入口は、低いプラットホームに対応するよう床面を低くしてあります。それでも、まだ、1段ばかりステップを昇らないといけないのは、ご愛嬌でしょう。

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( TERアキテーヌ電車側面 )

色とりどりの服を着た乗客が、のんびりとパリ行きのTGVを待っています。ヨーロッパの鉄道駅ならではの旅情を感じる場面です。

その日のアンダイ行き普通は、のっけから45分遅れ。やっと来た電車に乗って終点を目指します。
車内も、温かみのある雰囲気。清潔ですっきりしています。

TERアキテーヌも、自転車持ち込み可。日本のローカル線も、利用客の便を考えて、是非、見習ってほしいです。大前提としては、よほどのことがない限り、全員座れて、まだ空席がある程度の混み具合であることです。

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( TERアキテーヌ車内の様子 )

最近のSNCFでは、普通電車でも自動音声による案内放送があります。

駅を発車すると、
「この電車はアンダイ行きです。次はビアリッツです」
(Ce train est destination Hendaye. Prochaine d'arret, Biarittz. )
と次の停車駅を放送します。

駅が近づくと、
「ビアリッツに着きます」
( Nous arrivons a* Biarittz. )
と、言います。技術の進歩の成果です。

けれども、ご乗車ありがとうございます、とか、ドアに指をはさまれないよう、ご注意ください、とかは決して言いません。

電車は、約40分かけて、フランス南端の国境の町を目指しました。

45分の遅れは、終点までそのまま。そのため、折り返し上り電車も15分遅れで発車して行きました。どうして遅れたのか、最後まで理由は分かりません。


2) アンダイとエンダイア:Hendaye & Hendaia

「Hendaye」は、難読地名です。フランス語では、「ア」ンダイと発音します。アクセントは最初の「ア」にあります。なんとなく、”アンダイエ” などと言いたくなる気持ちは分かりますが、秋葉原が、決してアキバ・ハラではなく、アキハ・バラであるように、ここは、アンダイです。

事態をややこしくしている要因に、Hendayeのことを、スペイン語またはウスケラでは、Hendaia、エンダイア、と言うこともあります。もしかしたら、エンダヤ、と聞こえる方もいると思います。フランス語風の発音をする方は、どうか、最後の母音を独立して発音したくなる気持ちを、ぐっと、こらえてください。

アンダイは、スペインに向かう場合、フランス最後の駅です。駅の構内は広大で、3本のプラットホームの海側には20本以上の線路がある貨物ヤードが広がっています。

シェンゲン協定により、国境の検問が事実上廃止となった現在、アンダイ駅もがらんとしてしまいました。ローカル線の折返し駅の風情です。長くて幅の広いプラットホームにぽつんと停車したTERアキテーヌの電車が、どこがわびしげです。

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( 広すぎるアンダイ駅構内 )

アンダイ駅舎の外観は、30年前と変わっていません。多少、改造していますが、私にとっては懐かしい姿のままでした。

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( SNCFアンダイ駅舎 )
198608アンダイ駅
( 30年前と、ほとんど変わらないアンダイ駅。Gare de Hendaye Sep.1986 )

けれども、内部は21世紀に見合うよう、現代風になっていました。天井の照明は明るくなり、発車案内は電光掲示になって、きっぷの自動販売機も設置されました。フランスとスペインを結ぶ幹線ルート上に位置していることに変わりはないので、駅には、少なくない数の旅行者がいます。

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( アンダイ駅改札と左奥のきっぷ売場 )

接続電車の発車時刻まで余裕があったので、駅の周りをぶらぶらしました。
たくさんの線路の向こうに、国境のビダソア川を隔ててオンダビリアやイルンの市街地が見えます。

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( アンダイ駅付近から対岸のオンダビリア方面を見る )
198609アンダイ駅からイルン方向手前EUSKO鉄
( アンダイ駅付近から眺めたイルン方向。1986年9月 )

かつて、駅前に軒を連ねていた両替屋さんも、ユーロ導入ですっかり消えました。平凡なアパートが並ぶだけの駅前風景です。

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( 雨のアンダイ駅前。左の道路下付近が、EuskotrenのHendaia駅 )

3) ウスコトレンで進む:Euskotren

駅に沿った道路から下を見ると、バスク鉄道こと、Euskotrenの一本きりの線路が、すうっと伸びています。

SNCFの設備や敷地がたいそうな規模であることと比べると、究極のシンプル形です。けれども、旅行者にとっては、ウスコトレンの方が便利な電車なのです。

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( ウスコトレンのエンダイア駅と、奥のSNCFアンダイ駅舎 )

乗換客は、SNCFアンダイ駅とウスコトレンのエンダイア:Hendaia 駅の間100メートルくらいを徒歩で移動します。雨でも、荷物をひきづって走れば、まあいいか程度の距離感です。

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( SNCF Hendaye駅前から見たHendaia駅舎 )

ウスコトレンの駅舎は、海上コンテナ1個分くらいの、こじんまりした空間です。きっぷ売場、2台のきっぷ自動販売機、自動改札機があるので、電車の到着時には、けっこう混雑します。駅員さんが、「降りる人を通してあげてえ」、というように腕を横に広げて、乗車客を止めています。

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( Hendaia駅舎内部。左の青枠がきっぷの自動販売機 )

ひとしきり電車到着時の喧噪が終わると、改札口もプラットホームもひっそりとします。

電車は、ドノスティア方面からやってきて、十数分停車したのち、折り返しドノスティア・アマラ経由ラサルテ行きとなります(Amara,Donostia ---  Lasarte) 。 30分間隔の運転です。Hendaia駅では、朝6時から夜10時すぎまで、まったく同じパターンでの電車折返し風景が、米つきバッタのように繰り返されます。とても、わかりやすい仕組みです。

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( Hendaia駅に到着したウスコトレンの折返し電車 )

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( ウスコトレン最新型900形の車内 )

CAF社製の最新型の900形電車は、丸味を帯びた先頭デザイン、白っぽい色合い、機能的な座席、ごみ落書きがない車内などが印象的です。鉄道サービスや技術レベルが、とても高いことが一目で分かりました。安心して乗っていられる鉄道です。

車内の行先案内や停車駅案内は、スクリーン表示です。言語表記は、ウスケラ、スペイン語、フランス語、英語の順で繰り返されます。

また、放送では、次の停車駅の地名のみ、1回だけ言います。「次は」、に相当するセリフはなしで、チャイムのあと、「アマラ。ドノスティア」という感じです。

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( ウスコトレン900形の停車駅、行先スクリーン表示 )

さて、発車です。
すぐに、国境のビダソア川を渡ります。進行方向右側には、SNCFとスペイン国鉄RENFEの線路が敷かれた橋があります。その向こうに見えるのは、イルンとオンダビリアの境目くらいの街並みです。

写真はありませんが、進行方向左側は国道の橋です。

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( Hendaia発車直後に渡る国境のビダソア川とSNCF/RENFEの線路 )

電車は、ドノスティア・アマラまでは、右側通行で走ります。約40分かかります。

ガイジン客の大半は、サンセバスチャンに行きたいのですが、表示はドノスティアやアマラばかり。サンセバスチャンの文字が少なく、不安になる方もいるようです。ドノスティアが、サンセバスチャンと同じ意味であることや、アマラ駅が、ドノスティアの中心部に近いターミナル駅であることを知らないと、仕方がないです。慣れるしかありません。

