ミラノの団地風景        2018年3月訪問

1)ミラネーゼの住

ミラノ生まれの人たちは、みんなミラネーゼです。

ミラネーゼは、おしゃれというイメージがあります。実際、衣食住のうち、「衣」の評価はピカ一です。

その反面、食と住については、あまり芳しい状況ではありません。食ですが、ミラノを含むロンバルディア一帯の料理は、イタリアの中では低評価です。住についても厳しい状況です。ミラノは、郊外も入れると人口330万人くらいの大都市なので、一般市民の住まいは相対的に狭く、不動産価格や家賃も高止まりです。

このようなことを、ぶつぶつ唱えながら、平均的なミラネーゼの暮らすマンションというか、団地に行きました。

ミラノの中心部のドゥオーモから、地下鉄で約20分のボノーラ:Bonolaという地区です。家から都心部のオフィスまで、ドア・ツー・ドアで40分弱の場所です。

Cri家ボノラ駅BONOLA周辺20180323
( メトロ1号線ボノーラ駅 )

2)マンション風の団地かな

ドゥオーモ付近から、地下鉄で15分くらい乗ると、あたり一帯は、近代的な建物ばかりになります。都心部の建物も、空襲で破壊されたものを元の姿で再建したものが多いので、近代建築なのですが、郊外に出ると、名実ともに戦後のマンション街や、21世紀風のオフィスビルが広がっています。

ミラノでは、観光客が闊歩する範囲なんて、ほんの1-2km四方です。ミラノの真髄は、ショッピング、そして、良い意味で変化する街並み体験だと、私は感じています。ドゥオーモ周りだけを見てミラノを去る観光パターンは、ちょっと残念です。

ボノーラの駅の前には、21世紀スタイルのショッピング・センターがあります。青味がかったガラスの壁面がスマートな印象を与えてくれます。手入れもよく、落書きや応急修理のベニヤなどが見えません。メンテがきちんとできるということは、素晴らしいことです。

Cri家BONLA駅近くのボノラSC201803 (1)
( ボノーラ駅に隣接するショッピングセンター )

ショッピング・センターから数分歩くと、典型的な団地風マンション街が広がっています。1950年代から1970年前後の建物です。イタリアの典型的な郊外住宅という感じです。間取りは、2LDKから4LDKくらいまでが主流です。お値段は、諸税手数料別で8万ユーロから20万ユーロくらいですが、実際に払うキャッシュは、その倍くらいの感じです。新築物件は、もっとします。また、日本のテレビで紹介されるような、優雅なミラネーゼ気分にひたれるアパートは、最低でも50万ユーロくらいです。

ミラノに住みたーい、という方のために、ひとつだけ不動産紹介Websiteを例示します。
https://www.immobiliare.it/vendita-appartamenti/milano/

私も、老後に5-6年住むのも悪くないかな、と思って、あれこれ見ていますが、ガイジンが買う場合のぼったくり、手続きの煩雑さ、冬場の光熱費のバカ高さ、管理費などを考えると、ミラノ住まいの決心は、なかなかつきません。

Cri家Bonolaまわりの風景201803 (2)
( ボノーラ周辺の団地風マンション街 )

イタリアも日本と同じく敗戦国ですが、住については、日本より力を入れて復興したと思います。地価が違う、耐震基準が違う、など細かい差異を言い出したら、きりがないと思いますが、60年以上経っても建て替える気配すらありません。

各アパートの色合いは、茶色系が多いですが、緑色の建物もあり、なんとなく統一感がある程度です。歴史地区ではないので、街並み条例も「ゆるふん」状態なんだなと思いました。

けれども、街中に電線はありません。駐車スペースもたっぷり取ってあります。各建物につながる道路の入口には、有料駐車場の入口のように遮断器がついていて、住民の車以外は入れないようになっています。歩行者は、歩道経由で自由に出入りできます。

少なくとも、日本よりは、見た目の住環境は整っています。

Cri家周辺の早春20180323
( 早春の青空に映えるミラノの中層アパート )

セキュリティも、それなりに万全です。各戸へ通じる共通の出入口は、暗証番号式のロックがかかっています。少しリッチなマンションになると、監視カメラもついています。伝統的なスタイルのアパートですと、昼間は管理人さんがいて、外来者の出入りチェック、荷物や郵便物の受取代行もしていますが、団地では、そこまでできません。

こういうのを見ると、日本は治安がいいんだな、とつくづく思います。裏返せば、自衛意識が低いということにつながります。

Buonarottiトレトリ界隈のマンションロンック装置
( 監視カメラ付きオートロック・システムのマンション入口 )


3)緑を見ながらミラネーゼ

団地の間取りや室内は、Websiteなどで見てのとおりです。廉価な物件では、お風呂がなく、シャワーだけの物件も少なくありません。

周囲の風景は、このあたりまで来ると、かなり広々としてきます。駅から奥まった場所には広い公園や緑地が取ってあります。新しいマンションも、少しづつできていますが、デザインは21世紀風で、なかにはキュービックでコンクリート打ちっぱなしのような建物もあります。

Cri家周辺風景BONOLA201803 (2)
( 団地街の裏側の緑地帯に通じる道路 )

Cri家周辺の緑地広いBONOLA201803 (1)
( 緑地帯と団地風景 )

Cri家周辺の緑地広いBONOLA201803 (3)
( 団地裏の緑地帯は広々 )

早春の息吹きが漂う緑地では、散歩やジョギングを楽しむミラネーゼの姿が絶えません。午後になると、子供たちの姿も見えるでしょう。

名もない多数派の、まじめなミラネーゼの日々の暮らしが想像できます。

「今年の夏休みは、何すんの?」
「家の部屋の壁塗り!。日帰りで、ガルダ・ランドの遊園地!」

出不精のミラネーゼだと、こういう感じの日々になります。


                                       2018年8月記     了