途中駅から、少しづつ地元客が乗ってきて、アマラに着くころには、座席の3分の1くらいが埋まっていました。
私も、ビーチと美食の高級リゾート、ドノスティア観光に行くため、電車を降ります。海辺のすがすがしい空気を思いっきり吸いに行きましょう。


4) ドノスティア・アマラの鉄道風景:Donostia Amara

電車はアマラに到着しました。8割方の乗客が降ります。そして、その半分くらいの人が乗ってきます。

アマラ駅は、ウスコトレン最大の駅です。折返し式の配線で、プラットホームのある線路は6本あります。朝から晩まで、電車がひっきりなしに発着しています。そう言っても、日本人感覚では、人も少なく、いつもがらんとしています。

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( ドノスティア・アマラ駅プラットホーム風景 )

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( アマラ駅に並ぶ多くの自動改札 )

アマラ駅正面は、さすがに堂々たる造りです。青い看板に書いてある内容は、駅名ではなく、メトロ・ドノスティアという意味のウスケラ兼カスティヤーノです。駅前は、ちょとした公園になっていて、観光客は、木々の向こうに並ぶ整然とした高級マンション風景に、この地の豊かさを感じてしまいます。同時に、「ここは、安心な町だ」という雰囲気も伝わってきます。

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( アマラ駅正面 )

アマラ駅では、すべての電車が折返します。見ていると、先発の電車が発車したあと、早ければ4、5分もすると、次の電車が同じプラットホームに入線します。ダイヤが正確で、ちみつな運行管理がされていることが実感できます。車両がきれい、混雑がない、待ち時間が少ないことを考えると、日本と同等か、それ以上のサービスと技術水準です。
「ウスコトレン、すごいぞ」、と心の中で、拍手喝采しました。

ホーム脇の側線に停まっている青い電車は、旧型車両です。定期列車は、すべて白色ベースの900形車両で運転されていました。

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( アマラ駅で発車待ちをするウスコトレンの電車たち )

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( 4本の電車が横並びで停車しているのは壮観な眺め )

バスク鉄道こと、ウスコトレンの線路の幅は、JRよりちょっとだけ狭い1000mmです。また、プラットホームは、電車の床面とぴったり同じ高さに作ってあります。そのため、プラットホームに立って線路を見やると、日本の線路風景と、ほとんどウリ二つの光景が展開します。カーブの作り方、ポイントの配置など、いつもの通勤で見慣れている雰囲気そのものです。

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腹ごなしの散歩を兼ねて、アマラから5分ばかり郊外に出て、新興住宅街にある駅に降りました。日本の大都市近郊の私鉄の新線風景と、とても似た光景です。地味な色合い、機能性重視で、デザインで冒険しない抑制の効いた造りなど、日本人に受け入れやすい駅風景です。

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( ロイオラ駅出入口: Loiola )

小規模駅には、普段、駅員さんはいません。自動改札機のうち、必ず1台は通路幅が広く、車椅子利用者や、ベビーカーを押したお客がゆうゆう通れるようになっています。

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( 標準的な自動改札機とプラットホームへの階段など )

駅構内には、広告看板類がいっさいありません。発車案内は、LED電光案内で表示。電車が近づくと、発車案内表示脇のランプが点滅します。自動音声で、「電車がまいります」、とか、「あぶないですから白線の内側へ下がってお待ちください」、と注意放送を行なうことはありません。

乗客は、静かに待ち、電車もあまり音を立てずに到着し、ちょっとだけ、さわさわとしながら客扱い行なって、すうーーっと発車していきます。

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( 駅に着いた電車 )

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( 臨時折返し用のシーサスクロッシングを通って到着するウスコトレン )

「都会の電車だなあ」と、見とれてしまいました。


                                           2018/2月記。2017/9訪問   了

一人旅と外国語会話

一人旅と外国語会話

1) 海外旅行の会話場面

一人旅は、無言の行(ぎょう)ではありません。
意外と外国語の会話をします。私は、口数が多い方なので、雑談や無駄口も多いです。口は災いのもと、です。

「それなのに、どうして一人旅するの?」
「話したくないときに、話をするのはいやだから。行きたいところに行きたいから。奥さんに愛想をつかされているから」

けっこう、わがままな旅行者です。いやな奴かも知れません。

メテオラ2015 (197)
(  ペアで旅するのもいいけれど、一人旅もいいですよ。イメージ写真 )


旅行中の外国語会話は、大きく分けて二種類です。

一つ目は、旅行をするために必要な事務的会話です。
二つ目は、気の向くままに、他の旅行者や訪問先の人とする会話です。

断然、面白いのは二つ目の会話です。けれども、語学力を磨くという点では一つ目の会話が役に立ちます。
ホテルや駅での受付、特にトラブル対応での会話は、必死になりますので、実力がアップします。こうして身についた外国語能力を使い、偶然お会いした旅人や市民の方々との会話を楽しむことができればベストではないでしょうか。

海外旅行中に外国語で会話する場面を、もう少し、細かくひもといてみます。


2) 旅をするための会話と効能

あいさつ言葉につづく事務的な会話では、空港、ホテル、駅、案内所、飲食店、その他のお店、時には警察などの方が相手です。希望や意思を確認をするための会話なので、内容は簡潔明瞭で、具体的です。それぞれの業界用語も出てきます。外国語学習の基礎編と言ってよいでしょう。

そのうち、予約内容を確認したり、買い物や注文をするための会話は、基礎中の基礎です。あいさつ言葉と並んで、語学学習の初級編に登場する内容です。笑顔であいさつを交わせた、希望の切符が買えた、ほしいものを探して見つけられた、という、ささやかな成功体験をすると、がぜん、やる気が出ます。相手国への印象もワンステップ・アップです。

現代では、この程度の会話は、ITデータや人工知能で代用ができるようになりました。スマホに保存した予約画面を見せたり、翻訳モードを利用すれば、ほとんど、一言もしゃべらずに済みます。その分、個人個人の語学力は減退します。

事務的な会話の中で、特に難しいのはトラブル対応です。

混乱した場面で、自分の意思や希望をどれだけ通せるかですので、語学能力は格段に飛躍します。相手の言い回しで語られる状況を必死に理解したり、当方の1回限りの希望を確実に通すために、全身全霊で意思疎通を図ろうとするからです。分からない言い回しを何回も聞き直したり、だんまりや無視を決め込むスタッフに対して、あの手この手で対応を迫らないといけません。ITデータや人工知能でも代用できません。

海外旅行を何回か体験された方々は、たいてい心当たりがある場面だと思います。

そして、トラブルシューティングができたときの達成感は、初級編の成功体験どころの騒ぎではありません。鬼の首を3つくらい取ったときくらいの大きさでしょう。語学力が、知らず知らずにワンステップ上がっていることは、間違いありません。度胸もついています。凡人は、追い込まれないと勉強しない、という理論を地でいくような展開です。

こうして、礼儀正しく、金離れもよいが、世間が狭いニッポン人観光客は、度胸もあり、ノーと言える、グローバルなベテラン観光客に変身します。

だから、平均的な海外旅行記では、トラブルシューティングの場面が、かなり事細かく登場します。

空港で到着荷物が出てこなかったり、ホテルの予約が入っていなかったりすることは、一定の確率で発生しています。けれども、ひとりひとりにとっては、一生に数回あるかないかのレア体験。必然的に、海外旅行体験談の大きな話題の一つになります。

「この前、アメリカ行ったんでしょう。どうだった?」
「面白かった。それよりはさあ、帰りの飛行機がストでキャンセルになって、大変だったんだからもう」
「ふうん」

そんな生返事をしないで、聞いてあげるのが、大人の礼儀です。


3) 旅を楽しむための会話と満足感

一人旅のとき、自分の好みでする会話は、長く記憶に残ります。

その反対に、無理やりさせられる不自然な会話は、すぐに忘れるか、不快なものです。

「ダンナあ、掘り出しものだよ。おおまけして、25ドルだよ」
「うるさいなあ、あっちへ行け」

「ニッポン?ニイハオ!」
「・・・・・・・・・・」と、プイと横を向きます。

うまくあしらうのも、旅の楽しみになれば、人生にも厚みが出ます。すると、運気も上向くようです。

「あの、すみません。駅に出るには、どの道ですか」

道すがら立ち寄ったカフェのおやじに、勘定をしながら、おそるおそる切り出します。
すると、おやじは、英語もフランス語も分からない、という顔をして固まってしまいました。

「ハアイ、あたしが教えてあげる。こっちへ来て」
と英語が聞こえてきました。見ると、カウンターの横から、かなり美形のお姉さんが、笑顔で近づいてきて、表の方を指さしています。
「あなた、アレマ・ホンジャラ通り知ってる?」
「分かりません」
「しょうがないわねえ。途中まで、いっしょに行きましょう。ところで、どこから来たの?」
「日本です」
「わおー」

こういう事始めで、駅についたあと、アンジェラさんとメルアドの交換までしてしまい、何と予定変更で、昼ご飯を食べることになりました。

似たりよったりのケースも皆無ではありません。

「そんな、小説じゃないんだから」、と思う方もいるでしょう。けれども、一生に1回か2回くらい、この程度の縁ならばあります。恋に落ちて、今に至った、という話ではないので、勝手に期待しないでください。

アンジェラさんの存在で、それまでは沈んだような印象だった町も、田舎のゆったりとした風景に見えてきます。いまいち、味付けにパンチがないなあ、と思っていた料理も、家に招かれて食べてみると、一つ星レストランくらいかも、と思える、味わい深い食事になります。食事中の2時間にしゃべった言葉の量は、その国に来て会話した総量の倍くらいです。

ファーストクラスにも乗れず、アンコールワットの入場料60ドルは、ぼったくりだ、とプンプンしている身では、こういう旅の楽しみがないと、やっていけません。

そうわけで、人のご縁があると、また、そこへ行きたくなります。お互い遠く離れているので、「来週、飲みに行こうか」というふうに、からみつくことができません。人間関係は、さっぱりしたまま時間が過ぎるので、私には好都合です。知り合いができれば「御」の字ですが、そこまで行かなくとも、人の印象が良かった国には、また、行きたくなります。

そのため、意外と同じ国、同じ土地へ、旅をしたいなと考えることが増えてきた、今日このごろです。















ビルバオ・メトロというアート

ビルバオ・メトロというアート:Metro Bilbao

1) ビルバオ・メトロという作品

ビルバオのメトロは、地下鉄です。
1995年11月に最初の区間が開通しました。グッゲンハイム美術館ビルバオ分館開館に先立つこと2年前です。

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( ビルバオ・メトロの電車。地下区間へ入るところ )

この電車は、日常の乗り物ですが、ビルバオのイベントのひとつみたいです。人々の目をひくため、デザインも相当考え抜いたのではないかと感じました。設計責任者は、イギリス人建築家ノーマン・フォスター: Norman Foster という人物です。

観光客は、おじけづいていないで、是非メトロに乗ってみたいものです。最低運賃1ユーロくらいの観光名所に入ったと思うと、気分もウキウキします。メトロの駅も車内も、とても安全、清潔です。落書きや物乞い、小銭ドロボーは、バスク人の誇りにかけて、見かけません。日本と同じくらい治安の良いバスクは、世界中の宝と言っても良いでしょう。

私の感じるところ、メトロは、確実にトップ5以内の観光スポットです。

「残りの4つは、何ですか?」
「グッゲンハイム美術館、ビスカヤ橋、ユニークデザイン建築群、グルメですかね」
「うーーん、そんなもんでしょうね。あなたにしては、まっとうな答えなので、拍子抜けしました」
「納得したら、さっそく、メトロに乗りましょう」

乗車前に、ビルバオ・メトロの作品概要を整理しておきます。2017年9月現在の姿です。

*名称    メトロ・ビルバオ:Metro Bilbao
*路線数   3系統。 1,2号線は都心部では合流して運転。3号線は独立した路線。
*シンボルカラー  1,2号線はオレンジ色。3号線は青。

*開業    1995年11月。逐次延伸中。全線複線電化。
*軌間(線路の幅)    1000ミリ ( 日本のJRは1067ミリ )
*通行区分  全線で左側通行。 ( スペインのクルマは右側通行 )
*立体交差  全線立体交差。地下区間または高架区間。
*駅の構造  例外を除き、全駅、上下線別対面式プラットホーム構造で自動改札機設置。ホームドアはなし。
*バリアフリー 各駅にエレベーターあり。
*車両    1,2号線はメトロビルバオ独自の電車。4両または5両編成。
        3号線は、ウスコトレン社が運営のため、同社900系電車4両編成で運転。

*運転本数  朝6時前より夜11時過ぎまで運転。都心部では5分から10分ごとの運転。
*相互乗入れ 2017年4月11日開業の3号線のみ、ウスコトレン線と相互乗り入れ中。
         最長はビルバオ・マティコ駅発ドノスティア・アマラ行き普通電車。
*ダイヤ構成  平日、土曜休日、週末終夜の3本建て。
*終夜運転  金曜夜は終電を2時ごろまで繰下げ、土曜日深夜は終夜運転。

*運賃    ゾーン別運賃。3段階あり、0.90ユーロから1.18ユーロ。
        バリクカード(旧名クレディトラン):barikcard という名称のICカード導入済。 
        カード利用時は割引運賃適用。50回または70回利用割引運賃、シニア割引、年間ベースの学生割引等がある。

*その他   3号線は、ビルバオのロイウ空港まで延伸工事中。開通年未定。


2) メトロの駅で、わくわく、どきどき

ビルバオ・メトロと言えば、ガラスのドームの出入口がシンボルです。とても洗練されたなデザインで、一度、見たら目に焼き付きます。私はガラスいも虫のように感じました。

電車に乗ることをためらっている方でも、メトロの出入口のコメントは忘れません。ビルバオを代表するオブジェを見落とすような観光客は、ほぼ皆無です。

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( モユア広場のメトロ出入口。ガラスいも虫が二カ所あります )

ガラスいも虫は、ビルバオの中心部では、それなりに見かけます。観光客が多いモユア広場には二つあって、思わず、「わあー」と、興奮してしまいます。

「見とれていないで中へ入りましょう」
「はあい」

下の写真は、モユア駅の西隣り、インダウチュ駅の西側出口です。木立がすがすがしい歩道の途中に、にょっきり顔を出しています。
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( インダウチュ駅西口のメトロ出入口 )

ガラスで覆われた地下への出入口そのものは、東京にもいくつかあります。舎人ライナー日暮里駅そばの駐輪場への出入口、メトロ東西線の竹橋駅の出入口などです。けれども、ビルバオのものは、デザインが洗練され、しかも機能美を追求した現代風のシンプルさを感じる分、東京の類似品より、一枚も二枚も上をゆく構造物だと感じます。みなさまの感想は、いかがでしょうか。

東京も、2020年オリンピックがチャンス。是非、すてきなデザイン、記憶に残る機能美を追求してほしいです。

1274日暮里駅いもむし型出入り口
雪の竹橋の午後201801 (1)
(上は日暮里駅駐輪場、下は竹橋駅のガラスドーム )

ガラスいも虫の内部から地上を見上げると、じゃばら風です。外から見たほどユニークな雰囲気ではありません。
メトロの駅は、全部が全部、このタイプの出入口ではありません。大半がエスカレーター用の出入口ですが、ときどき階段のこともあります。どういう理由で、ガラスいも虫式か、その他式か、を選んでいるのか、確かめていなくて、すみません。

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( ガラスいも虫内部 )

例えば、BBVAタワーがそびえるアバンド駅:Abando  のメインはガラスいも虫式ですが、脇の方の出入口は、何の変哲もないスタイルです。

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( アバンド駅のBBVAタワー前のメトロ出入口 )



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( 同じアバンド駅でも、ガラスいも虫式でない出入口 )

ずんずん駅の中へ入ります。

モユア駅の通路には、ノーマン・フォスター氏のサインをかたどったレリーフがあります。ふうーん、と見たまではよかったのですが、写真を撮り忘れました。

メトロ1,2号線の地下方式の各駅の構内は、色合いや寸法がほぼ同じデザインです。駅名標を取り替えれば、どれがどの駅だが分からなくなるくらい、そっくりです。乗降客の多い駅と、少ない駅で、大小の差があってもいいような気がしますが、そんなことはありません。下のモユア駅のように、人通りが多いか、あるいは郊外の駅のように、がらんとしているかだけの差です。

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( メトロ1,2号線は、全駅ほぼ統一デザイン。改札手前のきっぷ自動販売機 )

改札口につながる通路には、かならず切符の自動販売機があります。切符だけでなく、バリクカードの販売やチャージもできます。ウスケラ、スペイン語に加えて英語案内もあります。故障もめったにありません。つり銭もきちんと出ます。

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( メトロのきっぷ自動販売機。英語案内もあります )

私もバリクカード:barikcard を購入して、電車乗り場へ向かいます。

旧名はctb = Credit Tran Bilbao らしいのですが、2017年現在、当局は ”barik card ” 一本で押してきていました。

340バリクカード表面
( バリクカード表面 )

モユア駅のメトロの改札口です。ヨーロッパの標準的な装置です。

どこの駅も必ず改札口が二カ所あります。けれども、二つの改札口は、構内でつながっていません。反対側の出入口に降りてしまったときは、地上で遠回りをしてホテルや観光スポットに向かうしかありません。

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( メトロの改札口。全駅統一デザイン )

改札をとおり、プラットホームへ降りてきました。
銀色と灰色の壁、通路、手すりで統一された構内は、やや前衛的な雰囲気です。SF映画の宇宙船の通路のような雰囲気です。広告類は、いまのところ一切ありません。

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( メトロのホーム。大きな断面のトンネルで、広々感を出している )

バリアフリー対策も完璧で、全駅にエレベーターが設置され、専用の自動改札を通って電車に乗り降りできます。

21世紀を見据えたプロジェクトなのに、ホームドアがないのが、やや不思議でした。そこまで混雑しないと見たのか、うっかり設計忘れか、真相は調べていません。勉強不足をおわび申し上げます。

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( バリア・フリー用のメトロのホーム・エレベーター。改札も独立仕様 )

当然、駅名標も統一デザイン。
カラーリングは、1,2号線がオレンジ色、3号線が青色です。
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( メトロの駅名標と各種案内。1,2号線はオレンジ、3号線は青がシンボルカラー )


3) いろいろな電車体験

メトロでも、案内放送や、電車接近のチャイム類はいっさいありません。ホーム上には、次の電車が何分後に到着するかを知らせる電光掲示板が下がっています。また、電車が入ってくる直前になると、ホーム上の照明が、パアッと、一ランク明るくなって、乗客に注意を促しています。

「あぶないですよ!!黄色い線の内側を歩いてくださあーーい」と、マイクでがなり立てるようなことはありません。ビルバオ・メトロがデフォだと思っているバスク人が、東京のメトロに乗ると、人の多さにびっくり、次に、注意放送の騒々しさに、「四六時中怒られているみたい」、という感想をもらすかも知れません。

ビルバオ市民は、あまりおしゃべりせずにメトロに乗っていますので、駅の中も大変静かです。

こういうところが、多くの日本人旅行者のみなさんが、「バスクは、スペインじゃないみたい」と感じる原体験のひとつです。私も、そのとおりだと思います。

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( ホームに入ってきたメトロ1,2号線の電車。左側通行です )

1,2号線の電車の車内です。シンプルで機能的なデザインです。開業以来20年以上経っているのに、メンテがしっかりしているせいか、あまり古さを感じません。

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( メトロ1,2号線電車の車内 )

メトロの路線は、都心部から離れると地上に顔を出し、高架区間が多くなります。高架の駅も、それなりに軽快なモダンデザインです。

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( メトロ地上区間の駅と電車。ブエルタ駅にて )

平日の朝、郊外から都心へ向かう通勤時間帯の電車に乗ってみました。

9月の日の出は午前8時ごろです。曇り空が、ようやく明るくなってきたエチェバリ駅:Etxebarri  都心方向のホームは、途切れない程度に通勤客が電車を待っています。各乗車口に数人ずつ並ぶほどでもありません。電車は、4,5分間隔で発車しますが、見ていると、全員座れます。モユアまで約10分です。

感覚的ですが、朝の通勤電車より、ランチタイム時や夕方帰宅時の電車の方が、混んでいるような気もします。みな、一目散で食事をとりに家に帰ったり、待ち合わせ場所に向かうので、人が集中しやすいのです。

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( 郊外のエチェバリ駅の朝8時ごろの上りホーム風景 )

4) メトロ3号線登場

2017年4月11日にメトロ3号線が開業しました。
ウスコトレン社の経営なので、全体の雰囲気は、ウスコトレンの地下区間みたいな感じです。在来線と相互乗り入れも始まりました。1,2号線とは、東京メトロと都営地下鉄のような関係ですが、サービスは縦割りではありません。

3号線もビルバオのメトロの一部なので、運賃体系は共通、駅の造りや案内方法も1,2号線と極力似せてあります。当たり前と言えば、当たり前のことをやっているまでです。

キーとなる駅は、サスピカレアク / カスコビエホ駅: Zazpikaleak / Casco Viejo です。1,2号線との乗換駅であり、ビルバオの都心部に一番近い駅です。昔風のビルの間に割り込むようにしてガラス張の明るいイメージの駅舎を造りました。

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( 新装なったサスピ・カレアク / カスコ・ビエホ 駅出入口。 赤1,2号線、青3号線の表示 )

メインの出入口は、ガラスいも虫デザインではありません。中に入ると、左右すぐのところに3号線改札、中央のエスカレーター下に1,2号線改札があります。両系統を乗り継ぐときは、いちど、改札を出たり入ったりしますが、運賃は通算されます。

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( 1,2号線と3号線の乗換場所。系統別の改札で、エスカレーター下が1,2号線改札 )

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( サスピカレアク / カスコビエホ 駅の系統別出口、通路案内 )

3号線は、開通直後なので、駅も電車もピッカピカ。ホームに蛍光灯の光がきれいに反射しています。まだ、乗客は多くないので、電車はかなりすいています。

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( 3号線の青い駅名標、案内表示。サスピ・カレアク / カスコ・ビエホ駅 )

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( ククヤーガ・エチェバリ駅に停車中の3号線始発電車と、左アチューリ行き在来線 )

3号線の東の終点が、ククヤーガ・エチェバリ駅: Kukullaga Etxebarri 。相互乗り入れの接続駅です。古い駅を、全面的に改修したので、新駅とみまごうばかりのピカピカ度でした。


ビルバオ・メトロをだいぶ楽しんだので、最後に夜景をみてみましょう。

朝の暗いうちや夜間に、ガラスいも虫の駅に行くと、明かりが曲面ガラスに反射して、華やかな雰囲気です。雨に濡れた歩道にも光が当たり、いつもより多くの光の点が映っていました。

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( 闇に煌々と輝くビルバオ・メトロのガラス・ドーム出入口 )

なかなか幻想的な雰囲気が出ていました。

                                             2017/9観光、2018/2記   了


ビルバオめぐるトランヴィア

ビルバオめぐるトランヴィア   2017年9月


1) トランヴィアに乗ろう

トランヴィア:Tranvi*a は、2002年開業のLRT:Light Rail Transit です。

あえて訳せば、ビルバオ市電ですが、昔ながらのチンチン電車ではありません。バリアフリー、低騒音、低運賃、芝生軌道、現代デザインの、弱者と環境にやさしい21世紀を意識した乗り物です。
線路の幅は、ウスコトレン、メトロと同じ1000ミリメートル。日本のJRや大部分の私鉄より軌間が67ミリほどせまいだけの狭軌鉄道です。

大きな曲面ガラスと、縦幅の長い窓の黄緑色のイメージの電車は、とてもスマート。ビルバオの新しいビル群にお似合いです。街中歩きで目にすると、絶対に乗りたくなる乗り物です。安全、安心ですので、おじけづかずに乗りましょう。

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( グッゲンハイム付近の芝生軌道を走るビルバオのトランヴィア )

トランヴィアは、グッゲンハイム美術館と同じように、今世紀のビルバオをリードする存在です。観光にも便利な電車で、カスコビエホ脇のアリアーガや、グッゲンハイム、高速バスターミナル直結のサン・マメスなども通ります。居ながらにしてビルバオの過去、現在、近未来が見えます。テーマパーク内の乗り物気分です。
運賃は均一制で、バリクカードで0.73ユーロ、現金で1.5ユーロ(2017年9月現在)です。全線の所要時間は22分。昼間は10分ごとの運転です。

車内でウトウトしても、スリはいません。でも、キセル乗車は絶対にいけません。

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( トランヴィアの車内。ワンマン運転。ほとんど混まない )


2) 始発駅は地味に

トランヴィアの東の起点アチューリ:Atxuri です。近郊電車ウスコトレン:Euskotren のアチューリ駅前が停留所です。2017年4月から、ウスコトレンの半分以上の電車が、都心部に近いカスコ・ビエホ方面に行くメトロ3号線と相互乗り入れを開始したので、アチューリ駅は、かなり寂れてしまいました。

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( アチューリ駅前に停車中のトランヴィア )

アチューリ駅は、ウスコトレン、日本語訳バスク鉄道のビルバオのターミナル駅として建設されたので、装飾も凝っている堂々たる建物です。

トランヴィアは、乗車前にバリクカードをタッチするか、きっぷを買って自分で改札機に通します。電車内で、カードをタッチしたり、現金精算することはできません。ビルバオ・ルールですから、慣れるしかありません。

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( バリクカードのタッチ装置 )

トランヴィアのカード・リーダーです。始発のアチューリで写真撮り忘れたので、アバンド停留所のもので代用です。
カードがない人は、自動販売機できっぷを都度買います。少額紙幣も使え、つり銭もきちんと出ます。
きっぷを買ったら、乗車前に、赤い矢印の先にある、自動消印装置にきっぷを差し込んで、使用済み状態にします。ヨーロッパで、よくある方式です。

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( トランヴィアのきっぷ販売機 )

黄緑色の自動販売機は、大型で、とても頑丈そうです。数時間おきに係員が回ってチェックしています。几帳面なバスク気質を反映して、故障やつり銭切れを見たことはありません。つまり、検札のとき、”機械の故障できっぷを買えなかったとか、タッチ忘れた”、という言い訳は99.99%ウソ、です。

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( トランヴィアの運転席 )

トランヴィアの一番前に乗ると、運転手さんと同じように前方の景色が見えます。童心に帰って、わくわくしながら眺めるのがいいかも。
スペインでは、運転席かぶりつきのような鉄道趣味はないので、もしかしたら、運転手さんが気味悪るがるかも知れません。

「信号よし、出発進行!」


3) 静かに走ろうビルバオ

スペイン人はおしゃべりです。
けれども、トランヴィアもメトロもバスも、ビルバオの乗り物の車内はたいてい静かです。

ニッポン:
「ご乗車ありがとうございます。この電車は、ラ・カシーヤ行きです。後ろ乗り、前降りです。運賃は170・・・エンです。カードリーダーに、ピッという音がなるまでタッチしてください。車両なかほどに優先席がございます。急ブレーキにご注意ください」
(運転手さんの肉声で)「14時50分発ラ・カシーヤ行きです。あと1分少々で発車です」
「ドアが閉まります。ご注意ください」
(運転手さんの肉声で)「ドア閉めまーす」

ピンポーン「次は、リベラです。お出口は右側です」
LEDの文字表示は、日本語、英語、中文、ハングルが、繰り返し流れるように出ています。

うるさいぞお!!音声案内は日本語しかないし、ガイジン客はどうすればいいんだ。

トランヴィア:
電子音で、ププーーー”。ドアが閉まって、静かに発車。案内放送は一切なし。

ポーン「リベラ」
LEDの文字表示は、アルファベットで書いた駅名がずっと表示されているのみ。

たった、これだけです。無口なスペイン人のようです。

少しは、静かなトランヴィア車内を見習ってほしいのですが。


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( リベラ停留所。左がラ・リベラ市場(いちば) )

アチューリから、4つ目の停留所プラサ・バロハまでは単線です。三連接車体の電車が、くねくねと旧市街脇の狭い道を急カーブ、急スロープでゆっくりと走り抜けます。途中、アリアーガで必ず上下線の電車が交換します。道路上を走るので、トランヴィアは右側通行です。


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( アリアーガ停留所に入るラ・カシーヤ行きトランヴィア )

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( アリアーガ停留所では、必ず電車交換 )

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( アリアーガ劇場を回り込み、アーレナル橋を上り勾配で渡ると、アバンド停留所 )


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( 急カーブを過ぎてアバンド停留所に着くアチューリ行き )


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( アバンドから、再び急カーブ、急スロープでネルビオン川左岸に出る )

線路は、ネルビオン川沿いに出た付近で複線になります。少し走ると、芝生軌道になります。環境にやさしいトランヴィアの名前に負けない風景の中を走ります。


4) クライマックスはグッゲンハイム

ネルビオン川沿いからグッゲンハイム、ウスカルディナ付近が、トランヴィアでもっともダイナミックな風景が展開する区間です。川沿いの公園や、美術館、高層ビル、センスのよいホテルやマンションを右や左に見ながらトランヴィアは、少しゆっくり目に走ります。歩くのが面倒な方は、この付近の車窓風景を楽しまれますように。

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( スビスリを遠目に見てトランヴィアは走る )

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( グッゲンハイム美術館の下をくぐるためカーブ )

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( グッゲンハイムの下をくぐるトランヴィアの線路 )

電車は、きちんと次の停留所を自動音声で告げてくれます。

ポーン。「グッグ(ン)アイム」
「・・・・・・・・・・・」
「旅のお方、グッゲンハイム美術館はここですよ」
「えっ、ほんとだ。ありがとうございます」
「よい、いちにちを」

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( Guggenheim 停留所。美術館より、ちょっと西側にある )

グッグアイムを過ぎると、しばらく新しい公園の中を走ります。イベルドローラ・タワーや、ウスカルドゥナを見やると、電車は左にカーブして、緩やかな坂道を上り始めます。サビーノ・アラナ大路です。
初秋のさわやかな風が、並木をさわさわと揺らしていて、とても清々しい気分でした。

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( Avenida Sabino Arana。 トランヴィアの線路は、植樹帯の左にあります )


5) いきいきサン・マメス停留所

”サン・マメス”

アスレティック・ビルバオ・サンマメス・スタディアム下車停留所です。
旅行者の多くにとって、馴染み深くなった地名です。だんだんビルバオ市民のような気分になってきました。
「メトロ、RENFE、FEVE、高速バスご利用の方はお乗換です。バスク大学本部行きノンストップ・バスご利用の方は、進行方向前方にお進みください」、とは、トランヴィアでは放送しません。

若い人が、いっぱい居て、現代的なビルがたくさんあって、山の緑も目に入る、この停留所が、私はけっこう好きです。

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( 2枚とも、サン・マメス停留所。背後はバスク大工学部校舎 )

サン・マメスを出たトランヴィアは、「コ」の字形に、高速バスターミナルを周り込むように走ります。頭を東に向けたところで出た大通りが、アウトノミア通り:Autonomia です。新市街を、ぐるっと大回りした感じで、ラスト区間に入ります。


6) 終点、ラ・カシーヤです

ちょっとだけ、ガタゴトと音を立てて、電車は終点ラ・カシーヤ: La Casilla に到着です。バスしか接続しない、中途半端な場所ですが、近隣住民の方が、けっこう乗り降りしています。

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( ラ・カシーヤに到着するトランヴィア )

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( ラ・カシーヤで折返し待ち )

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( ラ・カシーヤ終点から東の都心部方向は、線路が途切れておしまい )

いったん、車内の客となれば、徒歩観光にも劣らず、さまざまなビルバオ風景が見られます。
乗っても損はない電車のミニ・トリップです。

「ここから、どうやって次に進めばいいんでしょうか?」
「斜め左前方あたりを目標にして15分か20分歩くと、モユア広場に出ます。次は、歩いてビルバオを楽しみましょう。ちなみに、バルは、左折して歩いて行くとあります」
「ありがとう」

メモ2002年開業 約5.5km 22分



夏が来ればカストロ・ウルディアレス

夏が来ればカストロ・ウルディアレス:CASTRO URDIALES


真夏のバスクは、バカンス・シーズンです。
普通の市民でも1カ月くらい休みます。

バカンスの一番人気は、自前で持っている海沿いの別荘で、ずっと過ごすことです。
一軒家を持っているリッチな方もいますが、大半は、海の見えるリゾート・マンションで夏休みです。私たち日本人とは、ちがう感覚です。いや、暮らし向きが豊かなのかも知れません。

かつて、そういう海辺のリゾート地へ寄ったことがありました。
カストロ・ウルディアレス:Castro Urdiales という名の、地方レベルのリゾートです。ビルバオから西へ約30km、ここまで来るとバスク州ではなく、隣のカンタブリア州です。けれども、生活圏としては、ビルバオ近郊の町です。

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( 晩夏のカストロ・ウルディアレスのビーチと町はずれの要塞跡 )


カストロウルディアレス海辺の風景198607 (4)
( カストロ・ウルディアレス市街とリゾートマンション 1986/9 )


カストロウルディアレス海辺の風景198607 (3)
( カストロ・ウルディアレス漁港と旧市街風景 1986/9 )

普段は、のどかな漁港風景が広がり、マンションの立ち並ぶリゾートエリアにポツポツと人が歩いているくらいです。けれども、夏休みや春秋の週末は、別荘族で大賑わい。ここからビルバオの職場までクルマで通う人もたくさん出現するようです。それでも1時間弱の通勤時間。
「人間らしいなあ」、のひとことに尽きます。


さらに西へ進み、ビルバオから50kmほど離れると、ラレド:Laredo という、かなり有名なリゾートがあります。何でも、スペイン王族も、たまに来るとか、来ないとかの町だそうです。

江の島みたいな海に突き出た岩山が美しい、遠浅のビーチを擁した典型的なリゾートタウンです。

ラレドには、白砂のビーチを取り囲むように、白壁のリゾート・マンションが林立しています。建物のデザイン、色調が似ているので、街並みを鳥瞰すると、統一感があり、とてもすっきりしています。

よく考えると、日本人が理想とするビーチ・リゾートのイメージです。

1LDKか2LDKのマンション価格は、本体価格のみで800万円から2000万円くらいです。こじんまりしたマンションなら、買ってもいいかなと思います。

LaredoFreePhoto2018
( (参考)  ラレド:Laredo の遠浅のビーチ、フリーフォトより引用 )


laredo free photo 2018
( (参考) ラレド:Laredo に立ち並ぶリゾートマンション群。フリーフォトより引用 )


けれども、ラレドのような整った眺めが一朝一夕にできるものではないことは、現在の日本の都市景観、リゾート景観の、ばらばら感を思い出せば納得できるでしょう。

気持ちはゆったり、街並みはすっきりしたいなあ、と思います。

「どこから手をつければいいのでしょうか?」

「まずは、ゆったり休むことです。正社員、1年以上勤務した契約社員、派遣社員には、例外を認めず、最低連続10日勤務日の休暇を義務付けてほしいです。仕事も義務、休みも義務、です。街並み整理には10年単位の努力が要りますけれども、バカンス事始めは、今からすぐにできます!」

コツは、非正規雇用の方も、しっかりサポートするだと思います。そうしないと、「休暇中に、派遣さんに仕事を取られるのではないか」と、正社員の方が疑心暗鬼になり、職場が総すくみになって、おちおち休めなくなるからです。

いかがですか。ニッポンもいいところですが、バスクの良さにも学びたいと思います。

                                                        2018/2 記   了

クジラ去りしベルメオ

クジラ去りしベルメオ:Bermeo

ベルメオに寄ってみました。

ウスコトレン:Eusokotren  こと、バスク鉄道で、ビルバオから1時間20分なので、ちょっと時間に余裕があれば、半日で往復できる観光ポイントです。

漁港を取り囲む、丘の上の旧市街を、ちょっとだけ歩いてみました。バスクムードが漂う建物はカラフルな色合いです。観光ポスターにも盛んに登場します。

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( ベルメオ旧港の典型的風景。カラフルな家並みと居並ぶレジャー船 )

こういう光景は、付近一帯の漁師町ならではもの。レケイティオ:Lekeitio  なども観光客に人気のようです。

ベルメオでも、いわゆる新市街に出ると、現代風の中層マンションが並んでいます。二階建てくらいが多い日本の中小の港町風景とは、この点では異なります。

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( ベルメオ駅は半地下式。背後は新市街 )

ベルメオ駅は半地下式です。駅前に帆船のモニュメントがあり、港町気分を引き立てています。

駅前通りに出ると、ウスケラ:Euskera  、つまりバスク語のみの道案内標識が早速に目に入りました。この辺は、もうウスケラ話者が当たり前のように住んでいる地域です。ちょっと離れたところには、いわゆるスペイン語標識もあるので、旅行者でも心配いりません。

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( ウスケラのみの案内表示。真ん中は”旧市街”表示 )

駅前から見える公園の奥の方が、ベルメオ観光の中心、旧市街です。

雲が低く垂れ込め、雨も降りだしてきました。今日は、秋雨にむせぶベルメオを見るしかありません。

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( ベルメオ駅前から左ネストール劇場 中央ラメラ公園、奥が旧市街 )

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( 坂の上からベルメオ新港と、ラメラ公園を隔てて旧市街の丘を見る )

丘をひとつ回り込むと、旧港に出ました。漁船とレジャー船が半々に並んでいました。

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( ベルメオ旧港の波止場から見上げた旧市街 )

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( 坂の上から旧港を見下ろす )

漁港なのに、現代のベルメオは、あまり生臭くありません。

ここは、18世紀ごろまでクジラ漁で栄えた町ですが、乱獲によりクジラが絶滅すると、漁港としては次第に活気を失ったようです。クジラ問題は、とてもナーバスなテーマです。観光客は、歴史として知るだけが無難なようです。

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( 雨にむせぶイサロ島と右、ムンダカ対岸の山 )

海の彼方には、ムンダカ:Mundaka からも見えるイサロ島が雲間に鎮座していました。
降りしきる雨音だけが、海に響きます。

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( 市内のところどころにある漁師の像 )

街歩きコースの途中には、ところどころ休息スペースがあり、昔をしのぶように漁師一家の像が建っています。家事をしていたり、頭上にカゴを乗せて行商する、おかみさんの像もありました。

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( 新旧市街の境目にある漁師のおかみさんの像 )

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( 旧市街を囲んでいた城壁の出入口わきの立像 )

旧市街は、坂道がいっぱいあります。それでも小一時間歩けば、だいたい一周できます。途中で、バル兼食堂に入って、一休みしました。駅のそばの公園脇の広場にもピンチョス・バルが数軒あり、観光客も立ち寄ります。もちろん、路地裏のバルに入っても、みな、親切に旅の者の注文を聞いてくれます。

デラックスなレストランこそありませんが、バスクなので普通のお店でも、食のレベルは高いです。

道すがら、一応、市の中心にある市役所と、真向いにあるサンタマリア教会も見て、駅へ戻りました。

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( ベルメオ市役所前広場。左が市役所、右はサンタマリア教会 )

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( サンタマリア教会正面と鐘楼 )

バルを出ると、雨脚がいっそう強くなっていて、歩いている人もめっきり少なくなりました。大粒の雨が、石畳の道に音をたてて降り注いでいました。昼間なのに、少し寂しげな雰囲気になりました。

バスクの雨は、1時間くらいすると小降りになることが多いので、あせらず、あわてず天気の回復を待ちましょう。

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( 雨脚を増したベルメオ旧市街の通り風景 )

ほらね、雨もやんで視界もはっきりしてきました。


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( ベルメオ新港。右は船のモニュメント )

バスクの漁村風景を残す町、ベルメオに別れを告げましょう。
「アグル!」 ( またね )


                                          2017/9観光、2018/2記    了

彼女と見つめたい海ムンダカ

彼女と見つめたい海ムンダカ:Mundaka

バスクの海は、どちらかというと、物憂げな表情をした海です。

緯度が北にあること、バスクを含むカンタブリアの海岸が北向きで、自分の前に影が出やすいことが理由のような気がします。 

地中海の明るいビーチが、屈託なく遊んだり、ナンパする海だとすれば、バスクの海は、二人で寄り添って、じっと見つめたい海です。

かつて訪れたムンダカの海は、オレンジの夕陽に照らされ、静かに水面を揺らしていました。磯に張り出した公園に、しばしたたずんで、波が打ち寄せる音を聞き、黒くなってゆく風景を見つめていました。


ベルメオMundaka港公園198607夕方のビスケー湾
( ムンダカ港付近よりカンタブリア海とイサロ島の夕暮れ 1986年 )

その海を、再び見つめるために、ムンダカに向かいました。

ゲルニカから電車で約20分、北へ向かって走ります。

ウスコトレン:Euskotren の電車は、ゲルニカをあとにすると、ウルダイバイ自然保護区: Urdaibaiとなっている湿地帯の西側を延々と走ります。湿地の彼方には、木々に覆われたバスクの丘陵が続いています。小雨模様ですが、緑がいっそう濃く映え、日本の田園風景と重なります。

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( ゲルニカ郊外の車窓風景 )

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( ウルダイバイの湿原を間近に見ながら走る )

電車は、一駅ごとに海に近づき、小さな入り江やヨットハーバーが目に入るようになります。

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( ウルダイバイの河口付近。エスチュアリーと呼ばれる地形 )

ムンダカ:Mundaka 駅到着です。数人のお客をパラパラと下ろした青い電車は、ガッタンと音をたてながら去っていきました。

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( ムンダカ駅プラットホーム。電車はベルメオ行きの下り )

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( ムンダカ駅舎。集落の西はずれにある )

ムンダカの集落は、他にも増して静寂が支配的です。観光客はほとんどいません。小ぎれいなバスク風出窓が目立つマンション街や、旧役場、いまやヨットが主人公となった港を見ながら、海辺の公園まで歩いてきました。

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( 昼下がりのムンダカの目抜き通りと、ビスカイバス )

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( ムンダカ港近くの広場と、バスク風マンション )

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( ムンダカ港と、イサロ島遠望 )

港と隣り合わせの公園に、久しぶりに立つことができました。
海と山と川の風景を、ひとつひとつ視野に入れていきます。

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( ムンダカ港公園と、木立の背後の集落風景 )

ムンダカ港の防波堤の先には、イサロ島:Izaro が横たわっています。

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( ムンダカ港公園よりイサロ島遠望 )

低い雲がおちてきそうな2017年のイサロ島風景ですが、波は、あくまで穏やか。バスクの海と向き合う感慨にひたります。

” ムンダカの、雲をささえるイサロ島 ”

ベルメオMundaka港公園198607夕方のビスケー湾
( 茜色に染まったイサロ島風景を思い出す )


視線を、河口の対岸に移します。

三角江と訳されるエスチュアリーと、ゆるやかな山々の風景はいつまでも変わりません。ちらりと、バスク地方特有の灰色の石灰岩むき出しの山肌がのぞいています。天気により、霧にむせび、あるいは、秋の夕陽にオレンジ色もあざやかに輝きます。

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( ムンダカ港より、東の海岸線と石灰岩質の山を遠望 )

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( エスチュアリー対岸の奥を見る )

ベルメオ198607ムンダカ港公園より上流を見る
( オレンジ色に染まるムンダカ付近のエスチュアリー 1986年 )

エスチュアリーの奥の方にも目をこらします。ゲルニカ付近の山々は、あくまでも優しく、そして青く鎮座しています。

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( 雲が低いので、ゲルニカあたりは霞んでいる )

198709ムンダカからウルダイバイ方向の夕方
( 夕暮れが美しいムンダカのエスチュアリーとゲルニカ方面 1986年 )

なんか、室生犀星の一文を思い出してしまいます。

「ふるさとは、遠きにありて、思ふもの。 そして、悲しくうたふもの 」

実際は、ふるさとでも出生地でもありません。バスクに来て喜んでいます。それでも、何か帰ってきたような気分になり、また、去らねばならないと思うのでしょう。これが、私のバスクの風景です。

三度目は、やっぱり晴れの日に来たいものです。


                                       2017/9月訪問。2018/2記   了












ゲチョのアイセロータの海風

ゲチョのアイセロータの海風


ビスカヤ橋右岸のゲチョ市:Getxo はビルバオ都市圏の衛星都市です。ニッポン人にとっての知名度はいまひとつですが、実は、スペイン屈指の高級住宅街のひとつです。

ビスカヤ橋観光の前後に時間を作り、是非、街中をふらついてみましょう。豊かなバスクの、さらなる奥の深さを感じます。家の値段を聞いて、さらなるバスクの奥の深さにため息がでます。

ビスカヤ橋右岸の遊歩道を海に向かって歩いて行くとビーチに出ます。遊歩道は、浜辺に沿って彼方の崖の方までずっと続いています。右手の公園には、ビルバオ港の繁栄をたたえる大きなモニュメントが建っています。

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( ゲチョのビーチの遊歩道 )

海には、ビルバオの新客船ターミナルが突き出し、明るい雰囲気のショッピングモールやヨットハーバーが並んでいます。もう、これだけでセレブな気分を感じます。

運がよいと、大型クルーズ船が停泊している場面に出会えます。実際は、ビーチで寝転ぶ美女の方に視線が移ります。

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( ビルバオ新旅客船ターミナルとヨットハーバー )

ヨットハーバー前から、海岸が湾曲するあたりにかけての一帯が、超高級住宅街です。豪邸というより、小さなお城のような邸宅がビーチに沿って連なっています。

こうした邸宅のオーナーは、イギリス系スペイン人がほとんど。19世紀末、イギリスからここにやってきて製鉄業や造船業で財を築いた経営者たちが、きれいな空気と広い場所を求めて、ゲチョに家を構えたのが始まりです。竣工当時は、成金趣味だったようなデザインも、築100年を超すと、風格が出てきています。

ビーチの裏側の幹線道路を走って、邸宅の数々を見ました。
「ほんとに、ここスペイン?」、という光景が広がっています。

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( ゲチョの幹線道路と海沿いの邸宅 )

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( ビーチを眺める高台にそびえる豪邸 )

海沿いに比べると、内陸側の住宅街は、超がつかない程度の高級住宅街です。どちらにせよ、私の財力では、手がとどかない物件ですが、お城ふうの家を見た後だと、何かほっとしました。

本当は、これでも、かなりの豪邸です。芦屋と田園調布のレベルを超えています。生活道路に至るまで電線は、まったく張り巡らされていません。道沿いに看板や標語がペタペタ張ってあることもありません。緑に囲まれた敷地のなかに、品のよい家が、静かに並んでいました。

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( ゲチョ内陸地区のバス通りと住宅街 )

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( ゲチョ住宅街の細い生活道路風景 )

内陸部の高級住宅1軒のお値段は、不動産会社のwebsiteで、おおまかな感覚はつかめます。税別で、最低200万ユーロ以上です。3億円弱です。海の見える物件は、最低でも350万ユーロくらいします。

「IT長者さま。是非、1軒購入し、社員も泊まらしてやってください”ゲチョに家があってね”、なんてセリフが出ると、絶対に、他人のあなたさまを見る目が変わります!」

個人宅には入れないので、同じ造りのガーデンレストラン「ヨラストキ」:Jolastoki、に入って、耳あか程度のセレブ気分を味わいました。

このあたりは高台なので、目をこらすと、ビスカヤ橋の頂上部が遠くに見えます。午後の熱気で、鉄塔がかげろうのように、ゆらゆらと揺れて見えました。

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( レストラン、ヨラストキの正面玄関への道 )

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( ビスカヤ橋は遠きにありて、かげろうのごとし )

ビーチ沿いに戻って先へ進みます。白っぽい石灰岩がむき出しの崖を回り込むと、昔の漁師町の雰囲気を残した一角に出ます。産業革命が始まるまでは、ゲチョは、小さな漁港だったことを思い出させる観光スポットです。

ポルト・サーラ:Portu Zaharra という地区です。
またまたウスケラ:Euskera  の単語です。カンの良い方は想像がつくと思いますが、”古い港”という意味です。ここまで足を伸ばす人は、バスク度が高めなので、ウスケラも頭ではなく、肌で感じるようになってきているはずです。

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( ポルト・サーラの岸壁 )

ポルト・サーラには、バル、レストラン、ブティック兼お土産屋さんが石畳の坂道に沿って並んでいます。近隣の人々が、夕暮れときや週末にぶらぶらするには、お手頃な場所です。ガイジンは、ほとんど見かけません。

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( ポルト・サーラという名前のバル。内部はレトロ調 )


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(  雨上がりのポルト・サーラのバル&ブティック街 )

少なくない数の日本人旅行者が、ビスカヤ橋両岸のバルやレストラン体験をおすすめしています。是非、もっと足を伸ばして、ポルト・サーラ散策も検討ください。市バスでも来ることができます。本当は、品のよい芸能人でも来て、絶賛してくれると、バスク人気が、さらにアップするのですが、なかなかうまくいきませんね。

私に言わせれば、ちょっとくらい日本人が増えたって、人数的には、まだまだ、たかが知れています。ゲチョの雰囲気が壊れることはありません。肝心なことは、まず、バスクに来ることです!

ポルト・サーラを過ぎて、白い崖の先端の方まで来ました。

芝生の先に雑草が茂る、半分、野性的な公園です。アイセロータ:Aixerrota  という名前です。ウスケラで、”風車”、という意味です。昔ながらの風車が1基、ぽつんと残っていて、手ごろなランドマークになっています。

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( アイセロータ公園:Aixerrota /  Mirador Aixerrota )

風車に隣接して、クビータ:Cubita という名前の、高級レストラン兼バルがあります。みんな「アイセロータのレストラン」と呼んでいるようです。少し洒落た服に着替え、彼女といっしょに夜景を見ながら夕食をすると、とてもさまになるお店です。

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( アイセロータのレストラン、クビータ )

アイセロータ公園一帯は住宅街なので、景色を見る人、子供を遊ばせる人が混在しています。

澄み切った青空に輝いている太陽も、傾き始めました。

「 夕陽待つ、ゲチョの海原、輝きて、バスクの山に、雲はたなびく」

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( 夕方近くのゲチョ対岸の眺め )

芝生にすわり、少しずつ影を濃くしていくゲチョの街並みや、バスクの山々を、しばしの間ぼうーっと眺めていました。
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( ゲチョの海沿いの住宅街。左奥の彼方がビルバオ )

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(ネルビオン河口と、対岸のサントゥルティ市街。その左がポルトガレーテ方向 )

ちょっと、近所の公園に散歩に来た気分です。海風に当たっていると、うとうとと眠くなる心地よい空間です。バスクの適度な湿り気、濃い緑、おだやかな気質の人々に囲まれていると、家だか旅先だか分からなくなります。

ゆっくりとたなびく雲を見ながら、腰をあげました。


2017/9観光 / 2018年2月記     了



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